一方通行風呂【毎週ショートショートnote】

僕の住んでいる街は、街中の道を全て水に変えて「水の街」として生まれ変わった。家を出たら一面川のようになっている水路を伝って、街中を散策できる。

技術というのはとんでもないもので、水陸両用の繊維が発明された現代においては、スーツではなく水陸両用繊維で作られたスイーツを着て外出するようになった。

しかし僕の家はトラブルを抱えている。家の前の水路が温かいのだ。ちょうど４２度前後で、まるでお風呂に浸かっているかのようなのだ。しかも僕の家の表札は【草津】であることも相まって、毎日深夜まで人が溢れていた。お酒を飲んでのぼせてしまい僕の家に上がり込んでくることも多々あった。

町長も問題視して、僕の家の前にある施策を取ってくれた。僕の家の前の水路を激流にし、人は一方通行で動くしかできなくなった。

ようやく家の前の騒音問題はケリが付いた。

あとの問題は、水路の上流に幼馴染の彼女が住んでいることだ。

恋していても、なかなか鯉にはなれない。