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2人用BL声劇台本【その音が僕をつなぎとめる。】(2:0:0) 作:たのしぃ

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【作品説明】

ストリートピアノ奏者と元会社員のBL声劇台本

【所要時間】

約30分

【登場人物】

男性 2名
(本作は本来BL作品ですが、性別や口調変更によって男女恋愛や百合として演じていただいても問題ありません。)

⬛︎音田(おとだ):男性、25歳。元限界会社員、流されやすい。

⬛︎佐倉(さくら):男性、21歳。大学生、趣味はストリートピアノを弾くこと。

M……モノローグ/ 0……ト書き

【本編】

音田M:さて、俺は、いわゆるブラック企業に勤める会社員。入社1年目から、こんな会社は辞めてやる!と心に決めたはずなんだが、運悪く2年目から教育担当なんかを任され直属の後輩が出来てしまい、あれよあれよとブラック2年目に突入。

音田M:心を無にしてなんとかやりくりしていたが、ついに体が先に音を上げてしまった。

音田M:ある日の朝、いつもの駅の敷地に入ると、心臓の音が煩いくらいに跳ね上がる。普段から無理な働き方をしているせいで、寒暖差に体が壊れる、そんな冬。……でも、いくら待っても動悸が止まらない。

音田M:改札に近づこうとするたび、足を前に進めようとするたび、このまま進めなかったら上司にどう報告すればいいのかを考えるだけで、動悸は存在感を増す。もはやどれだけの時間が経ってしまって、このあと自分が何をすればいいのか分からなくなってしまった。

音田:(早い呼吸で)はぁ……はぁっ……。

音田M:どうしよう。心臓が脈打つ音しか、聴こえない。

0:ピアノの音が鳴る。

音田:え、なんの音……?

音田M:聞き慣れない音に意識が向いた。音の方を見やると、いつもは誰も見向きもしていなかったストリートピアノに奏者の姿がある。

音田M:頼む。もっと、もっと鳴らしていてくれ。……俺はただ、その音に集中する。俺の脈拍を圧倒する音色の情報量に身を委ねた。曲間にまばらに打たれる拍手の音や、さっきまで数人の足音だったものが雑踏の中の音に変わったことに、気づけるようになった。

0:ゆっくりと鞄からスマートフォンを取りだし、上司宛に電話をかける音田。

音田:……あっ、もしもし部長。お疲れ様です。大変申し訳ないのですが……。

音田M:演奏に聴き入っているうちに時間は経っていて、今から会社に向かっても遅刻は免れない。それでも、今なら行ける。そう思えた。さっきまでの動悸はなりを潜め、電話を切る間際の部長の舌打ちすらしっかりと聴こえた。

0:シーンチェンジ。そこから1年以上後の同じ場所。

音田M:……というのが、1年以上前の話。俺は今も駅に近づくたびにボリュームを増す胸の鼓動を、あのピアノの音でかき消しながら日々会社に向かっている。改札を抜け、ホームに向かう階段を降りていくにつれて薄らいでしまうピアノの音を名残惜しく思いながら、電車の扉の向こうに今日も身を投じていく……

音田:はずなのに!

0:あることに気づき、わなわなと震える音田。

音田M:駅に入って薄々気がついていた。ピアノの音が聞こえないことに。ストリートピアノを見ると奏者の姿は見えない。

音田:なんで、どうして……?

音田M:(焦って)体調不良?別の予定が入っていただけ?もう、この駅には弾きに来ないなんてことないよな?……毎日聴こえていたあのピアノの音が、たった1日聴こえないだけでこんなに不安が押し寄せるなんて。もし明日もこうだったら、この先どうすればいい?

0:長めの沈黙。

音田:……。仕事、辞めちゃおうか。

0:シーンチェンジ。駅前の公園のベンチ。

音田:通勤ラッシュに吸い込まれていく人達眺めながら食う弁当。背徳感がすごい。

音田M:思えばまともな朝飯を食ったのいつぶりだ?食うよりも寝たくて朝は抜いてたし、休みは起きたら昼過ぎてたもんな。……なんか泣けてきた。

0:腰を据えて周辺を見回す音田。

音田:駅前の商業施設も、気づいたらいろいろ開発されてる。こんな洒落てる店入ってたっけ?毎朝通り過ぎるだけだから、全然気づかなかった。昼ここで食おうかな?

