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「浮気と殺意」


浮気繰り返す妻に夫が木の棒で…

 毎晩帰宅が遅い上、「愛している」と書かれた携帯電話のメール、そして車の灰皿に残された見慣れない銘柄のたばこの吸い殻…。男は妻の浮気を確信し、激しい殺意を向けた。

 大阪府内の自宅で30代の妻を殺害したとして、殺人罪に問われた元会社員の男(40)に10月30日、大阪地裁は懲役11年(求刑懲役13年)の実刑を言い渡した。

 5年前にも浮気が発覚した妻。男は浮気を繰り返す妻にほとほと愛想をつかし、怒りを抑えられずに、3人の子供たちの前で妻を殺害した。凶行に使われたのは、子供の“遊び道具”だった。

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 検察側の冒頭陳述などによると、男が保険外交員の妻と結婚したのは10年前。小学生の長男と次女、幼い次男の3人の子供のほか、妻の実父と同居していた。

 男の悩みは妻の「浮気癖」だった。

 今年春ごろから、妻は仕事上の付き合いや友人とのカラオケなどと言い訳し、帰宅時間は午前0時以降になっていた。午前3時ごろになることも頻繁にあったという。

 男が妻の浮気を確信したのは事件の約1カ月前の6月。妻の携帯電話のメールをこっそり見たからだ。メールの中に男性の名前で「愛している」との内容を見つけ、追及すると妻は浮気を認めたという。

 話し合いの末、離婚して男が子供3人を引き取ることで合意。夏休みを待って男が実家に子供を連れて帰り、離婚手続きを始める予定だった。

 事件は、妻との別居が始まる夏休み直前の7月19日早朝に起きた。

 前日夜も妻は午前0時を過ぎたころに帰宅。午前6時ごろに目覚めた男は立腹し、浮気相手の男性に会うと言い出したことから口論となった。

 妻が「男性に会うなら子供を連れて心中する」と騒ぎ出し、寝ている子供を起こそうとしたのを見て男は逆上した。子供が外から自宅に持ち込んでいた長さ約50センチの木の棒を握りしめ、妻の頭に数回振り下ろし、さらにネクタイで首を絞めて殺害した。

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 10月16日に開かれた初公判。男は丸刈り頭にメガネをかけ、物静かでまじめそうな容姿だ。罪状を認めた後、弁護側の被告人質問に答えた。

 弁護人「妻の浮気に気付いたのはなぜ」

 男「帰りが遅く、私がメールを送っても返事がないことが多くなって。妻の携帯メールを見たら、男性からのメールに『愛している』と書いていたので」

 弁護人「メール以外は」

男「妻の車を見たらビールの空き缶が転がっていて、私が吸わないたばこの吸い殻もあった」

 弁護人「以前にも(妻は)浮気していたようだが、そのとき気付いたことは」

 男「同じように夜が遅く、妻の車がラブホテルに入っていくのを見たこともありました」

 弁護人「今回離婚を決めたのはなぜ」

 男「2回目の浮気ですし、将来またやったら限界かな、と」

 弁護人は妻を殺害した理由も詳細に質問した。

 弁護人「子供を連れて心中するといわれ、木の棒で殴ろうとした理由は」

 男「ほんまに連れて行こうとしていたから」

 弁護人「棒で殴ったところを子供に見られたんですね。そこでやめようと思わなかったのか」

 男「見られた瞬間ハッとして、すべてが終わってしまったような気になって」

 子供たちは妻の叫び声で目を覚まし、男が棒で殴りつける様子を呆然(ぼうぜん)とみていたという。

 頭から血を流している妻の目の前で泣いている子供たちを見た男は、「もう自分についてきてくれない」と感じて自暴自棄になり、殺害を決意した-と供述した。

 続いて検察官が強固な殺意など悪質性を浮かび上がらせようと、犯行当時の心境を問いつめた。

検察官「木の棒で殴ったのは奥さんが子供を連れて死ぬと言い出したからか」

 男「はい」

 検察官「素手で殴るとかは考えなかったのか」

 男「頭に浮かばなかった」

 検察官「棒で殴って奥さんをどうしようと思った」

 男「その時は(妻を)止めることしか頭になくて」

 検察官「子供を連れ出そうとする女の人を男の人が止められないわけないですよね」

 男「…」

 検察官「頭を狙って棒を振り下ろしたんですね」

 男「結果的に頭に当たった」

 検察官「頭をはずそうとは思わなかったのか」

 男「どうしていいかわからず…」

 検察官「拳で殴るぐらいでは気が済まなかったのですね」

 男「…」

 検察官「ではネクタイで首を絞めたのはなぜ」

 男「まだ妻の息があったので…」

   × × ×

 10月30日に開かれた判決公判。裁判長は「短絡的で、前途ある妻を殺害した罪は重い」と指弾しつつも、「浮気を繰り返し、家族を顧みない妻に抱いた怒りは理解できる」。事件の発端が妻の浮気にあることを指摘、男の心情に一定の理解を示した。

 離婚後、3人の子供を引き取ることになっていた男。公判に出廷した男の父の証言によると、男は子煩悩で良い父親だったという。

 夫婦はかつては愛し合い、幸せな家庭生活を夢見て結婚したはずだ。一体、どこで歯車が狂ってしまったのか。

 自ら持ち込んだ“遊び道具”で父親が母親を殴り、殺害する場面を目撃した子供たちのことを考えると、悲しく、やりきれない事件だった。  (津田大資)

全くやりきれない・・・

私は不幸中の幸い浮気調査の後日談でも、

刃傷沙汰やらのトラブルには出くわす事はほとんどない・・・

それは探偵を始めた頃に良かれと思って現場に呼んでの失態が、

教訓として活きているからで、

クライアントを調査現場に絶対呼ばない、知らせない配慮をしている・・・

浮気をする当事者は軽い気持ちかもしれないが、

浮気の相談に来るクライアントの半数は、

「殺してやりたい」や「死のうと思った」などと

「殺意」や「死」をほのめかす・・・

ほのめかさない人も考慮すると7割ぐらいはなんらかの殺意を抱く・・・

それだけは肝に銘じておいた方がいいだろう・・・。

2008/11/3
事件(探偵アングル)

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