将来は、成長系かオーガニック系か

オーガニック革命』という本を読んだ。

著者の高城剛さんは、デジタルアーティストのような人だと思っていた。実際、今でもそういうことをやっているのかもしれないけど、今は(この本が出たときは)バルセロナに住んでいて、オーガニックな暮らしをしているという。

『オーガニック革命』は、そんな海外でのオーガニックムーブメントを紹介する本だ。出版されたのは5年以上前なので、最新情報ではないけれど、欧米、とくにロンドンでオーガニックという文化が盛り上がっていることが伝わってくる。

欧米での「オーガニック」は日本でいう有機野菜という枠を越えて、より文化的な動きになっているという。ロンドンのDJが「今世界でもっとも反社会的な行為は、ストリートで野菜を売ることだ」と言っていたり、王室やセレブなど上流階級の人がオーガニックなコスメや食品を愛用している。

おもしろいのは、そうやって上流階級とストリート、右派と左派、のように、従来の派閥の枠を越える運動になっていることだ。同じようなことは『ハウスワイフ2.0』にも書かれていたし、最近の社会の流れとして特徴的なのかもしれない。

個人的に、どういう影響をこの本から受けただろう?と、考えてみる。

これから将来へ向かっていく方向性として、ざっくり分けて、成長系とオーガニック系があると思う。成長系は、例えばアジアの新興国に行って、経済成長する市場で働くような路線だ。それに対してオーガニック系は、この本に出てきたロンドンやアメリカのポートランドのような成熟した場所で暮らすような方向だ。

将来の理想的な暮らしを思い描いたとき、自分を含め世の中は、この2つの方向で揺れているのかもしれないと思う。

アジアに行けば活気があって、自由におもしろい仕事をするチャンスがあるような気がするけれど、大気汚染のなかで過ごしたり、添加物の多い食べものばかり食べることになるんじゃないか。あくまでイメージだけど、そんな不安がある。一方で、オーガニック系の場所に行けば、洗練されていてあらゆるもののクオリティが高いけれど、その分生活費も高く、何かちょっと窮屈というか、果たして自分が入り込むスキがあるだろうか、と思う。

そのいいとこ取りはないのかと考えてみると、たとえば、アジアに環境都市のような場所があれば理想的なのかもしれない。イメージだと、ブータンとかスリランカとかだろうか。シッキムもいいかもしれない……。などと、妄想しだすときりがないけど、先進国のオーガニック路線というひとつの道は、この本から見えた気がする。

もうひとつ、というか、この本でいきなり驚かされたのは、冒頭に「人間とはいったいなんなのか。ここにいる私とはいったい誰なのか。そんな自問自答が次世代の娯楽となる」と書かれていたことだ。

それって本人のマイブームを言ってるだけじゃないのか、いわゆる自分探しじゃないのか、と突っ込みたくなったけれど、でも考えてみれば、物をたくさん買ってコレクションするよりも、そういう方向の娯楽に自分も共感することはたしかだ。何を娯楽とするかも、成長系かオーガニック系かを分けるポイントかもしれない。

ちなみに「オーガニック」は、日本で言うように「オ」にアクセントを置くのではなく、「ガ」にアクセントをつけるのが欧米での発音らしい。そう言われたからといって、じゃあ今すぐ日本で欧米式に発音しよう、とは思わないけれど、そのうち欧米式の言い方を耳にするようになったら、日本にもオーガニック革命の波がやって来たということなのだろう。

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