対戦型タイピングゲームにおける戦略について

※この記事はタイパー Advent Calendar 2022の穴埋めを目的として書かれた記事です。
非常にありがたいことに、この記事を登録することなく25枠すべてが埋まりましたので、タイパーアドカレとは別枠という形で公開します。

はじめに

こんにちは! たのん(@tanon_710)です。
この記事では、シングルプレイのタイピングゲームとは異なる性質を持つ対戦型のタイピングゲームを取り上げ、対戦においてよりよい結果を残すためのアイデアについて考えます。
具体的には、Weather Typingをはじめとするワード取得型の対戦型タイピングゲームについて、対人戦におけるタイピングスタイルの分類を行い、それぞれのスタイルに応じた戦略・相性について述べていきます。

この記事を書こうと思ったきっかけは、タイピング界隈において、対戦型のタイピングゲームを用いたタイピング大会開催頻度が増えてきたことにあります。
対戦型のタイピングゲームを用いたコミュニティ大会はタイパー界隈の黎明期から存在していますが、近年では主にWeather Typingを用いたコミュニティ大会が数多く開催されるようになったほか、「REALFORCE Typing Championship」などの企業主催の大会も開催されるようになりました。
直近でも12月17日の20:00より、Weather Typingを用いたコミュニティ大会「タイパー甲子園」が開催予定となっています。
こうした流れのなかで、大会においてよりよい結果を残すための考え方を共有することは意味のあることではないかと考えました。

もちろん、こうした大会で自分の実力を最大限発揮するためには、緊張をうまくコントロールするための場慣れや経験も重要になってくるのですが、対戦型のタイピングゲームならではの性質や対人戦での戦略を頭に入れておくことも、大会での成績向上に役立つはずです。
この記事が、大会での好成績を収めるための一助となれば幸いです。
それでは、さっそくはじめていきましょう!

タイピングスタイルの分類

まず、対戦型のタイピングゲームにおけるタイピングのスタイルについて、どのようなものがあるかについて考えてみます。

例えば一人用のタイピングゲームであれば、たとえば「トプスピ型」「ワースピ型」、あるいは「乱打型」「正確型」といった言葉が、タイピングスタイルの表現によく用いられています(タイパー界隈になじんだ方であれば、それぞれの言葉に該当するタイパーを思い浮かべることができると思います)。
ただ、これらの表現は一人用のタイピングゲームでのリザルトにおける平均速度や最高速度、正確性といった数値を言葉で言い換えたものにすぎず、相手ありきでリザルトが大きく変化しうる対戦型のタイピングゲームに直接適用することはできません。

そのため、対戦型のタイピングゲームにおけるタイピングスタイルを表現するには、新たな言葉を持ってくる必要があります。
この記事では、「速い」「上手い」「強い」の3つの言葉を用いて、対戦型のタイピングゲームにおけるスタイル分類を行うことにします。

・「速い」タイパー

シングルプレイにおける「トプスピ型」に近いタイプになり、かみ合ったときの加速力が武器になります。
「速い」タイパーはいわゆる「ぶっこみ」が上手い初期加速に秀でたタイプや、初速に優れた短文を得意とするタイプ、運指最適化を活かしワード次第で大きく加速できるタイプなど、細かく見るとさらにいくつかのタイプに分けることができますが、共通点として、短文に対して比較的長文に弱い、ワードごとのkpmのブレが大きい、固まったミスをしがちという要素が挙げられます。

・「上手い」タイパー

シングルプレイにおける「ワースピ型」に近いタイプになり、対戦においてもミスが少なく、安定した速度でのタイピングが武器になります。
「上手い」タイパーは中~長文での後半加速に秀でたタイプや、やや溜め打ち気味にワードを打つタイプ、最適化を活かし難しい文字列での減速を抑えているタイプなど、細かく見るとさらにいくつかのタイプに分けることができますが、共通点として、短文に対して比較的長文に強い、ワードごとのkpmのブレが小さい、固まったミスをすることが少ないという要素が挙げられます(ちょうど「速い」タイパーと逆の特徴を持っています)。

・「強い」タイパー

シングルプレイでは現れにくい要素や能力を武器にしたタイプになり、ワード内での細かな駆け引きやプレッシャーのかけ方が武器になります。
「強い」タイパーはお互いが詰まったワードなど接戦での競り合いに強いタイプや、ぶっこみや安定したタイピングを使い分け相手へのプレッシャーをかけるのが得意なタイプなど、細かく見るとさらにいくつかのタイプに分けることができます。
「強い」タイパーはミスをしたときのリカバリー力に優れているのが共通点となっており、多少ミスをしてもワードを取りきることができるため、相手のペースを乱し、思い通りのタイピングをさせないように立ち回ることができます。

