イケメン月餅【毎週ショートショートnote】【裏お題】

仮面をつけて刀を構える男、そして向かいに立つ山賊。月明かりが二人を照らし、刀がキラリと光った。

「おら、まん丸なお月さんに誓ったんだ。悪い奴は許さねえってな」

「な、なに?」

「俺の月餅が泣いてらぁ」

その男は刀を鞘に納めると、柄で山賊をボコボコに殴った。

「ぬぅ」

「山に帰れ!この町のばい菌が!」

「ねの!」

山賊は悲鳴を上げながら逃げ出した。

町娘をゆっくりと抱きかかえた。

「大丈夫かい?お嬢さん。ここはあんたみたいな人がきちゃいけない」

町娘のお腹が突然鳴った。

「恥ずかしい。今日1日何も食べてなくて。家にある食料は、全て病気の両親に。山の中に何か食べるモノがないかと…」
「だからこんな所に」

男は首を振った。

「じゃあ、おらの顔、食うかい?」
「え?」

男は仮面をとった。いや、仮面と思いきやそれは男の頭そのものだった。そう、男の頭は月餅なのだ。町娘は声をあげた。

「あ、あ、あ、あり」

男は嬉しそうに頷いた。

「えねーーー」

町娘は悲鳴をあげながら、闇へ消えていった。

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