2023年司法試験再現答案ー民訴法

難しすぎて逆に誰も解けないだろうと思ってニコニコしちゃったぽん!


設問1

1.判断基準

 違法収集証拠の証拠能力は、司法の廉潔性の見地から、信義則上、否定されることがあり得る。違法収集証拠を証拠として許容してしまえば、不法な行為によってでも証拠を獲得しようとするインセンティブが働き、不法・違法を誘発してしまう。一方で、公正な裁判への国民の信頼を維持する観点からは正確な事実認定が必要であり、そのために証拠を許容すべき場合もあり得る。そこで、権利侵害の程度や行為者の目的を考慮し、違法の程度と証拠として許容すべき公益上の必要性を比較衡量して、証拠能力を判断する。

2.本件文書の証拠能力

 まず、Yは本件紛争が顕在化した後、訴訟に発展する可能性が高いことを踏まえて、自己に有利な証拠を探す目的で、Xのノートパソコンを開いている。そして、当該ノートパソコンはXがプライベートで利用していたものであり、Yは本件紛争と関係のないXの私的なやりとりを含む秘匿性の高いメールを全て自身のUSBに保存している。そうすると、犯罪行為に該当しないまでも、Xのプライバシー侵害の程度は強度である。

 一方で、本件紛争はXY間の財産上の争いに過ぎず、私的な紛争であって、真相を解明すべき公益上の必要性も低い。

 よって、違法の程度を上回る公益上の必要性があるとはいえないから、本件文書の証拠能力が否定される。


設問2

1.(ア)の場合

(1)不利益変更の禁止の原則(296条1項)の趣旨は、不利益変更を認めてしまうと上訴人にとって不意打ちになってしまい、一方で不服を申し立てなかった被上訴人は原判決で満足しているため、あえて被上訴人に有利な判決を出す必要がない点にある。そこで、不利益変更禁止に抵触するか否かは主文を比較して判断すべきであるが、生じる既判力の観点から、実質的に判断すべきである。

 そして、既判力は、主文に包含された訴訟物の存否の判断に生じ(114条1項)、また相殺に供された債権については訴求債権と対当額でその不存在の判断に既判力が生じると解される。なぜなら、紛争解決には訴求債権と対当額で既判力を認めれば十分だからである。

(2)まず、第1審判決は、Xの請求を認容しているから、甲債権の存在の判断に既判力が生じる。また、相殺に供された乙債権については、これが不存在である判断に既判力が生じている。

 そして、丙債権の不存在には既判力が生じない。そのように解さなければ、仮定の上に仮定を重ねることになり、審理が硬直化してしまうからである。

(3)次に、控訴審は、甲債権が弁済により消滅したという心証を抱いている。そうすると、心証の通り判決すれば、Xの請求を棄却することになり、甲債権の不存在の判断に既判力が生じることになる。

 したがって、第1審判決よりもXにとって不利益であるから、不利益変更禁止に抵触する。

(4)以上より、控訴審は、控訴棄却判決をすべきである(302条2項)。

2.(イ)の場合

 控訴審の心証によると、甲債権、乙債権がいずれも存在するが、丙債権が不存在である。この心証に従えば、相殺の抗弁が認められ、Xの請求が棄却される。そして、既判力は、甲債権の不存在、乙債権の不存在の判断に生じる。そうすると、甲債権の不存在に既判力が生じる点で、Xにとって不利益であり、不利益変更禁止に抵触する。

 したがって、控訴審は、控訴棄却判決をすべきである。

3.(ウ)の場合

 控訴審の心証によると、甲債権は存在し、乙債権は弁済により消滅している。かかる心証に基づき判決すれば、相殺の抗弁が認められず、Xの請求が認容されることになる。そうすると、既判力は甲債権の存在、乙債権の不存在の判断に生じ、原判決と変わりがない。

 したがって、第1審判決が結論として正当であるから、控訴棄却判決をすべきである。


設問3

1.課題1

(1)前訴での訴訟物は甲債権であり、後訴での訴訟物は甲債権を主債務とする保証債務の履行請求権であるから、保証債務の付従性から保証債務の成立には甲債権が前提となり、両訴訟物は先決関係にある。そうすると、既判力の作用場面である。

(2)もっとも、前訴での当事者はXYであり、後訴ではXZであるから、当然には前訴の既判力は及ばない。

 この点、既判力の趣旨は紛争の一回的解決にあるところ、その根拠は手続保障の充足による自己責任であり、既判力は手続保障がなされる当事者間に相対的に生じるのが原則である。しかし、補助参加人であっても訴訟活動ができるから手続保障がなされており、115条1項2号の「他人」として、既判力が拡張されるというべきである。もっとも補助参加人は従たる当事者にすぎず、当事者と矛盾する訴訟活動はできないため(45条2項)、その限りでは手続保障がなされていない。そこで、補助参加人が当事者の訴訟活動と矛盾するため主張できなかった事実については、信義則上、主張が許されると解する。

 本件では、Zは、XY間の前訴に補助参加人としてY方に参加し、甲債権の免除の事実について主張しているものの、被参加人たるYは免除の事実はない主張したため、当事者との訴訟活動と矛盾して主張が許されなくなっている。一方で、甲債権の弁済の事実は主張がつくされた上で、Xの請求が認容されている。

 したがって、後訴においてはZは、甲債権の弁済の事実を主張することは許されないが、甲債権の免除の事実を主張し、甲債権の不存在を争うことはできる。

2.課題2

 ZはYに対して補助参加をしているため、補助参加の効力が問題になる(46条)。

 この点、共同して訴訟追行した者が敗訴責任を共同して分担すべきという趣旨から、補助参加の効力は参加人ー被参加人に相対的に生じ、また参加人にとって重要なのは主文よりむしろ理由中の判断であるから、理由を導く主要事実の判断に生じると解される。

 そして、補助参加人は前訴訴求債権の不存在を被参加人と共同して争ったのに、被参加人に対して前訴訴求債権の存在を主張するのは禁反言に抵触しそうである。もっとも、参加人は被参加人と矛盾する訴訟追行は許されないからその限りでは、禁反言に抵触しない。

 そこで、前訴において参加人と被参加人の訴訟追行が矛盾した結果、主張が尽くされていない事実の主張は許されるというべきである。

 本件では、前訴において前述の通り免除の事実については争われていない。

 よって、ZY間においても、免除の事実を主張し、甲債権の不存在を主張することはゆるされる。


以上

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