おそまつさん

幼稚園の頃から 憧れの女の子がいた

憂いがあって
色気があって
ちょっと日本人離れした顔立ちで

それを本人も分かってて

でもそんなことおくびにも出さないような子

突然悲劇のヒロインぶって泣いてみせても
みんな寄ってたかって心配してくれるような

そんな子

わたしは
その子のことがずっと羨ましかった

少しの間だが
その子と遊びに行ったこともあった

いわゆる「おさななじみ」だった

その子はいつも男の子を手玉にとって
初恋の先輩もその子に奪われた

胸が打ち砕かれるように悔しかった


大きくなってからは
その美貌で芸能界に入ったらしく
テレビや雑誌にも少しずつ出るようになっていた

ますます綺麗になったその子を観た時
地面がぐわんと歪んだ気がした

目眩と吐き気がした


グラビアを飾る彼女は
更に色っぽくなってて
美しかった

一方のわたしは
この何年間も

果たされなかった夢を埋めるように

美しくなろうとしたり
男を手玉に取ろうとしたり

あの手この手で
中途半端に色んなことを試した

たいがいはうまくいかなかった


うまく行ったかのような瞬間もあったが

それは無責任な男に
妊娠させられそうになっただけのオチだった

あの子の方がいつも一枚上手

わたしはいつも「おそまつ」

お粗末なんだ

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