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おばあちゃんのパンツとノスタルジックハヤシ

ハヤシライス、は子どもの頃のごちそうでした。カレーにそっくりなそのみためからは想像できないオリジナリティあふれるその味に、はじめて出会ったその日から虜になりました。

休みの日、おばあちゃんの気が向けば、デパートに連れていってもらえました。両親は早くに離婚しているうえ、友だちが少ない私にとって、おばあちゃんは、母であり友だちでした。

うちのおばあちゃんは大正生まれで、戦争を経験した世代です。だからでしょうか、とても物を大切にする人でした。ちょっとやりすぎなんではないかと思うんですが、父が使い古したパンツをはいていました。穴があいても何度も縫ってなかなか捨てませんでした。

そんなおばあちゃんですが、デパートに行く日だけはいいパンツをはいていきました。理由は、途中で倒れて救急車を呼ぶことになったときに、父のパンツをはいていたんでは恰好がつかないというものでした。そんなおばあちゃんは、もう何年も前に胃がんで亡くなってしまったのですが、そのときはどんなパンツをはいていたのでしょうか。いいパンツ、私がはかせてあげればよかったな。

さて、おばあちゃんとのデパートデートについて話を戻します。デパートにいくと、まず催事場でお買い物を楽しみます(父のワイシャツとか安く売ってたりしたので)。それから屋上にいって、私はアーケードゲームを楽します。当時私は、カエルの口にボールを投げ込むゲームにはまっていました。たしか1回30円でできた気がします。ゲームを楽しんでいる間おばあちゃんは、ベンチで休んでいます。おばあちゃんは、のちにだんだんデパートにいかなくなります。座る場所が少なくて疲れるから、といっていました。

デパートデートのメイン、しめはデパ地下です。買うものはいつも決まっていました。ハトヤのミンチ(通称ハトミン)、回転焼き(今川焼または大判焼きのことです)、そしてサンマルコのハヤシライスです。

サンマルコはカレーハウスなんですが、私はここのハヤシライスが大好物でした。大人はビーフカレーをテイクアウトしていました。テイクアウトの箱は丸型で、蓋は金色の縁どりがされています。高級感ただようその姿に子どもだった私の心は踊ったものです。

こんなノスタルジックな思い出をnoteにつづっていたら、いろいろ思い出して泣けてきました。それで夏におばあちゃんの最期のときのことをつい話してしまいました。そしたらほんとうに涙がでてきて、「そんな昔のことをたどろうとするからだ。そんなのはやめたほうがいい」と怒られました。夏はそういう考え方をします。

しめっぽくなったので、最後に先日久しぶりにひとりでサンマルコにいったときの写真を。おなか減りますね。夏には、昔とかわらず丸い箱にはいったハヤシをテイクアウトしました。

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