見出し画像

桜回線【毎週ショートショートnote】

「桜って、死者と繋がる花だって知ってる?」

結婚直後、夫が事故で死んだ。その後無気力になっていた私を花見に連れ出したのは、親友の咲良だった。

川に沿って咲き誇る桜の木。半年前ならはしゃいで写真を撮っていただろう。でも、私にはモノクロにしか見えない。突然、咲良は私のスマホを取り上げてどこかに電話をかけ、私に返した。

「もしもし」

スマホから彼の声が聞こえた。

「突然いなくなってごめん。何が一番つらい?」
「あなたとキスできない事」

彼と充電が切れるまで話をした。

桜満開の下、次の日も話した。また次の日も。

そして6日後、大雨で洪水警報が出たので行くことが出来なかった。

次の日、急いで川へ向かった。桜の木は川の両岸に沿って、まるで途切れる事の無い道のように一列に並んでいる。しかし既に昨日の雨でほとんど花が散ってしまったようだ。

彼に通話したが、繋がらない。

「また来年ね」と桜がつながる先へ大声で叫んだ。

緩やかな風が吹き、桜の花びらが一枚、私の唇に乗った。

毎週ショートショートnoteという企画の運営をしております。ショートショートや猫ショートショートも書いたりしております。サポートいただけたら、サポータ様へ足を向けて寝ないと言う特典がついております。最終的には夜空にしか足を向けて寝れないほどファンが増えるのが夢です。