4人用声劇台本【可愛い子には似合いの箱を】(1:3:0) 作:たのしぃ

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【あらすじ】

とある箱入り娘のお話。
シリアスめ、胸糞展開。

【所要時間】

約30分

【登場人物】

男性 1名
女性 3名

⬛︎ネリネ:16歳、女、箱入り娘。家族の幸せのために。
⬛︎父:51歳、男、男爵家当主。我が家の幸せのために。
⬛︎母:46歳、女、ネリネの母。我が子の幸せのために。
⬛︎従者:26歳、女、ネリネの家に仕える侍女。慕う者の幸せのために。

(トリテとレイアというネリネの兄が存在しますが、セリフはありません。)

M……モノローグ/ 0……ト書き

【本編】

従者:奥様!待望の女の子ですわ!お見えになりますか?

父:お前、よくやった!……本当に、ありがとう。

母:……あぁ、ようやく会えた。かわいい娘。

母:元気な声が聞こえる。そのかわいらしい声で、泣いてくれているのね。強く、泣いている。なんと嬉しいことかしら。

0:シーンチェンジ。ネリネ、9歳の昼下がり。

ネリネ:お兄さまたちひどいわ!なぜわたしのおもちゃをとっていくの?

ネリネ:やめて!いたい!うでをひっぱらないで……!

父:おい!愚息ども、やめないか!

父:可哀想に、可愛い妹が泣いているだろう。……誰の許可を得てこの子に対して粗雑な扱いを行っている?兄というだけで、お前たちが偉いとでも勘違いをしているんじゃないだろうな?ネリネが傷物にでもなったら、お前たちが責任をとれるのか?無理だろう?

0:心配そうにネリネに駆け寄る母。

母:ネリネ!大丈夫?どこも痛むところはない?

ネリネ:ええ、だいじょうぶ。へいきよ、お母さま。

母:あぁ、ネリネ。あなたにもしものことがあったら、母様の命だって消え去ってしまうのよ。

母:(兄たちに向き直り)トリテもレイアも、母様の心臓を止めてしまう気ですか?

ネリネ:お父さま、お母さま。お兄さまたちにあんまりイジワルないいかたをなさってはイヤよ?もういっしょにあそんでくださらなくなっちゃうわ。

父:はは、そんな心配は要らないよ。こいつらはいつも、勉強も手習いも怠けて、それくらいしかすることがないのだから。……なぁ?

0:シーンチェンジ。その日の夜、ネリネの部屋。

ネリネ:お父さまったら、ウソばっかり…。あれからしばらくお兄さまたち、おへやにいらしてくださらないじゃない。つまらないの。

母:あら、まだ起きていたの?夜空を眺めるのはいいけれど、夜風に当たり過ぎると体に障りますよ。

0:声を掛けられたネリネが扉の方を見ると従者を連れた母の姿があった。

ネリネ:お母さま!

ネリネ:きょうはもう、だれもいらっしゃらないのかとおもっていたの!うれしい!

母:私があなたに会いに来ない日など1日もないわ。安心なさい。いつだってネリネのことを抱きしめたくて仕方がないのを我慢しているのよ?

ネリネ:ふふ!お母さまだいすき!……わたしたちずっといっしょよ?

母:ええ、もちろん!ずっと、一緒。

従者:……奥様。

母:分かっているわ。……ネリネ、もう遅いからあまり長く起きていては良くないわ。そろそろおやすみなさい?

ネリネ:はーい……おやすみなさい、お母さま。

0:シーンチェンジ。翌日の朝。

父:おはよう!ネリネ、昨日はよく眠れたか?

ネリネ:お父さま、おはようございます!とってもぐっすりだったわ!

父:ははは!それは良かった。お前は良く寝て良く食べて健やかに育ちなさい。それが我々家族の幸せに繋がる。

ネリネ:ありがとう、お父さま!

父:うむ。父さんは、またしばらく仕事で留守にしなければならない。いい子にしておいでよ、ネリネ?……では、今日の手習いも励みなさい。

父:トリテ、ネリネの手習いをよく見てやれ。何のためにお前にそれを教えこんだか、分かっているな?

