タイピングイベント開催の経験談を語ります

※この記事はタイパー Advent Calendar 2021の1日目の記事です。
2日目の記事は「白狐」さんの「タイパーにとっては耳が痛かった話」です。

はじめに

こんにちは。今年もタイパーアドカレのトップバッターを務める「たのん」(@tanon_710)です。
この記事では、自分がこれまでに関わってきたタイピング関連のイベントを取り上げ、それぞれのイベントにどのように関わってきたかを述べていきます。自分は主にオンライン開催のイベントを企画・主催してきたため、取り上げるイベントはオンラインのものが中心になります。
イベントの企画・開催に興味がある方だけでなく、自分が関わったイベントにご参加いただいたことのある方や、もちろんそうでない方も含めて、ぜひお楽しみいただけたらと思います。

今回取り上げるイベントについて

この記事では、以下の6つのイベントを取り上げ、それぞれのイベントにどのように関わってきたかを述べていきます。

・多言語対戦会(2016~2019)
・タイピングサミット(2017~2019)
・タイパーアドカレ(2018~)
・Warriors of Typing(2019~)
・108万打鍵チャレンジ!(2020~)
・タイピングパーティ!(2021~)

ここ数年のタイパー主催のイベントには積極的に関わっていますので、どこかで自分の名前を見た、という方もいらっしゃるのではないかと思います。
それでは、早速はじめていきましょう!

・多言語対戦会

このイベントはTyperacer上で多言語タイピングの対戦会を行うというもので、2015年から2019年まで週1回のペースで開催していました。
自分は2016年から2019年まで、イベントの企画・主催を行っていました。

このイベントは自分が開催する初めてのイベントで、タイピングサミットのイベントチーム担当としてイベント企画・主催の経験を積む前に開催したイベントでした。
ただ、このイベントは過去の対戦会を引き継ぐ形で開催したものだったこともあり、イベント内容を考える必要がなく、また固定の参加者層もいたため、安心してイベントを開催することができました。
今後イベントを開催したいと考えている方は、もし可能であればほかのイベント運営に参加したり、あるいはこの例のようにイベントを引き継ぐなどしてイベント開催の経験を積むと色々と学びが得られると思います。
(自分は年末に「108万打鍵チャレンジ!」の第2回を開催予定ですので、もし運営側にご興味のある方はお気軽にご連絡いただければと思います)

このイベントの主な開催目的は自分の多言語タイピング力向上だったため、表向きは多言語の練習をしたい人全般を対象とするといいつつも、結果的にガチ勢向けのイベントになってしまいました。
ただ、こうした経験から、イベントを開催するにあたってはなるべく多くの参加者が楽しめるような形式にする、あるいはイベントの対象者を明確にすることが大切だと学べたため、このイベント自体への反省はあるもののよい経験になったとも思っています。

多言語タイピングはタイピング界隈でもマイナーなジャンルだったため、Twitterで毎週開催のアナウンスをするとともに、後述するタイパーアドカレに多言語タイピングの布教記事を書いたり、タイピングサミットの場などで積極的に多言語対戦会への参加を呼びかけるなど、参加者を増やすために動いていました。

・タイピングサミット

このイベントは東京の会場を借り、3日間に渡ってオフラインでタイパー同士の交流を楽しむというもので、2013年から2019年まで、年1回のペースで開催されていました(現在は諸事情により休止中です)。
自分は2017年から2019年まで、イベントの企画担当として運営チームに参加していました。

タイピングサミットのイベントは、ホームページなどで事前に告知される公式イベントと現地で当日告知されるゲリライベントに分かれています。
自分は、運営チームに参加した1年目は既存の公式イベントの引き継ぎとゲリライベントの企画を行い経験を積みました。
2年目以降はゲリライベントの企画を継続しつつ、新しい公式イベントの提案も行い、3年目はイベントの企画担当リーダーも務めました。

公式イベントの提案の際は、既存の公式イベントを発展させる形で内容を練っていきました。たとえば、タイピングサミットには例年「座学枠」と呼ばれる、タイピングに関する考察を語る公式イベントが存在したのですが、これを発展させる形で有志によるプレゼン大会企画を考え、実際に公式イベントとして開催しました。
(いわゆる「ライトニングトーク」イベントを下敷きにしています)
また、公式イベントは大会形式にしたり順位付けを明確にすることで「ガチ感」を演出するようにしていました。