音田:いや、せっかく丸1日暇なんだ。なんかもっと別の、行ったことない駅で昼飯食うのもありだな。

0:ベンチから立ち上がり駅に向かう音田。

音田M:だが、別の駅に向かうために改札口に近づこうとすると、あの動悸に襲われた。

音田:うっ……。

0:踵をかえして公園に戻る音田。

音田:……今日は、この駅周辺で探すか。

0:シーンチェンジ。その日の夜、駅のストリートピアノに泥酔した音田が絡んでいる。

音田:なんでぇ?!なんで弾きに来ないんだよぉ!俺ぇ、俺こんなんになっちゃってさぁ……!もうお前の音が鳴ってないと仕事行けねぇよぉー!……って、もう辞めちゃったんだけどね!ついに!……だーから、お前が鳴ってなくったってもう知らねーよ?いいの?

0:音田の大声に気づいた駅員がなだめに来る。

音田:なんとか言えよ、ばかぁ!!!……あ?うるせぇ!俺はここで寝るからいーの!駅員さんも帰りなぁー?明日もあるんだろ、毎日お疲れさん!もう寝た方がいい、お互いにな!あっはぁ……へへ……。(寝息)

0:寝落ちする音田。

音田:(深い寝息)

0:シーンチェンジ。翌日の朝。

佐倉M:ある朝、日課のピアノを弾きに来たら。

佐倉M:俺のピアノが男と寝てた。

佐倉M:ま、ストリートピアノだから俺のじゃないけど。この駅でこのピアノを弾くのなんて、俺か近所の子供しか見たことねぇ。だから、ほとんど俺の相棒くらいの気持ちでいたんだけどなぁ……。

0:ストリートピアノにもたれかかって寝ている音田の肩を揺する佐倉。

佐倉:あのー、お兄さん。大丈夫?起きられる?

音田:あぁ……?あつ……みず……。

0:目が覚めて見上げてきた音田の顔をよく見ると、大量の汗をかいている。

佐倉:は?……うわっ!すっげぇ汗!そりゃこの暑さの中こんなところで寝てたらそうなるか。……待ってて、水買ってきてあげる。とりあえず上着脱げる?

0:すぐ近くの駅構内のコンビニに走り、必要そうなものを買ってくる佐倉。

佐倉:ごめん、お待たせ……!とりあえず水と、エナドリと、塩分チャージのタブレット買ってきた!……ほらお兄さん、まずはめっちゃ水飲んで!

0:ペットボトルのキャップを開け、音田の口元まで運んでやる佐倉。

音田:はぁっ……すみません、ご迷惑おかけしてしまって……はぁ……はぁっ……。

0:息を切らしながら水を飲む音田。

佐倉:わぁ、いい飲みっぷりー。てか、お兄さんなんでこんなとこで寝てたの?もうじき夏なんだから、死んじゃうよ?

音田:返す言葉もない……。

佐倉:しかも、かなり酒飲んでたっしょ?すげぇ酒くせー。ほんと、死んじゃうよ?

音田:不甲斐ない……。

佐倉:ま、今はこうして話せるし、もう安心だね。

音田:……何から何まで、本当にお世話になりました。

0:礼には及ばないといった様子で対応しつつ、時計を指さす佐倉。

佐倉:いーえ。……それより、そろそろ8:30になるけど大丈夫?お仕事、間に合いそう?

音田:え、どうして……?

佐倉:お兄さん、毎日この駅から通勤してるでしょ?俺も毎日ここいるから、人通り少ない時間に通る人は覚えてんだよね。

音田:そうか。……実はね、仕事は辞めたんだ。昨日。

佐倉:え?!……それはまた、なんで?

音田:このストリートピアノ、毎朝鳴ってるだろ?

佐倉:うん……?

