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【政府の無策?】コロナとお酒の問題

 コロナ対策のため酒が狙い撃ちにされていると嘆く向きも少なくありません。しかし酒の提供方法を考慮せず、昭和の感覚のまま漫然と営業を続けてきた飲食店にも責任の一端があるのです。

 これは一体どういうことなのか、これからのアルコール提供はどうあるべきなのかについて見て行きましょう。

■お酒の規制は以前から始まっていた

 たばこの規制は健康増進法に基づく「健康日本21」によって、個人に対しては条例などで定められる喫煙場所の限定などが行われています。例えば京都市は、市内全域の屋外を禁煙場所としていて、その中でも人口密集地では罰則規定も定められているのです。

 一方、喫煙場所を提供する飲食店などでは完全分煙が義務付けられており、多くのお店では完全禁煙を実施することでそれに対応しています。このように、たばこについては目に見える形での厳しい規制がかかっているため、多くの人がその事実を知っているでしょう。

 実は健康日本21ではお酒に関するガイドラインも定められているのです。しかし喫煙とは異なり受動喫煙のように「受動飲酒」という現象が見られにくいことから、表立っては規制されてきませんでした。しかし、放置されていたわけではなく、しっかりと数値が示されていたのです。

■節度ある飲酒というガイドライン

 健康日本21には「節度ある飲酒」と言うガイドラインが設けられています。これは健康を損なわずに飲酒を継続できる量の目安とされているものです。この基準になっているのは、アルコールを正常に代謝できる成人男性で、女性はこれより少ない量が推奨されています。

 その量とは「1日に純アルコール 20g 」と言うものです。とても少なく見えますが、純アルコールは水より比重が小さいので、体積にすると約 25mL になります。そしてお酒の度数は体積%( %vol. )で表示されていますから、アルコール度数 5% のビールであれば 500mL が適正量ということになりますね。

■商売としては美味しくない量

 よく飲む人にとっては全然足りないと思う量でしょう。しかし、それ以上にお酒を提供する飲食店にしてみれば「商売にならない量」と感じるのではないでしょうか。

 もちろん食事が主になるお店であれば、メインの料理に生中 1 杯が追加されるので問題はありません。一方、バーやスナックなどお酒が主になるお店では死活問題ですね。もちろん、接客する側もお相伴で飲む量がこれを超えるのは労働法関連で NG とされる未来が想像できます。

 現在はすべてが推奨される量であり、具体的な規制は行われていません。さらにバーやスナックの従業員に対する労働法関連の規制もありませんが、もしかすると従業員に飲ませていい量が法的に規定されるかもしれませんね。

 それを突破口に飲酒量の法的規制が始まるかもしれません。

■コロナ禍は酒類提供規制の入口になるか?

 コロナ禍による酒類提供規制はなぜ行われたのでしょう。それは酔うことでルールを守るという意識が弱まることが危惧されたからです。シラフであれば、人と人との距離を保ち、マスクを着用し、大声で話さないと言ったルールを守ることは難しくありません。

 しかしお酒が入ると、そうしたまともな社会人としての意識は簡単に吹っ飛んでしまいます。ホステスさんにまとわりつき、マスクを外して大声でわめき、場合によってはアクリル製の仕切り板を破壊することすら起こり得るでしょう。

 なので、お酒の提供時間帯が制限されたのです。幸いなことに、日本人は明るいうちから酔っ払うことにいくばくかの罪悪感を持っていますから、自然と自粛するだろうということが期待されたのです。

■ポストコロナと飲酒を伴う外食

 新型コロナウイルス感染症は、ワクチン接種済の人たちの増加と医療体制の堅牢化によって、数年以内には沈静化するのではないかと思います。一方でワクチン忌避者やマスク反対論者などの存在がある限り、完全に押さえ込むことは無理でしょう。

 また、新型コロナウイルスはSARS-CoV-2の名前の通り、2003年にグローバルアラートが出された中国広東省発祥のSARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルスの姉妹種とされています。つまり、三たび中国からSARSの姉妹種が登場しないとも限らないのです。

