悪を薙ぐ 第一話「序章」

これは悪役結社ヴァリアールに在籍する「悪食のネギマ」の過去の話である。二次創作のような一次創作のような何かだ。何話か継続で出していくつもりだ。宜しければぜひ見てほしい。

「師匠!今日の素振り終わりました!」
快活な少年は額から汗を滴らせ、一人の老人の元へと駆け寄る。彼らは悪魔狩の師弟関係であり、悪魔を狩ることを生業としていた。
悪魔狩は命を失う危険性があるためになる者が少なく町の殆どの依頼はこの二人が担当していた。
今日は久々の休日ということで、稽古が終わり次第買い物に行く約束をしていたのだ。

「おう、おつかれさん。そうだなぁ、今日は折角だしあそこのパイ屋行くか。前回の依頼の金がたんまりと有るしな」
師匠は口角をこれでもかとあげ、笑っていた。

パイ屋への道を歩く。迷路のようで師匠と過ごしてきたこの10年でもまだ行き方を覚えることができていないため、師匠と離れないように手を繋ぐ。師匠の掌はしわくちゃだがタコがたくさんあり、しっかりとした厚みを感じた。日があまり射さない通りでは影が曖昧な輪郭を見せていた。

次の角を曲がれば店が見えるというタイミングで、突然叫び声が聞こえてきた。
「やめてください!誰か!助けて!」
二人は急いで駆け出した。

丁度目的のパイ屋で、揉め事が起きているようだった。店員を人質に金を寄越せだの、憲兵に言うなだのと叫んでいる男性が一人いた。手にはナイフを握っていたために店員や客たちは上手いこと近寄ることが出来ないでいたのだ。

師匠が少年にアイコンタクトを送ったと同時に二人は駆け出した時とは比にならない速度で動き始めた。(といっても、充分に人の目で追えるほどだ)
接近する二人に気づいたのか男はナイフを二人の方向へ向けた。が、そのときには男の頭には師匠の踵が落ちてきており、ナイフを持った腕は少年によって拘束されていた。そして、踵を頭に入れられた男は一歩も動くことなくその場で倒れてしまった。

「全く、悪魔も大概ですが人間ほどの醜い悪は無いんじゃないですかね……僕を捨てたのも他でもない人間なんですから」
弟子は呆れながら男を縛った。

「いやぁ、災難だったなぁ薙(ナギ)…でも、パイが2枚も無料で貰えるんだから…まぁいっか…ガハハッハ」