音田:昨日は鳴ってなかったんだ。

佐倉:そうだね。

音田:だから、辞めた。

佐倉:……なんで?!

音田:なんか、どうでもよくなっちゃったんだよ。

佐倉:はぁ?!なにそれ!

音田:なんだよ急に大声出して。

佐倉:それって俺のせいってこと?!

音田:……?なんで君のせいになるんだ?

佐倉:だって……。そのピアノ弾いてたの、俺だもん。

音田:えっ!君が、あのピアノを?

佐倉:……うん。

0:改めて佐倉の顔をまじまじと見て考える音田。

音田M:正直、あのピアノを誰が弾いているかなんて気にしたことがなかった。ただ、毎朝あの音が聴こえて、その音色に全神経を集中させることに必死だったから。

音田:あれ、君だったのか。そうか。

0:膝を折り佐倉に向き直る音田。

音田:毎朝、本当にありがとうございました。

0:佐倉の手を握ぎる音田。

佐倉:……?!なんでっ!急に手なんて!

音田:いや、俺は君のこの手のおかげで、仕事に行けてたんだなぁ。って思って?

佐倉:(涙をこらえながら)だからってさするな!変な人だな!

音田:あっ、ごめん。……って、ちょっとまって、もしかして泣いてない?なんで?!ごめんね……?

0:音田が佐倉の手から顔を視線を移すと、佐倉は今にも流れそうな涙を留めるように顔を顰めていた。

佐倉:うるさい!面と向かって誰かにお礼言われたの、はじめてだったんだよ!

音田:え。

佐倉:毎日ここでピアノ弾くようになって、誰かが少しでも、朝このピアノを聴くのを楽しみに駅に来て、そっからそれぞれの1日を頑張るための力になれればって、そう思って休みなくやってきた。

音田:だから毎日……。

佐倉:あんたがはじめてだったんだ。ありがとうって言ってくれたの。

音田:(微笑みながら)……それは、みんなもっと感謝すべきだな。俺も君の顔見たのはじめてだけど。

0:涙腺のダムが決壊し、涙をだらだら流しながら佐倉が訴える。

佐倉:(号泣して)なのに……なのに!なんで辞めちゃったんだよぉ!

音田:あー。ごめんな!そんな君を理由にして辞めちゃったみたいになって。ほんとに、ほんの些細なきっかけだったんだ、断じて君のせいじゃないから、気に病まないで!……な?

佐倉:そんなこと言ったってさぁ。

佐倉:……もうお兄さん、聴きに来ないの?俺のピアノ。

音田:うーん。そうだな、この駅に通う理由が無くなっちゃったからなぁ。

佐倉:ダメ。

音田:へ?

佐倉:嫌だ、毎日聴きに来て!

音田:なんで?

佐倉:そんな理由で毎日来てた観客が減るなんて気に入らないだろ!俺のせいで仕事辞めたみたいな感じにした罪滅ぼしとして!絶対!

音田:え〜?それはまぁ、君のピアノは好きだし構わないけど。

佐倉:……!

0:次は佐倉が音田の手を勢いよく掴む。

佐倉:ほんと?じゃあ明日もいつもの時間に来てよ!逃げられないように、連絡先も教えて!

音田:(笑う)……逃げないよ?……はい、これ前職の名刺。番号は普通に個人のやつ。

佐倉:……音田さん。お兄さんの名前、音田さんって言うんだ!俺は佐倉、よろしく音田さん!

音田:なんでちょっと嬉しそうなんだ?……名刺貰ったことないとか?見るからに若いし、有り得るな。

0:シーンチェンジ。別の日の同じストリートピアノのそば。

音田M:そんなことがあって、俺は毎朝これまで通りの時間にこの駅に来ては、佐倉くんが弾くピアノを聴くだけの毎日を送るようになった。

佐倉:音田さーん。今日は新しい曲に挑戦してみたんだけど気づいた?って、なに撮ってんの?