0:部屋を後にする父。

ネリネ:……どうしたの、トリテお兄さま?おけいこ、はじめなくていいの?

ネリネ:(今ネリネは幸せかと聞かれ)……いきなりどうして?

ネリネ:わたしはとっても、しあわせよ?

0:シーンチェンジ。それからしばらくした夜。

父:……そうか!お前にも召集がかかったか!ようやく何かの為になれるのだ、恥を晒さぬよう励めよ!

母:トリテ、こちらへ。

母:兄として、ネリネを、家族を、私たちの幸せを。守ってちょうだいね。愛してるわ、トリテ。

母:母様は毎日、あなたの息災を祈っていますよ。

0:一人、部屋でつぶやくネリネ。

ネリネ:さいきん、トリテお兄さまがいらっしゃるどころか、おこえもきこえないわ。どうしたのかしら?ご病気だったりしなければいいけれど……。

0:シーンチェンジ。ネリネ、9→16歳の朝。

父:ネリネ!ネリネ!起きているかい?

ネリネ:はい!私はここにおりますわ!

父:ネリネ……!いい知らせだ!

父:お前に、良い縁談の話が決まったんだ!

ネリネ:……本当に……?!

父:あぁ!お前はまだ若いが、美しく聡い子だ。そんなお前に釣り合う良い人を選んだつもりだぞ、お父様は!……お相手は伯爵家のご子息でな。人柄も穏やかそうな良い方だ。

ネリネ:私、こんな早くに縁談のお相手が決まるだなんて思っていなかったわ。まだまだ花嫁修業も足りていませんもの。

父:(笑って)そんなことはないさ。お前は我が家の再興のため、日々よくやっているよ。

ネリネ:ありがとうございます、お父様。嬉しいわ。それで、お相手とは、いつ?

父:……あ、あぁ。それがな、急ですまないんだが、見合いの予定は明日だ。

ネリネ:まぁ、本当に急ですのね。

ネリネ:それに……明日はお医者様がお母様を訪ねてくる日でしょう?お母様も同席なさるのよね?

父:あいつは……そうだな……。

父:いや、仕方ない。相手方も医者も明日しか都合がつかなかったのだ!先方には申し訳ないが、私とお前だけでお会いしよう。

ネリネ:……?

ネリネ:え、えぇ。お相手とお父様がよろしいのであれば、私は……

従者:(少し焦って)だ、旦那様!……お時間でございます。

父:そうか。あいつ、今日に限って随分と帰りが早いな。

父:……ネリネ、それでは明日のこと、よろしく頼む。私は今日はもう出る。

ネリネ:えぇ。いってらっしゃいませ。明日のこと、楽しみにしておりますわ!

ネリネM:私、おうちの外の方とお話するの初めてだわ……。楽しみね。

0:ノックの音が鳴る。

ネリネ:あら、ノック……侍女さんかしら?ちがう……レイアお兄様……?

ネリネ:レイアお兄様がいらっしゃるなんて珍しい!久々にお話出来てうれしいわ!今日はお身体の調子が良いの?

ネリネ:そうなの、私ね、縁談が決まったんですって!

ネリネ:(ネリネはそれで幸せ?と聞かれて)……なぜそんなことをお聞きになるの?前に、トリテお兄様にも似たようなことを聞かれたわ。

ネリネ:もちろん、私は幸せよ?

0:シーンチェンジ。見合いの場。

ネリネ:ネリネと申します。本日はよろしくお願いいたしますわ。

ネリネ:……あら!色んな土地や国のことをご存知なのですね……素敵なことですわ!私の知らないことを沢山知ってらっしゃるのですね。

ネリネ:……(笑って)やだお父様ったら!気が早いわ!

ネリネ:私、こんなに楽しく殿方とお話したのは初めてです……!是非また、お会いしたいですわ!

ネリネ:あなたと、もっと色んなお話をしたい。

0:シーンチェンジ。ネリネの部屋。

ネリネ:あー。今日は楽しかったなぁ。

ネリネ:あんなに沢山外のお話を聞いたのは、初めて。

母:……ネリネ?