各スタイルの戦略・相性

次に、上記3つのスタイルについて、それぞれの強みと弱み、各スタイルの戦略、各スタイル間の相性について見ていきます。

・「速い」タイパーの戦い方

強み:
・相手を上回る速度を、相手より先に規定の回数出せば勝てると考えられるので、途中経過を気にせず目の前の1ワードに集中できる
・かみ合い次第でワードを連取できる可能性があり逆転を狙いやすい、また実力が上の相手に対してもまぐれ勝ちを狙いやすい
・得意なワードで稼げればよいので得手不得手が大きくても比較的なんとかなる
弱み:
・自分が出せる最高付近の速度を出したときに、相手にワードを取られてしまうとメンタルが揺らされる
・勝利までの必要ワード数が少ない勝負や接戦になった場合に結果が不安定になる
・実力が近い相手との対戦でも結果が大差になりやすい
戦略:
・相手の速度やスタイルに応じて、「相手にほぼ確実に勝てる速度を出せる確率を増やす」もしくは「相手にそれなりの確率で勝てる速度を出せる確率を増やす」のどちらかを狙う
・勝利までの必要ワード数が多い場合は最高速重視でぶっこみを優先するほうがよく、逆に必要ワード数が少ない場合は最高速度より少し抑え目に加速すると勝率が安定しやすくなる

・「上手い」タイパーの戦い方

強み:
・相手よりも少し速い速度を出せば十分なので取得ワード数を計算しやすくリードを保ちやすい
・詰まりミスなどによる失点を抑えられるので、勝利までの必要ワード数が少ない勝負や接戦になった場合でも結果が安定しやすい
弱み:
・相手の速度が自分の出せる速度の平均値を上回っている場合や一度ワード差を付けられた場合に逆転するのが難しい
・苦手なワードが多ければ多いほど速度が安定しなくなり力を発揮できなくなる
戦略:
・一定の速度を揃えることで相手にプレッシャーを与えることを狙う、相手のスタイルにもよるが接戦になりがちなのでメンタルの強さを押し付けることを目指す
・一度リードを許すと差を縮めるのが難しいので、序盤はやや攻め気味に入ることでワード差をつけさせないようにする

・「強い」タイパーの戦い方

強み:
・ミスからのリカバリー力に優れ、ぶっこみなどの思い切った打ち方を選択しやすい
・多少のミスをゴリ押しでカバーできるため、それなりに安定性を高く保つことができごまかしが効きやすい
・相手のミスにつけ込みワードを取れることが多く、相手のリズムを崩しやすい
弱み:
・ぶっこみ、安定性の両方が中途半端なため、相手に開き直られると勝利が遠ざかる
・相手との実力が多少離れていても試合結果が接戦になりやすい
・出題ワードに習熟していないと粘りどころが分からず力を発揮しにくくなる
戦略:
・序盤と終盤はぶっこみ寄り、逆に中盤は安定性重視でポイントを積み重ねることを狙う
・相手のミスをつく、相手のペースを乱すなどして自分に有利な展開を作ることを目指す
・相手のスタイルや緊張の程度に応じて、ぶっこみと安定性の比率を調整する

それぞれの相性

3つのスタイルの戦略について述べたところで、これらのスタイルが互いに持つ相性について簡単に説明します。
これらのスタイルは三すくみ的な関係にあり、「速い」タイパーは「上手い」タイパーに強く、「上手い」タイパーは「強い」タイパーに強く、「強い」タイパーは「速い」タイパーに強いという関係があります。
実力が同じくらいなのになかなか対戦で勝てないという場合には、こうしたスタイル間の相性が影響しているかもしれません。相手のスタイルを理解し、弱みをつくことを意識することで多少なりとも勝率が改善するものと思います。

対人戦における思考

タイピングスタイルの相性は、実力の近い相手との間では大きな影響力を持ちますが、実力が上下に離れた相手との間には補助的な効果しかもたらしません。
この項目では、タイピングスタイルによらない一般論として、格上・格下の相手との対戦に向けてどのようなことを考えるべきかについて述べていきます。

格上の相手にどう立ち向かうか

・相手が大きく詰まったときは無理やりにでもワードを取りにいく
・自分の得意ワードが来たときは失敗を覚悟してぶっこみにいく、自分のスタイルによらず基本的には最高速度を追求する打ち方に寄せる
・相手に大きくワード差をつけられても焦らない、逆に相手に先行したときにも勝ちを意識して緊張しすぎないように気をつける

格下の相手への取りこぼしをどう減らすか

・多少詰まったとしても相手にワードを取られないようにリカバーを図る
・大きなミスをしないように、認識や組立に余裕を持たせてやや溜め打ち気味に打つ
・速度面では僅差で上回ればよいと考え、初期加速よりも後半加速を重視し立ち上がりは特に安定性を意識する
・相手がぶっこみで想定以上の速度を出してきても焦らなくてすむように事前に数ワードの失点を想定しておく

おわりに

以上、ここまで対戦型のタイピングゲームにおけるスタイルや、それらのスタイルでの戦い方について見てきました。
こうした思考や戦略は、特に対戦経験の多いタイパーであれば自然と習得しているものと思いますが、それゆえに文章としてまとめられることはあまり多くありません。
この記事が対戦型のタイピングゲームへの理解を深め、大会へのモチベーション向上につながることを願っています。