子どもの貧困を放置すると所得が42.9兆円失われ、財政収入が15.9兆円失われる

子どもの貧困の放置で社会的損失は40兆円

それでは子どもの貧困を放置した時の社会的損失はどの程度になるのか。

0~15歳の子ども約1760万人のうち、生活保護世帯・児童養護施設・ひとり親家庭に属する子どもを貧困状態にあると定義して、子どもの貧困を放置した場合の社会的損失を推計した結果を図表に示している。

「所得」の列には貧困世帯の子ども約260万人が一生涯で得る所得金額を示している。また、「税・社会保障の財政収入」には同じく貧困世帯の子ども約260万人について、一生涯で政府に収める税・社会保険料負担額から、政府から受け取る社会保障給付額を差し引いた金額を示した。

「改善シナリオ」は、子どもの貧困対策によって子どもの教育機会が確保され、高校進学率や大学進学率などが改善する想定であり、「現状放置シナリオ」は、子ども期の貧困によって生まれる教育機会の格差が、現状のまま放置される想定である。

結果を見ると、「改善シナリオ」では、一生涯で得る所得は374.4兆円となり、納める財政収入は99.9兆円になる。

一方、「現状放置シナリオ」では、所得は331.5兆円、財政収入は83.9兆円まで減少してしまう。改善シナリオと現状放置シナリオの差分が「子どもの貧困の社会的損失」であり、子どもの貧困を放置すると所得が42.9兆円失われ、財政収入が15.9兆円失われることになるのである。

図表 子どもの貧困の社会的損失

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子どもの貧困の放置で生まれる社会的損失は40兆円「投資の視点」で対策を

(出所)日本財団子どもの貧困対策チーム(2016)『徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす 社会的損失40兆円の衝撃』(文春新書)より作成

5つの資産とは… 「時間」「関係性」「体験」「情報」「経済」 人は「時間」を使って「情報」「関係性」「体験」「経済」 みんながそれぞれの持つ資産を分かち合う→子どもが 強みを生かして生きていくことで『自分→家族→仲間→社会」を楽しく元気にしていく