0:扉の窓越しに話す母とネリネ。

ネリネ:お母様!おかえりなさいませ!今日はお帰りがお早かったのね!

母:ネリネ、今日は、一体何を?

ネリネ:そうなの!お母様にも今日のことを早くお話したくて!今日のお見合いでね、お相手の方が色んな国のお話をしてくれて……

母:み、見合い……?

ネリネ:え、えぇ……。今日は縁談のお相手とのはじめてのお見合いの日だったのよ……?

母:……。

ネリネ:お母様?

ネリネ:……もしかして、聞いていらっしゃらなかったの?

母:あ、あ……

0:突然に取り乱す母。

母:あなた……!!!あなたどこにいらっしゃるの?!ネ、ネリネが!ネリネの縁談とはどういうことなのですか!!!

従者:ネリネ様、何かございましたか?……お、奥様?!いつの間にこちらに……!

父:なんだ騒がしい!……お前っ!どうしてネリネの部屋に?!

母:ネリネが、縁談とは、何……?私は聞いてませんわ。

母:……あなた達、私に黙って、事を進めていたの?

父:おい、落ち着きなさい。

母:落ち着いていられますか!!!……認めません。私は、認めないわ……!ネリネはまだ子供なんです!縁談?結婚?まだ早いに決まっているでしょ?!

父:何を言っているんだ!ネリネだって早ければ嫁いでも何もおかしくはない年齢だ。お前がうちに嫁いで来たのだって、ネリネとそう変わらない歳の頃だろう?

母:ネリネは違うんです……!ネリネは……!

父:(一際大きな声で)どう違うと言うんだ!!!いい加減にしろ!!!なんのために苦労してネリネを産ませたと思って……

0:ネリネがいることを思い出し言葉を止める父。

父:(咳払いして)……とにかく、こっちに来い!

母:いやっ!離して!……ネリネっ?ネリネはまだ、母様のところからいなくならないで頂戴?ネリネ!!!

父:今日はもう出ろ!……お前!引っ張り出すのを手伝え!

従者:は、はいっ!奥様、申し訳ございません……!

0:皆が去り静けさの中に取り残されるネリネ。

ネリネ:……。

ネリネ:お母様、急にどうしてしまったの?

ネリネM:お母様は、一緒に喜んではくださらないの?

0:シーンチェンジ。次の日のネリネの部屋。

従者:ネリネ様。具合はいかがですか?

ネリネ:えぇ、心配するほどではないわ。……昨日は色々ありすぎて。少し体が驚いてしまったのかしら。

従者:……まだ少し熱がありますね。午後に薬を買って参りますわ。

従者:昨日のことは、気になさらないでくださいね。ネリネ様は、本当によく我慢していらっしゃるのですから……。

ネリネ:え?昨日のことは確かに少しびっくりしてしまったけれど、我慢とは違うんじゃない?

従者:そ、そうですか……。ネリネ様がお辛くないのなら良いのですわ!

従者:それでは、私はレイア様のお世話をして参りますわね。

ネリネ:ねぇ?レイアお兄様のお身体、まだ良くならないの?私、お兄様のお見舞いにも会わせていただけなくて……。

ネリネ:トリテお兄様も遠方に出てしまわれて、お家にいる兄弟はレイアお兄様だけなんだもの……。お見舞いくらいさせてくれても、いいのにね……?

従者:えぇ……。大丈夫ですわ。まだ体調が優れないようですが、しっかりとお薬を飲んで毎日養生していただければ、きっとレイア様もすぐによくなります……きっと。

ネリネ:そうよね……私の代わりにレイアお兄様のこと、お願いね?

従者:はい、もちろんですわ。ネリネ様もよくお休みになられることです。では、失礼致します。

0:部屋を出て扉を締める従者。

ネリネM:……ガチャり。今日も扉、締められちゃったわね……。

母:ネリネ……。

ネリネ:お母様?

母:ネリネ、昨日は取り乱してしまってごめんね?

ネリネ:謝らないで、少し驚いただけよ?

