断ることは、むしろ新しいつながりを生む

会社や組織に所属していて苦しいのは、自分の判断で断ることが難しいことだ。

新しいことをやるとか、無理して仕事を引き受けることは、会社も好意的に受け止めるけれど、断ることについて会社は慎重だし、快く思わないことが多い。依頼をむげに断ってしまえば、ビジネスチャンスを失うことはもちろん、信頼関係に影響するかもしれないし、断ったという評判が他に広がってしまうかもしれない。

会社が会社として断ることを避けようとするのはわかるとして、でも、個人としては断ったほうがいいことがいろいろあるんじゃないか。断る自由があることが重要なんじゃないか。そんなことを思っていたので、『断る力』という本を読んでみた。

この本で言われているのは、「自分の得意な分野に集中して時間を投じるために、自分が受けるべきではないことは断りなさい」ということである。断ってしまうと、孤立してしまうんじゃないかと恐れるかもしれないが、それは逆で、実際は得意分野が磨かれ、他の得意分野を持つ人との協力関係が生まれるという。断ることはむしろ新しいつながりを生む、ということかもしれない。

個人的には、波長の合わない人というか、何か力を吸い取られているような気がする人からの依頼は、ちょっと断りたい気分になる。要は、嫌な人とは仕事をしたくないということだろうか。この本には「嫌われる人とは、その人が言語外で発しているメッセージが不愉快に感じられる人」と書いてあって、妙に納得してしまった。

実際は、人の印象は付き合っているうちに変わることもあるので、納得できる目的が共有できているときは、依頼を受けたほうがいいかもしれない。そのときにはやりたいことをこちらから逆提案するくらいの姿勢が必要だと思う。

でも、そういう調整が会社の中にいると難しい。言われた通りにやるのがいちばん簡単だからだ。そして仕事の全体像が見えないと、逆提案もしずらくなる。断る選択肢があることと、仕事の全体像が見えること。この2つが大事な基準なんじゃないかと、この本を読んだ後、思ったのだった。

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