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ニューホライズン読解「1991年、夏~新たなる地平~」4

繰り広げられてきた骨肉の争いもいよいよ大詰め。 

4人に残された時間はあとわずか。 
限られた時間と空間の中でもがく若者たちの姿に、昔日の自分を投影してみてください。 


レッスン11 

デイビス家の日曜日。 
マイクの父はキッチンで天ぷらを揚げている。 
母と姉は父のお手伝い。 
マイクは洗車をし、妹は庭で犬と遊んでいる。 
そんな何気ないある日。 
デイビス家の電話が鳴り響いた。 

「はい、デイビスですが…」 
「…マイク?私。由美。何してるの?」 
由美の奴、休日に電話してきやがった。 
携帯のない時代、家に電話するとは、なんと積極的な中1だろうか。(プリンセスプリンセス『diamonds』参照) 

「車を洗ってたのさ」 
女ウケする派手なスポーツカー転がしてやがるな。 
中1のくせに生意気な。 

「あら、ねぇマイクぅ、あたしね、英語の宿題してるんだけどね、すっごく難しいのよぅ。ちょっと助けてほしいなぁ」 
なんというか、古典的な手を使う奴だ。 
「まかせときなよ。じゃあランチのあと僕んちにおいで」 
乗っかるマイクもマイクだ。 
「わー、ありがとうマイクぅ!」 
「じゃ、あとでね」 

まんまと由美は休日の約束を取り付けます。 
中1の英語の宿題なんか、どうせ単語帳作ってこいとか過去形に直せとかそんな程度なくせに。 

もう電話切った時点で由美はガッツポーズですわ。 
そしてマイクも由美がホントに宿題が解らないから、などと思うはずもなく。 
甘いワナに自らかかりに行ったわけですな。 
いかんですな。 

そして午後、由美はマイクの家に宿題するという名目で遊びに来ました。 
おそらく精一杯おしゃれして、近所のタカラブネでケーキも買って、ウキウキでやって来たことでしょう。 
しかし…。 


ピンポーン。 
「あらルーシー、いらっしゃい」 
「こんにちは、ミセス・デイビス。マイクはいらっしゃるかしら?」 
「いるわよ~。マイクね、由美ちゃんの宿題を見てあげてるのよ。ささ、おはいんなさい」 
アタタ、母ちゃん言っちゃったよ。 
ルーシーの目付きが変わっちゃいましたぞ。 
「…ありがとう、ミセス…」 
スタスタスタ…。 
「マイク~、ルーシーちゃん来たわよ~」 


マイクの部屋に通されるルーシー。 
そこにはもちろん顔面蒼白のマイクと由美。 

「るるるるルーシー!?」 
「ハーイ、マイク。まだ由美のお手伝いしてるの~?」 
「いや、ちちち違うんだ。バスケの試合をね、テレビで見ててさ…。いやちょっとだけ休憩って思ってたんだけどね、ついつい見入っちゃってね。ハ、ハハハ…」 

…修羅場、ふたたび。 


レッツリード1 

今さらながら、マイクの両親についての説明が挿入されます。 

マイクの父はアメリカの銀行の東京支店で、月曜日から金曜日まで働いております。 
日本語をちょっと話せて、相撲用語をいくつか知ってます。 
よくテレビで相撲を見てます。 

マイクの母は日本の学校で英語を教えてます。 
まあ、英語教師のアシストみたいな感じですな。 
授業の中でゲームをしたりするから、生徒にとっても人気があるみたい。 
でも何人かの男の子はとっても内気なんですって。 

…いやぁ、実にどうでもいい情報をありがとう! 


レッスン12 

マイク、由美、ルーシーの三角関係トリオ、今度は天体観測に出かけます。 
「今夜の星、とってもきれいね~」 
満天の星空に由美もうっとりです。 
もちろん演技ですが。 

「マイクぅ、あの明るい星たちを見て。オリオン座よ」 
ふたりの世界を作ろうと必死です。 
「え、オリオンって何?」 
「ギリシャの英雄よ。彼のベルトが見えない?」 
「あの三つの星かい?わかった!今、僕にも男の人の姿が見えてきたよ!!」 
ウソつけ。 

そして由美、さりげなくルーシーに口撃! 
「ルーシー、オーストラリアでもオリオン座見えるの?」 
「ええ、でも冬には見えないのよ。夏に見えるの」 
「南十字星は綺麗?」 
「ええ綺麗よ。一年中見れるわ」 

風情がないのね、とでも言いたげにほくそ笑む由美。あいかわらず魔性の女です。 
そんな険悪なふたりの女に挟まれるマイク。 
彼のアワワ…ていう心の声が聞こえてきそうですね。 


…てか、おまえら健誘ったれよ。 

つづく。

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