母:嗚呼。優しい子。……ネリネ、熱があるんですって?可哀想に。

ネリネ:そうなの。昨日は忙しかったから、きっと疲れただけよ!ご心配なさらないで?

母:娘が熱を出していて、心配しない親はいません。

母:……薬を持ってきたの……色んな病気に効く薬……。窓から受け取れる?

0:扉の窓越しに薬の袋と水を受け取るネリネ。

ネリネ:えぇ。さっき侍女さんが薬を買ってくると言っていたけれど、頂いてもいいの?

母:……ネリネの具合が良くないと聞いて、すぐに母様が買ってきたの。薬を用意するまで待っていたら、ネリネが可哀想じゃない。

ネリネ:わざわざお母様が買ってきてくださったの?!……ありがとう、お母様!やっぱりお母様はお優しい方ね!

母:(弱く笑って)ネリネ、優しいのはお前の方よ。お母様はネリネが大好き。

ネリネ:私もよ、お母様。

0:シーンチェンジ。その日の夕方。

父:おい!誰か!誰かいないのか?!レイアが!!!

従者:はい、ここに!レイア様がどうしたのです?

父:よりによってお前が出ている時に……レイアの容態が急変した。今日の分の薬を飲みそびれたらしい……すぐに医者を呼ぶ!

従者:そんな……

従者:……奥様にレイア様の薬をお願いしたのに!

父:あいつは泣き喚いて話にならん!我々だけでなんとかするしかない!お前はレイアの様子を見てやってくれ。私は医者を呼びに行く。

従者:承知しましたわ、すぐに。

従者:……あぁ、なんてこと……レイア様!!!

0:扉越しに会話を聞いていたネリネ。

ネリネ:レイアお兄様?……薬が、なんですって?

ネリネ:ねぇ!誰かいるんでしょう?!レイアお兄様がどうしたの?誰か答えて!

ネリネ:お願い!答えて!お兄様は大丈夫なの?!……鍵を開けて!お願いよ!お兄様に会わせて!!!この扉を開けて!!!

0:シーンチェンジ。その夜のネリネの部屋。

ネリネ:レイアお兄様……誰か……(静かに泣く)

母:ネリネ……。

ネリネ:おかあ……さま……。

母:ネリネ、お母様ね……。

ネリネ:"どうやって"入ってらしたの……?

0:一人で扉を開いて佇む母の姿に驚くネリネ。

ネリネ:お母様お一人では、ここに入って来れないはずでしょう……?

母:あなたに会いたくて……

母:だから、鍵をね、お父様から借りたのよ。

ネリネ:今までそんなこと無かった……。

母:どうしても会いたかったの……。

母:お母様には、もう、ネリネしか居なくなってしまったの……。

ネリネ:……どういうこと?

母:(泣き崩れながら)レイアが……逝ってしまった……。

ネリネ:そんなまさか……お兄様が……?

母:トリテも、レイアも、みんな……。もう……。

ネリネ:トリテお兄様……?どうして今トリテお兄様のお名前が出てくるの?

母:トリテも戦死して……レイアまで……。これまでもたくさん失ってきた……。どうして私から……子供たちを奪っていくの……。

ネリネ:戦死……?トリテお兄様はお仕事で遠方に出ていらっしゃるってお父様は……!

母:ネリネ!!!

0:ネリネの足に縋り付く母。

ネリネ:なにっ……?

母:もう私にはお前しかいないのよ、ネリネ!縁談なんてやめて頂戴!!!どこにも行かないで頂戴お願いよ!!!

ネリネ:やめてっ!

ネリネ:危ないわ!離して……!

0:身の危険を感じ、母を突き飛ばすネリネ。

母:あっ………………。

ネリネ:どうして、トリテお兄様が戦死なさったこと。私に教えて下さらなかったの……?

母:……ネリネが……悲しむのが可哀想で……。

ネリネ:今日、私にくださった薬は……?レイアお兄様に薬を渡すよう頼まれていたのではないの……?

母:……ネリネが……苦しんでいるのは可哀想でしょう……?

