朝は煙草と共に始まる。

兎にも角にも僕は弱くて脆い人間である。周囲からの優しい言葉に救われると同時に自分の不出来に情けなくなってくる。自分で自分の首を絞めながら、口では助けを乞うている滑稽な様は度し難い。
難しく考えすぎだと、もっと気楽に構えなと、言われる度にやり方がわからずに気のない返事を繰り返してきた。今もまた失敗しているというのに、呆然としたままうずくまっている。皆が思うより、僕は考えていない。ただ目まぐるしく日々が流れていく中で、言葉が浮かばないまま口をつぐんでいるだけだ。難しい顔をして頭を真っ白にしているだけだ。
買い被られた自分を捨てられないでいる。買い被られていると思うこと自体が傲慢だとも思う。自分を冷笑する自分がいる。気付けばコイツとはもう長い付き合いになる。何をするにしてもコイツは付いてくる。見捨てられないだけマシかと思って、縁を切れないでいる。
手がかじかんで文字が上手く打てない。指先が冷たいだろうことがタッチパネルに触れる感触でわかる。このまま凍ってしまえば時間が止まるのに、と荒唐無稽な考えが頭を過ぎる。煙草の火が温かくて我に帰る。頭がくらりとして、少し安堵する。室外機の音がしている。遠くでクラクションが鳴った。生きている。焦りが生まれる。煙草に火をつける。最後の1本だと気付いて舌打ちをする。煙草に口を付ける。焦燥感が小さくなる。あぁ、生きている。気付くと火がフィルターまで届いている。朝は煙草と共に始まる。今日のうちに買いに行かなきゃならない。

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