ゲリライベントの内容を考える際は、なるべく多くの参加者が楽しめるような形式になるようにルールを決めていました。たとえば、タイピングサミットのゲリライベントでは、「e-typingの一発勝負のスコアを目標値にどれだけ近付けられるかを競う」「Weather Typingの課題文をジェスチャーで伝えてタイピングする」などのイベントが開催されていました。
公式イベントが「ガチ感」を演出しているぶん、ゲリライベントは比較的「ゆるい」ノリになるように調整されていました。
(とはいえ、ゲリライベントであってもガチで取り組んでくださる参加者が多かったのはタイパーらしいなと思います)

公式・ゲリライベントの内容を考えるにあたり共通していた考え方は、なるべくオフラインであることを活かせるルールにすること、そして運営チーム以外もイベントに積極的に参加できるようにすることの2点でした。
上記のイベントのほかにも、公式イベントとして出身地を基準としてチーム分けを行いWeather Typingを用いた団体戦を行うなど、少しでもオフラインで開催する意味を持たせられるように工夫をしていました。

・タイパーアドカレ

このイベントはAdventarというサイト上で12月1日から12月25日までの25日間、1日1記事をリレー形式で公開していくというもので、2018年から現在まで、年1回のペースで開催しています。
自分は2018年から現在まで、イベントの企画・主催を行っています。

もともとアドカレという文化に興味があったため、いつかタイパーアドカレを開催したいという目論見があったのですが、タイピングサミットでの「座学枠」の影響で一部のタイパーが考察記事を書くようになっていたこと、同じくタイピングサミットでのプレゼン大会企画が好評を博し、タイピングについて語れる人が一定数いることが分かったことから、2018年にはじめてアドカレを開催しました。
はじめてアドカレの開催告知をした直後はなかなかカレンダーが埋まらず、25日分記事が埋まるかが心配でしたが、参加者が参加者を呼び、最終的にはカレンダーが埋まり一安心しました。
翌年以降もカレンダーはきちんと埋まっていますが、これは当たり前のことではなく、アドカレの参加者、そしてアドカレの読者あってのことですので、改めてこの場で感謝を伝えたいと思います。

アドカレ開催の狙いは2つあり、1つはここ数年廃れていたブログなどでタイピング考察の記事を公開する文化の復活、もう1つはタイピング以外の趣味についての記事を書くことでタイパー間の交流の機会を増やすことでした。
2018年はタイピング考察の記事が数多く投稿され、翌年以降は考察記事はもちろん、趣味に関する記事も公開されるようになり、当初の狙いは実現できたのではないかと思っています。
(これは意図していたことではないのですが、アドカレ以外の期間にも考察記事を公開するタイパーが増えてきており、界隈の活性化にもつながったのではないかと思っています)

今年も様々な記事が公開されるものと思いますので、ぜひ記事をお楽しみいただき、もしお時間があればアドカレにご参加いただければ幸いです。

・Warriors of Typing

このイベントはWeather Typingを用いて総当たり形式の大会を行うというもので、2019年から現在まで、年4回のペースで開催しています。
自分は2019年から現在まで、イベントの企画・主催を行っています。

「Warriors of Typing」は、東プレ社によるタイピング大会「REALFORCE TYPING CHAMPIONSHIP(以下RTC)」を観戦して感じた高揚感、タイピング界隈全体の盛り上がりを持続させたいという思いからスタートした大会です。
もともと「大乱闘スマッシュブラザーズDX」のユーザー主催大会に参加していたり「ぷよぷよ」界隈のギャラリー勢をしていたため、界隈におけるユーザー主催大会の重要性は理解していたのですが、そこにRTCという大きな転機が訪れ、ユーザー主催大会の開催に踏み切りました。

Warriors of TypingはRTC出場を目指すタイパーに向けての登竜門を意識して企画・主催しており、イベント用のアカウントから情報を発信するようにしていること、大会の模様を配信したり賞金を設けていることなどは、すべて大会としての「ガチ感」を演出するための工夫です。
とはいえ、RTC出場を目指すレベル~RTCで活躍できるレベルのタイパーは限られているため、現状のタイピング界隈ではこうした層に絞って大会を行うのは現実的ではありません。
そのため、RTCのようにダブルエリミネーション制を採用するのではなく、イベントの参加人数が少なかった頃は総当たり制、現在はスイスドローを採用することで、実力を問わず試合回数が一定になるようにルールを定め、幅広い層がイベントに参加しやすくなるようにしています。
それだけでなく、配信では上位層どうしの対戦に限らず実力の近い対戦を配信するようにするなどして、大会に参加することそのものの楽しさを体験していただけるように意識しています。

