一人一人の意思では社会を変更できない?

結局は惰性なのではないか、と思うことがよくある。

先日読み終わった、川上量生さんの本、『ルールを変える思考法』にも、人間はたいてい惰性で行動している、みたいなことが書いてあった。自分の意志ではなく、社会の仕組みやルールによってそれをやらなければいけないと思い込まされ、その結果、惰性で行動しているだけだ、と。たしかにそうだろうなあ、と自分の行動を振り返ってみて思う。

川上さんは、競争社会では、ルールを決めた人間が勝者になる可能性が高いと言う。これは「自分で考えてやる」ことと近い意味だろう。自分で考えて自分で判断して、自分なりのルールを作っていけば、生きやすくなるはずだ。

でも、その邪魔をするのが、先に書いた社会の仕組みやルールであり、その壁にぶつかったところで、惰性モードになる。それほど社会の仕組みは、強いものなのだ。

この本は「思考法」というよりは、ゲーマーからドワンゴという会社の経営者になり、ニコニコ動画などを成功させている川上量生さんの哲学が書かれている。ゲームの世界もすごいものだなあと思ったり、ニコニコ動画の成り立ちはドラマチックだと知ったり、ちょっとオタクっぽいイメージのあった分野の見方が変わる本だった。

その中でもおもしろかったというか、恐ろしいような気分になったのは、今の世の中の進化は人間そのものの進化ではなく「人間の外にあるロジックの進化」になっているという話。集合意識が地球を支配していくというSFのテーマが、現実になりつつあるというのだ。

人間の体の細胞の一つ一つが人間の意思に介入できないように、人間一人一人の意思では社会の意思を変更できない。そういう時代になっていて、今後ますますそれが進むだろうと川上さんは予測している。

たしかに、身の回りのことで考えてみても、一人一人はふつうにいい人なのに、組織全体になると問題が出てくることがある。これが集合意識なのかもしれない。みんなが少しずつ空気を読む結果というか、小さなのブレーキの積み重ねが大きな交通渋滞を生むようなことではないかと思う。

そうなってくると、ルールを変えてやろうという意思や、惰性から抜け出そうという気持ちも、集合意識の前では結局は無駄になってしまうかもしれない。でも、川上さんはそこに一矢報いたいという気持ちで、コンテンツを世に出す仕事をやっているそうだ。

自分も惰性から抜け出すために、一矢報いることができるだろうか。

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