0:先程まで佐倉とピアノを撮影していたスマートフォンを下ろす音田。

音田:いやー、俺ね、毎日ただピアノ聴いてるだけでやること無いなって。

佐倉:別にいいのに。音田さんはそこにいてくれるだけで。

音田:(苦笑いして)そういうわけにもいかないでしょ。俺がいたたまれないの。

佐倉:そーいうもん?気にしすぎじゃないかな。

0:手元のスマートフォンでストリートピアノの演奏動画を再生しながら話す音田。

音田:でね?最近こういうストリートピアノの演奏を動画サイトにアップするの、流行ってるんでしょ?

佐倉:え、まって。音田さんそういう動画見てるの?……俺より上手い人とか見つけちゃった?

音田:いや?昨日の夜ネサフしてたらちょうど流れてきて。俺はピアノの上手い下手はよく分からないけど、佐倉くんの演奏はいつもすごく良いから、こういうのやったらいいんじゃないかなって思ったんだよ。

佐倉:(照れて)ふぅーん。へぇー?俺の演奏ってすごく良いんだ?

音田:うん、毎日聴いてても飽きないくらいには良いよ。実践してる俺が言うんだから間違いない!

佐倉:……!なーんか気分乗ってきた!いいね、それやろうよ!

音田:よし!俺にもやっと役目ができたな!動画はさっき撮ったから、とりあえず軽くカット編集して……曲の紹介も付けてみようか?

0:なにかに気づき少し考え込む音田。

音田:ん?待てよ。俺ん家に動画編集ができるようなPC無いか?……この際、大して使ったこともない貯金を崩して買うか?

佐倉:えー、もったいな!俺ゲーミングPC持ってるよ?それ使えば?

音田:いやぁ……そういうわけには……。

佐倉:いいじゃん!俺と音田さんの仲なんだし!

音田:どういう仲だよ!

佐倉:遠慮しないでよー!もう毎日一緒にいるんだから家族みたいなもんでしょ!

音田:家族のハードルが低い。

佐倉:細かいことはいいのいいの!……今日は大学4限からだから時間あるし、このあとウチでその動画編集やろ!レッツゴー!

音田:ちょっ、引っ張るなよ!……力強い!!!

0:シーンチェンジ。駅から少し歩いたところにある白い洋館仕立ての邸宅。

佐倉:到着!ここが俺のウチ!駅チカでしょ?

音田:たしかに、羨ましいな。どうりで毎日早くにいるわけだ。

佐倉:でしょー?……音田さんもここ住む?

音田:は?!何言ってんだよ。

佐倉:無駄にデカくて部屋余ってるくらいだし、音田さんなら全然いいのになー。

音田:そんなのご家族に迷惑というか、意味が分からないだろ!

佐倉:関係ないよ、父さんも母さんも仕事で海外。たまにばーちゃんが様子見に来るくらい。

音田:(しどろもどろに)……じゃあ、おばあ様が、来たとき、困るだろ。

佐倉:あはは!……まあいいよ。とにかく、いつでも来て動画編集しても大丈夫ってこと!

音田:それは、ありがたい。

0:邸宅の中に入る。

佐倉:ただいまぁー!……って誰もいないけど。

音田:お邪魔しまーす。……おぉ!駅のやつよりデカいピアノ!

佐倉:これ?そりゃグランドピアノだもん、でっかいよ。これで小さい頃からピアノ練習してたんだ。

音田:へぇー!だからあんなに上手に弾くのか。

音田:あれ?でも蓋が閉まってる。埃も積もってないか?

佐倉:えーマジ?恥ずかしいから見ないでよー。

音田:家では弾かないの?

佐倉:違うよ。もう結構前に辞めたんだ、ピアノ。

音田:え?だって、駅でピアノを……。

佐倉:あれもさ、めっちゃ久しぶりにピアノ触ったんだよ。

音田:どうして、一度辞めたピアノを弾こうと思ったの?

佐倉:……覚えてない?

音田:え、何を……。

佐倉:俺はあの駅にストリートピアノが置かれたときも、別にもう一度ピアノを弾いてみようなんて思わなかったんだ。

音田:じゃあ、なんで。

佐倉:音田さんのために弾こうと思った。

音田:俺?