ネリネ:…………。

母:ネリネ?

ネリネ:わ、私の、為だったと……言いたいのですか……?

母:そうよ……?

0:何を聞かれているのか?といった様子の母。

母:私には、あなたがいちばんなの。あなたを授かるまでにね……お母様は何人も喪った……。あの子達のためにも……ネリネ……あなたを失うわけにはいかないの……。どこにも行ってほしくないのよ……?

ネリネ:私が……待ち望んだ女の子、だから?

母:あぁ……お父様はよくそう仰るけれど……もうそんなことは関係無いの……。

母:……あなたが私のところに来てくれたから。あなたが私のところにいてくれるだけで、それでいいのよ。

ネリネ:そのためなら……レイアお兄様のことも……どうでもよかったの……?

母:……?何が?

ネリネ:お母様は今日、レイアお兄様にお薬を差し上げなければいけなかったのよ……?

母:仕方ないじゃない?

ネリネ:そんな……わけ……ないでしょう?

ネリネ:私はただの風邪、お兄様はきっと……命に関わるご病気だった……!

母:やめて……!

母:もう……レイアは戻ってこないのに……!そんなことを言ってお母様を責めるの……っ?

ネリネ:責めるなんて……そんな……!

母:そんなことより!!!私が聞きたいのは、あなたのことなのよネリネ!お母様のところにいてくれるの?

母:どこにも行かないでいてくれるの……?ねぇ!!!

0:再びネリネに詰め寄る母。勢いが余る。

ネリネ:お母様、何を!痛いっ……離してよっ!

母:お母様はそれだけが……!それだけが心配で心配でたまらないのよ!あなたが私の手元から……消えてしまいそうで……!

ネリネ:いい加減にしてっ!!!

0:もう一度。母を突き放すネリネ。

ネリネ:私は!……私も、お兄様達も!お母様の持ち物ではないのよ……?

ネリネ:……私は、先の縁談を受けるつもりです。お相手も決して悪い方では無かったの。お母様も一緒に喜んでくださると思った。

ネリネ:あの方とお話して、私は外のことを何も知らないと思った。そして、知りたくなった。

母:あ……あ……。

ネリネ:そんな私の幸せを、お母様は幸せとは感じてくださらないのね。

母:ネ……リネ……。そう……。お母様を、置いていって、しまうのね。

ネリネ:置いていくだなんて……。

母:それは、無理よ。お母様には、耐えられない。

母:……っ!

0:ナイフを胸に突き刺す母。

ネリネ:ナイフ……?!どこからそんなもの……!いやぁっ!!!

母:ネリネ……(吐血して)……これで最後までずっと……あなたと一緒よ……。

ネリネ:い、いや……!お母様……。

ネリネ:嫌ぁーーーーー!!!!!

従者:(悲鳴をあげて)……旦那様!!!嫌だ、血が!!!これではもう、助からない……!

従者:……うそ。奥様がいらっしゃらない?そんなまさか!!!

0:ネリネの部屋に向かう従者。

従者:奥様!ネリネ様!

従者:……あぁ……。

0:ネリネの部屋の惨状を目撃する従者。

従者M:ついに溢れ出してしまったのだと思った。

従者M:ネリネ様の体躯には似合わぬ、小さいままの椅子や机。ベビーベッドや幼稚な玩具。

従者M:奥様の、こんな小さな宝箱に、ネリネ様をいつまでも閉じ込めておけるはずがない。

ネリネ:ねぇ……。レイアお兄様に会いたい。

従者:レイア、様に……?

ネリネ:お詫び、しなきゃ。

従者:それは……

ネリネ:(遮って)ねぇ!!!

ネリネ:……私はもう、ここから出てもいいのかしら……?

従者M:私には、もう堰き止められない。

従者:それは……ネリネ様のお好きなように……。

ネリネ:(弱く笑って)……ありがとう、じゃあね。

0:よろよろと部屋を後にするネリネ。

従者M:ーー溢れ出てしまった。

従者M:その日、私が仕えていた小さな箱は、中身が腐っていたので、崩れ落ちてしまいました。

-END-

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