また、開催が年4回(3ヶ月に1回ペース)なのにも理由があり、これよりもペースが早いとタイピング力の向上を実感するのが難しく、逆にこれよりもペースが遅いと大会へのモチベーションが薄れてしまうと判断したためです。
歴史あるタイピング大会の1つである「毎日パソコン入力コンクール」が年3回(4ヶ月に1回ペース)で開催されていることを考えると、上記の判断も納得していただけるのではないかと思います。

現在のところ、Warriors of TypingにはRTC出場レベル~e-typing500レベルまで幅広い実力の方にご参加いただいており、また大会のメインターゲットであるRTC出場を目指すe-typing650~700レベルの参加者も多く、アドカレと同様に当初の狙いを実現できているのではないかと思っています。
(個人的には、幅広い実力の参加者が1つの大会で盛り上がることができている現状は、かつて失敗した多言語対戦会のリベンジができている気がしてとても嬉しいです)

イベントの開催当初は自分のTwitterでイベントPVを流すという形で広報を行い、以降はイベントのリピート参加やクチコミでの新規参加者の増加という形で参加者が増えてきました。
イベント初年度はなかなか参加者が集まらず開催を延期した回もありましたが、2年目以降はリピーターがついたり新規の参加者や配信の視聴者が増えたりと、イベントの認知度が少しずつ高まっているのではないかと思っています。

Warriors of Typingのアーカイブは以下のYouTubeチャンネルにて公開していますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
https://www.youtube.com/channel/UCEPhfllv5gm32HuYgWO4lNQ

・108万打鍵チャレンジ!

このイベントは大晦日当日にTwitter上で自身の打鍵数を投稿し、参加者の打鍵数を合計して108万打鍵を目指すというもので、合わせてDiscordサーバー上でのタイパー同士の交流も行われました。第1回が2020年の大晦日に開催され、第2回も2021年12月30日に開催予定です。
自分は運営チームの一員として、Discordサーバーの管理およびイベントの企画・主催を行っています。

諸事情によりタイピングサミットが開催できない状況が続き、タイピングサミットのようなタイパーが交流できる場所の必要性を感じていたものの、タイピング界隈に広く周知するのは難しいと考えていました。
そんなとき、Twitter上で「108万打鍵チャレンジ!」という企画の開催が告知されていること、そしてその企画が広く周知されていることを知り、この流れに乗ってしまえと便乗してDiscordサーバーの運営チームの一員に名乗りを上げました。
(というわけで、実は「108万打鍵チャレンジ!」の準備は開催1週間前程度からスタートしており、イベント中の企画も前日~当日に準備していたりしました)

こうした事情から「108万打鍵チャレンジ!」はタイピングを通した交流を図ることを第一としてDiscordサーバーの準備や公式企画の準備を行っていました。この狙いが上手くいったかは、野良対戦が活発に行われていたことや突発的にタイピング上達論の講義を行う方が出てきたことが証明してくれているものと思います。
また、このイベントに向けて準備したDiscordサーバーは使い捨てにするのではなく現在に至るまで継続的に運用しており、単発のイベントに留まらずタイパーどうしの交流の場として活用していただけているのではないかと思います。
Discordサーバーの招待リンクはhttps://discord.gg/NBAHsc64H7ですので、ご興味のある方はぜひご参加ください!

ちなみに、「108万打鍵チャレンジ!」の模様は以下のYouTubeチャンネルにてアーカイブを公開していますので、お時間のある方はぜひチェックしてみてください。https://www.youtube.com/channel/UCqdPUFkd9k3TvUIaDMnD2Lw

・タイピングパーティ!