佐倉:そう。……俺がはじめて音田さんを見たとき、音田さんはすげぇ白い顔して今にも倒れそうにしてた。なのに、ほんとに少しずつ、少しずつ、足を前に進めようとしてて、この人はなんでそこまでしてどこかに行こうとするんだ?ここにいればいいじゃんか。って思えて仕方なかったんだ。

音田:さ、佐倉くん、あの日の俺のこと見てたって……こと?

佐倉:うん。俺は、あなたが足を止める理由になるためにあの日弾いたんだ。……だけど、あなたは行っちゃった。その足で。そのあとも毎日ね。だから俺も毎日、あの場所で弾くことにしたんだ。

音田:……おかげで毎日頑張れた。

佐倉:それ、全然嬉しくないよ。音田さん毎日電車乗って行っちゃうんだから。

音田:俺に仕事に行ってほしくなくて弾いてたってこと?

佐倉:そうだよ……!あんな苦しそうな顔して行くくらいなら、ここにいればいいのにってずっと思ってた!

佐倉:それが、俺がたった1日休んだだけで叶うなんて……皮肉にもほどがあるでしょ!

音田:……佐倉くん?俺にとってはさ、その1日すら耐えられないほど、あのピアノに救われてたんだよ。本当に感謝してる。

佐倉:俺がもっと上手く弾けてたら、もっと早くに音田さんを救ってあげられた?

音田:(笑って)なんだよそれ!……それは分からないけど。佐倉くんがあの日もう一度弾いてくれなかったら、俺はとっくに終わってたんだ。

0:大切そうに佐倉の手を取る音田。

佐倉:……!また、手。セクハラだぞ、それ。

0:さすられていた手を握り返し音田を引き寄せる佐倉

音田:あ、ごめ……んっ?!

佐倉:音田さん……。

0:佐倉に上から抱きしめられるような体勢になる音田

音田:ちょっと……!佐倉、くん!何して……?!

佐倉:……ごめん、やだ。もう少し、このまま。

音田:……。それはいいから、もうちょっと力、緩めて。

佐倉:あ、ごめん……。

佐倉:俺はね?今、毎日がすごく嬉しい。ずっと隣で俺のピアノを聴いていてほしかった人が、本当に毎日隣にいる。望んでた光景がやっと手に入った。

佐倉:だから、この先も。どこにも行かないで、音田さん。

佐倉:俺のそばから、離れないで。お願い。

音田:佐倉くん。それ……まるで……。

佐倉:音田さん、好き。あなたのことを、愛してる。

音田:は……。えぇ……?

佐倉:えっと……苦しくしてごめんね?急にこんなことも……。

音田:佐倉く……

佐倉:(大声で遮って)あーーー!!!待って!まだ何も言わないで!お願い!

佐倉:あのね、久しぶりにここで弾こうと思うんだ!

佐倉:今日この瞬間は、音田さんのためだけに弾かせてほしい。あなただけに聴いてほしい。……だから、返事はそのあとで。

音田M:そう言いながら佐倉くんはグランドピアノの蓋を開け、椅子に腰かけ、鍵盤に触れた。いつも通り優しい音色が、いつもより大きく響く。

佐倉:(笑って)良かった、チューニング大丈夫そう。

音田M:なのに、なぜか、心臓の鼓動がうるさくて仕方ない。……この胸の音が君に聴こえてしまう気がして、そしてはじめて彼の演奏を俺だけが独り占め出来ているこの時間が嬉しくて、どうか少しでも長く彼のピアノの音色が止まないでくれと願ってしまった。

佐倉:ねぇ、音田さん……。俺の音、聴いててね。


-END-


【キャラクタービジュアル】

本作は、イラストレーターのほしださんに本編を元にキャラクターデザインをしていただいております。
【ほしださんのTwitter(X)ID ▶︎ @hoshida_suk】

下記に設定画像を添えさせていただきますので、演じる際のイメージや二次創作にお役立てください。

【設定画】音田
【設定画】佐倉

ほしだ先生が描いてくださった2人、めちゃくちゃ可愛いですね…!こうして一個の形になっているの見ると、台本を書いたかいがあるというものです…!

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