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スティーリー・ダンの子供達

昨日、シホさんの古内東子さんの話でスティーリー・ダンの話が出ました。古内東子さんは「OLの教祖」と言われ人気を博しましたが、J-POPの仕組みの中、さらに女性アーティストでスティーリー・ダンの影響下にある稀有なアーティストです。

今日はもうちょっとベタにスティーリー・ダンの影響を受けた所謂スティーリー・ダン・チルドレンと呼ばれたアーティストについてちょっと書きます。

本家スティーリー・ダンは「Gaucho」(1980/MCA)を以て活動休止しましたが、間も無くヴォーカルのドナルド・フェイゲンの初ソロ「The Nightfly」(1982/Warner)がリリースされました。

当然ウォルター・ベッカー不在ながら、バンド時代と同じゲイリー・カッツをプロデューサーに迎え、バンド時代のサウンドをよりポップに昇華させ、バンド時代以上の成果を得ました。

にも関わらず、以後11年後にセカンド・アルバムをリリースするまで殆ど表だった活動がなく、80年代の殆どの時期において幻のアーティストになってしまいました。

そんな時代、なぜかアメリカではなくイギリス周辺の国から、しかもニューウェーヴ系出身のバンドから数多くのスティーリー・ダン・チルドレンが現れました。本家の活動休止期間による渇望感より、そのようなバンドが多く現れたのかと思いますが、なぜアメリカでなくイギリスだったのかは未だに謎です。当時バリバリのUKニューウェーヴ専門誌だった「Fool's Mate」で(その時は過去のバンドであった)スティーリー・ダンの特集が組まれるほどでした。

フェイゲンとは対照的に相方のウォルター・ベッカーはこの頃よりプロデューサーとして頭角を表し、いくつかのスティーリー・ダン・チルドレンも手掛けました。

80年代のスティーリー・ダン・チルドレン

PREFAB SPROUT

達郎さんの「サンデー・ソング・ブック」でもたまにオンエアされるバンド。

フロントマンにしてソングライターのパディ・マクアルーンは基本的な音楽理論の知識を持ち合わせず、ギターも三角押さえとか平行四辺形抑えとか自分なりのフォームで理想のコード、ハーモニーを模索していたそうです。

ただ「スティーリー・ダンやバカラックのような曲が作りたい!」と言う気持ちだけで、あれだけの数々の名曲を世に送り出したのだから天賦の才能と言って過言ではないでしょう。

実際ニューウェーヴ以降最も優れたソングライターの一人と称されています。

DANNY WILSON

惜しくも二枚のアルバムをリリースしただけで解散してしまった、この時代のスティーリー・ダン・チルドレンの真打!ドナルド・フェイゲンをエモーショナルにしたようなヴォーカルと、中期スティーリー・ダンを彷彿とさせるサウンドで話題となり、デビュー・シングル「Mary's Prayer」は全米チャートでも最高位62位のスマッシュ・ヒットとなりました。2014年に再結成しているようです。写真はファーストアルバムのアナログ。

FRA LIPPO LIPPI

デビュー時は「ノルウェーのジョイ・ディヴィジョン(ニュー・オーダーの前身である、ポスト・パンクの雄)」と称されながら、数年後には「ノルウェーのスティーリー・ダン」と呼ばれた振れ幅が大きすぎるバンド(笑)前述のウォルター・ベッカーがプロデュースしたアルバム、「Light and Shade」(1987/Virgin)は日本でも話題になりました。

21世紀のチルドレン

ED MOTTA

日本では大沢伸一のモンド・グロッソのアルバムでフィーチュアされ脚光を浴びたブラジルのスティーヴィー・ワンダー。初期の作品はモンド・グロッソにも呼ばれて然るべきアシッド・ジャズ系アーティストにも通ずる作品でした。

世界中のあらゆる音楽のアナログ・コレクターとしても知られ、シティ・ポップスブームと関係なく、かなり前から山下達郎さんのアナログも所有し、デヴィッド・T・ウォーカーをフィーチュアして「Windy Lady」を日本語でカバーしたりしています。

「AOR」(2013/MEMBRAN)ではドナルド・フェイゲンの新作か?と聴き紛うほどの酷似ぶりなスティーリー・ダン・チルドレンでした。

KIRINJI

J-POP代表としては、前述の古内東子さんとクレヴァ(笑)KIRINJIが挙げられるでしょう。実際、スティーリー・ダンの影響を公言しているようですし、冨田恵一プロデュースの初期作品、「ダンボールの宮殿」などには特に色濃い影響力を感じます。また堀込高樹さんの作品には歌詞の面からの影響も感じられます。

WENDEL

このバンドに関しては情報が余りないのですが、イギリス出身横浜在住のミュージシャン、Tom Welchによるソロ・プロジェクトのようです。バンド名のWENDELは「Gaucho」レコーディング時に、エンジニアのロジャー・ニコルスが開発したサンプリング・リズム・マシンに由来しており、そこからも影響を感じます。

ピーター・バラカンさんのラジオでオンエアされたのですが、各種サブスクでも数曲聴くことができます。イギリスの方ですが、横浜在住ということで日本代表にカウントしてよろしいでしょうかね(笑)

今日の一曲:Prefab Sprout / Don't Sing (1984 / Kitchenware)

最初にご紹介したプリファブ・スプラウトのメジャー・デビュー・シングルです。恥ずかしながら、この曲のMVがあるの知りませんでした・・・

バカラックほどではないですが、はみ出しの2小節をバンバンぶっ込んで、一筋縄では行かない拍刻みながらもポップさを保っています。

スティーリー・ダン酷似度は他にご紹介したバンドより薄いですが、「音楽的知識はないけど、名曲を作りたい!」と言う情熱が力技でねじ込めらた青臭さがたまらない名曲だとワタシは思います。1984年だと言うのにソーシャル・ディスタンスが完璧なのが微笑ましいです。

今宵の担当:nori

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