タイピング温故知新 ~故きタイピングゲームを温め新しきタイピングゲームを知る~

※この記事はタイパー Advent Calendar 2021の14日目の記事です。
13日目の記事は「テル」さんの「異種競技の「スゴさ」を比べる難しさ 〜日本語・英語タイピングの違いから〜」です。
15日目の記事は「pogi」さんの「2001年タイピングゲームの旅」です。

はじめに

こんにちは! たのん(@tanon_710)です。
今年は他に例を見ないほどたくさんのタイピングゲームがリリースされ、タイパー界が大いに盛り上がる年になりました。
一方で、これまでにもタイピングゲームはたくさんリリースされており、その中にはあまり知名度の高くないものも多くあります。
というわけで、古いタイピングゲームと新しいタイピングゲームを対比させる形で紹介するレビュー記事を書くことにしました。

この記事では、以下の5つのテーマについて、そのテーマに沿った新旧のタイピングゲームを取り上げ、簡単な紹介を加えています。

・入門
・タイピングx音楽
・短文入力
・実用入力
・称号システム

古いタイピングゲームにも、新しいタイピングゲームにも、それぞれ違った魅力があります。この記事が、色々なタイピングゲームに触れるきっかけになることを願っています。
それでは、さっそくはじめていきましょう!

テーマ1:「入門用」

今年はあの「Ozawa-Ken」の作者であるhigoさんが「Typing Land」という入門者向けのゲームを公開したことが話題になりました。
Typing Landは、よくあるチュートリアル型のタイピングゲームに面クリアの要素を付け加えたタイピングゲームです。
グラフィックや効果音の楽しさ、適度な1ステージの長さ、多人数でのゲームの共用に配慮したつくりなど、細かな気配りの行き届いた丁寧なゲームで、Microsoftストアで配布されているほか、iPhone・Android向けにもリリースされています(スマートフォンなどで遊ぶ場合は外部キーボードの接続が必要になります)。
また、「チャレンジモード」と呼ばれるタイピング練習の実力を試すミニゲームも用意されており、個人的にはタイプウェルオリジナルを思い出す「シュートブロック」というミニゲームがお気に入りです。

タイピングゲームの黎明期から、入門者向けのタイピングゲームは文字どおり星の数ほどリリースされてきましたが、そのなかで自分の思い出に残っているのは「ココルの森のフィーナ」というタイピングゲームです。
タイピングゲームとしては珍しいファンタジックな世界観が特徴で、主人公の「フィーナ」のイラストや世界観に沿ったグラフィック、BGMなどがゲームを印象的に彩っています(なんとキャラクターボイスも付いています)。現在も作者の公式サイトで配布されています。
ゲームとしては、ホームポジションのキーのみの練習→全キーの練習→単語入力の練習とかなりギャップのあるつくりになっているのですが、世界観を重視しゲームとして丁寧に作られているところが印象に残っています。

どちらも入門用のタイピングゲームということで、かならずしもタイパーが楽しめるゲームではありませんが、ぜひ一度触れてみていただければと思います。

テーマ2:「タイピングx音楽」

今年は個人開発のタイピングゲームだけでなく、企業開発のタイピングゲームも活発に公開されており、たとえば「ももいろクローバーZ」のライブDVDの販促として公開された「PLAY!」のPゲームが挙げられます。
今回ご紹介する「TYPOLY PRIDE」もその1つで、メディアミックス作品「IDOLY PRIDE」の販促として公開された歌詞入力型のタイピングゲームです。現在も公式サイトで遊べます。
TYPOLY PRIDEの特徴は、行ごとの歌詞入力の成否により得点が付くだけでなく、入力速度に応じたボーナスポイントが付くところにあり、これにより全行打ち切りが可能であってもポイントに差が生まれるようになっています。
サイトの公開当初、上位タイパーがこぞってスコアタを行ったこともあり、ランキングには非常に高いレベルのスコアが残されています。

TYPOLY PRIDEに似たタイピングゲームとして、「歌謡タイピング劇場」と「Typing Tube」が挙げられます。
どちらもタイピングゲームとしてはあまりにも有名な作品ですが、前者はTYPOLY PRIDEと同様に歌詞の入力速度に応じてボーナスポイントが付くという点で、後者はさまざまな曲で歌詞入力が楽しめ、その速度の要求値が非常に幅広いという点で共通しています(どちらも有名な作品であるため、紹介はサイトのリンクを張るにとどめます)。

どちらも、入り口は簡単で、しかしながらどこまでも競い合うことができるという点で共通しており、とてもやりがいのあるゲームに仕上がっています。ぜひお試しください!

テーマ3「短文入力」

今年は「Realforce Typing Championship」でも採用実績のある「Weather Typing」の20周年ですが、そんなWeather Typingの進化版とも言える短文入力型のタイピングゲーム「FoxTyping」が先日公開されました。
FoxTypingは現役タイパーの「白狐」さんによる作品で、短文入力型のモードのほか、変換やミス修正ありの長文入力型のモードや初心者向けのチュートリアルモードも用意されています。公式サイトにて公開中です。
FoxTypingの特徴は、初速や先読み、正確性の要求ラインなど記録狙いをするにあたってストレスになる細かな要素に丁寧に気を配っている部分で、UI/UXからスコア計算式に至るまで、作者のタイパーとしての思いが強く反映されています。
また、スコアによるランク付けも用意されており、上位ランクを出すには相当な速度が必要になります。
短文モードで出題されるワードも、Weather Typingのワードの生成仕様をより柔軟にした形式で生成されており、バリエーション豊かで自然な文章を生成することに成功しています。

