早すぎる成長

気がつくと、娘の小学校時代が終わりに近づいており、ますます会話が少なくなっている。話しかけても、「ふつう」、「ねえ、うるさい」、「黙っていて」のコンボを決められる。「ああ、きたね。これだね。反抗期だね。」と余裕をもって構えてみせるつもりもなくはないが、いや、書いていて気づいたが、そんなものはない。

少しでも話しをしたいので、無理やり、かの有名な『鬼滅の刃』などを読んで、「そういえば、無惨さんがさあ」と話しかけてみるが、娘は「え」と怪訝な顔をする。老いて廻らない頭を必死に回転させると、会話の糸口にしようとしていたのは、無惨ではなく、煉獄さんのことであったと気づく。どうも、無限列車と混ざってしまったようだ。「あ、いや」と焦っている間に、娘はぷいっと何処かにいってしまい、私は、「れれれ」とどもったまま取り残される。

それにしても、『鬼滅の刃』を読んでいて思うのは、修行が少ないということで、『ジョジョの奇妙な冒険』の第1部にせよ『ドラゴンボール』の天下一武道会というか、そのあたりにせよ、もうちょっと修行していなかったか。ジャンプコミックスにして、1巻くらいは修行をしていなかったか。『男塾』にいたっては、ずっと修行だったのではなかったか。

『鬼滅の刃』では、修行の場面がほとんどなく、戦いに次ぐ戦いで、合間に少し練習で、すぐ強くなる。いや、分かる。娘に亡き者として扱われている私にだって、柱たちに修行をさせないことで、あのドライヴ感が出てくることはよく分かる。そこが新しいのもよく分かる。本来ならば、50巻くらいで、無惨と対決しなければならなかったはずなのに、20巻で対決している。そのスピードがあの作品を支えているのはそうなのだと思う。

しかし、それにしても、修行が足りねえなあ、と思う。娘が楽しく読んでいる『ぼくたちは勉強ができない』をどうしても受け入れることができないジャンプの読み手の古株としては、物足りない。もっと修行なんじゃないかと思ってしまう。ジャンプにラブコメを載せるな、と『オレンジロード』と『ウィングマン』否定派だった俺は思う。何がラブコメだ。ラブコメを読みたかったサンデーを読め。

しかし、まあ、あれだ、と思う。そういうのも、俺の責任なのかもしれないと思う。だって、もう、今の新人は、ほとんど育てられることなく、半年くらいで即戦力でいけ、と言われ、目を白黒させている。もう修行どころでなく、戦いに次ぐ戦いだ。場合によっては、スタートアップだ、何だで、私に想像がつかないような状況の人もいるのだろう。本来ならば、修行させる余裕を与えてあげなければならないはずの俺が悪い。炭治郎に申し訳ない。

いや、話がずれたが、『鬼滅の刃』の成長は早すぎる。そして、修行好きの私としては、つらい。娘は、どんどん成長していってしまう。もう少しゆっくり大きくなってもいいのに。



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