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毎週ショートショートnote 【釣りマッチ】

 船の上でマッチを擦る。すると水面に魚達が一斉に集まり、子供達が鬼ごっこをしているかのような騒ぎで跳ね回る。

この釣りマッチは釣り人達にとっては喉から手が出るほど欲しいものなのだが、とある漁港にしか流通しておらず決して一般人には渡らない。

しかし俺はこのマッチを入手するためにこの船に隠れたのだ。

漁師達が水面にマッチを掲げている時に、拳銃を取り出した。そして船にある全ての釣りマッチを回収した後、船長に陸へ目指せと命令した瞬間だった。

漁師が一本だけ隠し持っていた釣りライターに呼ばれ、カジキマグロが水面から飛び上がり、俺に体当たりしてきた。

気がつけば無人島に流れ着いていた。島には本当に何もない。仕方がないので釣りマッチで魚を取ることにした。

擦る。
こない。
擦る。
こない。

何故だ、何故魚は来ない。空腹が俺を後押しし、マッチは全て使ってしまった。

あ、俺はなぜ焚火を作らなかったのだろう。海からの強烈な風が心も体も冷やしていく。

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