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海のピ【毎週ショートショートnote】

青いバケツに入ったたくさんの小さなヒは、尻尾についた小さな句点や読点をピチピチとばたつかせていた。僕はバケツの中を覗きながら、沢山のヒを見ていると、ゲシュタルト崩壊が起きそうになった。
僕の脳がヒとセの区別がつかなくなりそうなあたりで、ゆっくりとヒを放流した。彼らは嬉しそうに川の中へ泳いでいった。

「いってらっしゃーい」

ヒ達がこの川に戻ってくるのは四年後だ。

そして。

9月の終わり、ヒ達は卵を頭に抱えて、バケツで泳いでいた時とは考えられないほどの大きなピとなり、川下からピシャピシャと水しぶきを上げながら上ってきた。

僕は川に釣竿を投げ入れた。50㎝を超えるプリプリと卵の詰まったピを次々と釣り上げた。新鮮なうちに卵を取り出して、醬油漬けにする。

新鮮な海の幸とピクラを載せた海鮮丼を作るのが最高の贅沢だ。

ピから卵を抜いたヒを足元に並べた。

しかし今日の釣果は物凄い。

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ

あ、鳩に見えてきた。

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