次に打つワードが表示されている短文入力型のタイピングゲームは「タイピング速度測定」や「打鍵トレーナー」など例はあるものの数が少なく、FoxTypingと対比するのにふさわしいゲームはなかなか見当たりません。
そのなかでも、タイピング速度測定はFoxTypingと同様ユーザーの声を丁寧に吸い上げ積極的にUI/UXの改善を図っているほか、出題ワードの毎月更新という多大な努力を続けており、作者自身がTwitterでタイパーとの交流を行っているなど、タイピングゲームとしても、それ以外の面でも、FoxTypingとの共通点が見られます。
そんなタイピング速度測定は現在も公式サイトにて公開中です。

どちらも、なるべくストレスなく純粋な短文入力の速度を測り競うことができるという点でとても魅力的で、腕試しには最適なゲームになっています。
ぜひ一度プレイしてみてください!

テーマ4:「実用入力」

今年はタイピングゲームとしては非常に珍しい、実用入力型(ミス修正が必要なタイプ)のタイピングゲームがいくつか公開されました。
前述したFoxTypingもその1つですが、ここでは実用入力型の歌詞タイピングゲーム「type-notes」をご紹介します。
type-notesは流れる音楽に合わせて歌詞をタイピングするタイプのタイピングゲームですが、実用入力型のタイピングゲームにありがちなコピペや予測変換による不正が封じられているなど、純粋な実用入力の能力を競い合う場として丁寧に整備されているゲームになっています。公式サイトにて公開中です。
今年登場したタイピングゲームのなかでは少し知名度の低い作品ですが、可能性と将来性に満ちた作品なので、ひとりでも多くのタイパーの目に触れることを願っています。

type-notesのような歌詞を入力するゲームは、先述したTYPOLY PRIDEや歌謡タイピング、Typing Tubeなど数多く存在するのですが、ここではtype-notesと同様に実用入力型である歌詞タイピングゲーム「ニコ生タイピング」を取り上げます。
ニコ生タイピングは、ニコニコ生放送のコメント機能を用いたタイピングゲームで、生放送の画面に表示される歌詞をコメント欄にタイピングで書き写してコメントしていくというゲームです。
ゲームの性質上ソロでプレイするのが少し難しいという難点を抱えているものの、実用入力特有の変換技術やタイピングの安定性を求められるという意味で、とても魅力的なゲームになっています。
ニコ生タイピングの配信は有志の手により活発に行われているほか、毎月1回「しろ」さんによるニコ生タイピング大会が開かれており、こちらに参加することで、ほかの参加者と実用入力型のタイピングで競うこともできます。

どちらも、タイピングゲームとして実現するのが難しい実用入力型のゲームに挑戦しており、毎パソ勢の受け皿としても機能するのではないかと思っています。
実用入力は縁遠いというタイパーの方も多いでしょうが、この機会にぜひ試してみていただければと思います。

テーマ5:「称号制度」

今年はタイパー作のタイピングゲームも多く公開されましたが、先述したFoxTyping同様、ここでご紹介する「Cube」もタイパー作のタイピングゲームです。
Cubeは、かつて毎日パソコン入力コンクール優勝、タイプウェル国語R常用ZG、Realforce Typing Championship出場などの実績を持つ方が作成した単語入力型のタイピングゲームで、タイプウェルと同様に詳細な分析機能が実装されています。
また、独自の基準によるスコア算出機能があり、スコアランキングも実装されています。ランキングには上位タイパーも名を連ねていますが、現時点ではランキング1位よりも作者のスコアのほうが高いという状態で、作者のタイパーとしての実力が非常に高いことが分かります。

Cubeをプレイしたとき、古めのタイピングゲームに詳しい方には「The Typing of The TOHO(TOT)」(Flash製のため現在はプレイ困難)が頭に浮かんだ方もいるのではないかと思いますが、この記事ではCubeの「称号制度」に着目し、Cubeと同様に厳しい称号制度が用意されているタイピングゲーム「T6X」を取り上げます。
T6Xは、あの「バトタイプ」の作者であるkajiさんの作品で、タイプウェルよろしく様々な種類のワードが準備された単語入力型のタイピングゲームです。
日本語や英語の単語タイピングだけでなく、ひらがなランダムやアルファベットランダムのモードがあるなど、ワードのバリエーションは多岐に富み、現在もVectorで配布されています。
単語の表示画面はお世辞にも見やすいとは言えないのですが、T6X最大の特徴は異常なまでに要求値の高い称号制度にあります。
2003年時点で存在したゲームでありながら、タイプウェルZH程度はないと称号を全解禁できないというハードルの高さで、昔挑戦したときはあまりの難しさにさじを投げた記憶があります。

どちらも、現代の上位タイパーでも一筋縄ではいかない難易度を誇るため、ぜひ腕試しに挑戦してみてください。

おわりに

以上、駆け足でしたが新旧さまざまなタイピングゲームについて見てきました。
今年は個人開発のタイピングゲームだけでなく、「PLAY」や「タイピングクエスト」など企業開発のタイピングゲームも活発に公開・販売される特異点のような年でした。
これから登場する新しいタイピングゲームを楽しみに、この記事の締めとします。

明日の記事は「pogi」さんの「2001年タイピングゲームの旅」です。こちらもぜひお楽しみください!