 そうなると、パンデミックが引き起こされる前から強い呼吸器感染症に対する予防的な生活様式が求められる機運が高まる可能性があります。人が密集することを避けたり、マスクを着用することを求めたりは今後も続くでしょう。

 そして酒の提供・飲酒行動についても、何らかの形で規制されることと思います。おそらく当初は外食での飲酒量を抑える、はしご酒はダメと言った常識的なところから、規制ではなく呼びかけの形で始まるでしょう。

■節度ある飲酒の大元は50年以上前に準備されていた

 さて、この節度ある飲酒というルールですが、もう15年以上にもなるのになぜこれほど無視され続けてきたのでしょう。実際、この拙文を読んで下さっている皆さんの中にも、初めて聞いたという人がおられるかもしれません。また、聞いたことはあるけど気に留めていなかったと言う人も少なくないでしょう。

 それはこれが法律に定められた義務ではないと思っている人が多いからでしょう。そしておそらくなら「罰則規定がなかった」ということが最も大きいと思われます。

 しかし、実は法律に規定があるのです。昭和36年制定ですから、もう半世紀以上も前に定められた「酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律」と言う法律があります。ここでは「飲酒を強要したりしてはいけない」「飲酒は節度を保たなくてはいけない」と言う努力義務が示されています。

 また、酔って迷惑行為を行うと罰則もありますから注意が必要ですね。ここでは酒類の提供に関する規定はありませんが、場合によっては準用とか法律改正などの可能性も否定できません。

■罰則がないルールを軽視するとひどい目にあう

 1961年制定の法律にあった「飲酒の節度」という言葉が、21世紀になって「節度ある飲酒」と形を変えて再登場したわけですが、幸いにしてまだ罰則規定はありません。しかし、コロナ禍をきっかけに罰則規定付きの法律が登場するかもしれませんね。

 こうした法律の怖いところは、実際の運用を政令で定めると言うルールで決めることが多いことです。つまり、法律の骨組みだけ国会で決めておけば、あとは政府のさじ加減ひとつにできるといっても過言ではありません。

 そんなこと突然言われても困ると反論しても、酒は節度を持って飲まなければいけないと言う法律は半世紀以上も前に制定されているし、具体的な数量も15年以上も前に示していると言われれば言葉に詰まるでしょう。

 法律は知らなかったでは通用しません。なので、飲酒の量や提供方法について罰則付きの法律で縛られる可能性は否定できません。アメリカでの痛い経験があるので、禁酒法の制定はないと思いますが。

■ノンアルを活用して利益率もあげよう

 ノンアルコール飲料は酒税がかかりませんから、飲み屋さんにとっても仕入れが安く済むメニューです。いつもノンアルばかりとは行かないかもしれませんが、本来お酒が飲めない人も日本人の半分くらいはいると言われていますから、工夫一つでビジネスの展開が見えてくるんじゃないでしょうか。

 アルコールが体内に入った時、それを分解する酵素が2つありますが、そのうちALDH2と言う酵素を活性化する遺伝子が、突然変異によって働かなかったり、非常に弱かったりする人が日本人の4割以上、半分近くもいると言われています。

 こうした人は「お酒が飲めない人」「お酒に弱い人」となりますので、付き合いで無理して飲んでいたとしても、できれば飲みたくないと思っていることが多いでしょう。

 ノンアル飲料を提供することをメインに押し出せばビジネスチャンスが増えるかもしれませんね。いつまでも昭和の感覚を引きずっているより、そのほうが有利だと思いませんか。

 今回のコロナ禍のような事態に陥っても、ノンアル中心に営業していれば、酒類の提供を一時中止するだけで悪影響を最小限に抑えられるでしょう。ノンアル飲料と言ってもメーカーが販売するものだけでなく、「サラトガ・クーラー」や「フロリダ」のようなノンアルコールカクテルを作って出すのもいいでしょう。

 もう平成を通り越して令和の時代になったのですから、営業スタイルも工夫するべき時期に来ていると思いませんか。

 

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