このイベントはDiscordサーバー上でタイパー同士の交流を図るというもので、第1回が2021年3月6・7日に開催され、第2回も2021年10月16・17日に開催されました。
自分は運営チームの一員として、Discordサーバーの管理およびイベントの企画・主催を行っています。

このイベントは、タイピングサミットや「108万打鍵チャレンジ!」ほどの規模感ではなく、日常の延長として「ゆるく」交流できるイベントがほしいと考えて開催したものです。
そのため、公式企画もタイピングに関連付けてはいるものの、協力型のルールを採用するなど、「ガチ」ではなく「ゆるい」企画であることが分かるように配慮しました。
また、日常の延長をテーマにしているため、「108万打鍵チャレンジ!」とは異なりタイピングをメインとして打ち出すのではなく、ボードゲームなどのタイピング以外のゲームでも交流を図るようにしていました。

それとは別に、「108万打鍵チャレンジ!」に向けて準備したDiscordサーバー上でイベントを開催することでDiscordサーバーの利用を活性化したいという狙いもあり、そうした意味でも日常の延長にあるイベントになるように企画を進めていきました。
結果的に、第1回・第2回ともにタイピングだけでなくボードゲームなどでも交流を深めることができ、イベントの参加人数の面では「108万打鍵チャレンジ!」に及ばないものの、イベントの狙いはきちんと実現できたのではないかと思っています。

まとめ

ここまで、自分が関わってきた6つのイベントについて、企画・主催時に考えたことを見てきました。
イベントを企画・主催する際に考えるべきことは数多くあると思いますが、自分の場合は「対象」と「目的」の2つを明確にするようにしています。
最初は漠然としたイベント案からスタートすることもありますが、イベントを何のために主催するのか、またどのような方に参加してほしいのか、この2点を明確にしてから改めて「対象」と「目的」に合わせたイベント内容を考えるようにしています。
こうした段階を踏むのは、少し大げさではありますがイベントそのものの価値を高めたいと考えているからです。もちろん、「○○という内容のイベントをやってみたい!」という気持ちは大事ですし、それがないとイベントの企画・主催を行うことは難しいのですが、そこで止まってしまうのではなく、もう一歩を踏み出すことで、イベントのクオリティを高められるのではないかと思っています。
(……と、偉そうに書いてはみましたが、これはあくまで理想論であって、自分もまだまだ実行できていないことの方が多いです)

そして、イベントの内容とは別に、どのようにイベントの周知をするかも考える必要があります。というのも、ほとんどのイベントは参加者なしには成立しないためです。
これは極端な例ですが、5v5のチーム戦の大会を開催したいと考えたとしても、参加者を10人集められなければ大会を実現することはできません。
そのため、どのようにイベントを開催可能な状態に持っていくかを考えることは、イベントの内容を考えることと同じくらいに重要だと考えています。
自分の場合は、タイパー界隈の盛り上がりに乗じたり、あるいは自分の知名度を利用したりすることでイベントを開催可能な状態にすることに成功しています。こうした他力本願な手法が機能しているのはタイパー界隈の温かさのおかげですが、いくらタイパー界隈が温かいとはいえ、少なくともイベント開催までに一定の期間を設けて広報を行うことは必要になるでしょう。

特にタイピング大会を開きたいという方に向けて、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズを扱い、国内最大規模のユーザー主催大会を運営しているアユハさんの記事を紹介します。
https://ayuha167.github.io/blog/2020/01/06/
この記事に書いた内容に近い内容を、さらに詳細・具体的に書いているので、実際に大会を開いてみたいという方にはとても参考になると思います。

おわりに

これまで関わってきたイベントについて振り返ってみると、タイパー主催のイベントとして最大規模である「タイピングサミット」、そして企業主催のタイピング大会「REALFORCE TYPING CHAMPIONSHIP」に大きな影響を受けていることを改めて実感しました。
「Warriors of Typing」は「REALFORCE TYPING CHAMPIONSHIP」の盛り上がりに触れたことをきっかけに企画・主催を行ったものですし、「多言語対戦会」「タイパーアドカレ」「108万打鍵チャレンジ!」「タイピングパーティ!」の4つは「タイピングサミット」の経験を元に企画・主催しています。
ここ数年は「REALFORCE TYPING CHAMPIONSHIP」が開催されたことも手伝ってタイパー主催のイベントが開催されることも増えてきましたが、自分が関わったイベントがこれからのタイパー主催イベントにつながることがあれば嬉しく思います。

明日の記事は、「白狐」さんによる「タイパーにとっては耳が痛かった話」です。
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