「私の病気を理解して」の解像度を上げよう
障害支援区分認定調査の調査項目に答えてみた
ひょんなことから、障害支援区分認定調査の調査項目に答えてみました。これは、障害福祉サービスがどれくらい必要なのかを決定するため、日常生活のさまざまな場面で、どのような時にヘルプが必要かを山のようにチェックするものです。お年寄りの場合、介護保険の要介護認定のときにやりますよね。あれに近いものですが、あれは「何ができるか/できないか」といった視点に立つのに対し、障害支援区分は「どのような支援が必要か/不要か」という視点の調査項目になっています。
さて、この障害支援区分認定調査は、もともと身体障害者と知的障害者を念頭に置いて調査項目を作っていました。そうすると、体が動かないわけではなく、ただひたすらだるいために家事がままならない、といったスタイルがデフォの難病患者には合わない(答えにくい)と言われており、「ほんなら実際やってみたろやないか」ということでやってみました。アンケート感覚ですね。
なお、調査項目や、答え方については、厚生労働省にちゃんとマニュアルがあります。
わ、わかりにくいですが、興味ある方はがんばりましょう。
まずは「食事」
この調査項目は山のようにたくさんあるので、一番イメージしやすそうな「2 身の回りの世話や日常生活等に関連する項目」をやってみましょう。
まず。
さらに
とあります。
つまり、難病等による易疲労感によって「できない」場合があるのであれば、「できない」と回答することになるんですね。
その前提で、「食事」に支援が必要か、ということを聞かれているわけです。
そこで、自分のことを振り返ってみるに、「食事」をできるかというと、まぁ、問題ないときは、問題なくできます。でも病状で「一番できないとき」、私の場合は副腎クリーゼ真っ最中のタイミングでどうか、と考えると、支援があろうがなかろうが、そもそも食事ができんくない??という点に思い至るわけです。つまり、究極に体調が悪化している日のことを思い浮かべると、
頭から何かが生まれてきそうな頭痛
地獄の底から湧き上がってくる嘔吐
重力5Gの倦怠感
冬の日本海で船に乗っているようなめまい
これらの具合悪い四天王どれか(だいたい複数)と、文字通り闘っているわけです。そんな状態でメシなんか食うてられるかァっ!!というのが正直なところ。たぶん、これは、身体障害や知的障害のある人の食事介助のイメージで載ってる質問事項なのでしょうが、選択肢に「4 食えません」がないものか、と冒頭から悩ましいのです。
気を取り直して「健康・栄養管理」
ここでいう、「健康・栄養管理」とは、こんなことを指します。
さて、体調不良時に、医療機関での受信結果や医師からの服薬指示に基づいた対応ができるか。これも、一番ヤッバい体調不良時って、「迷わず119番」な状態ですよね! でも、私はこの「迷わず119番」が苦手で、過去、副腎クリーゼで救急搬送されたときは、大半、家族が指摘したものによります。なのでここは諦めて、家族に対し、「吐いて吐いてどうしようもないときは、迷わず119番して」とお願いしています。
119番したあとは、救急隊に病状を伝えなければなりません。が、これも本気でヤバいときは自分ではできません。また、家族も細部まで全部説明することができません。なので、家族には、救急搬送時には保険証ポーチごと救急隊員へ渡して、とお願いしています。そこにはお薬手帳も入っているし、指定難病受給者証も入っているので、神戸大学附属病院へ運ばないとヤバそうだ、ということはわかります。
・・・っていう話ですよね?(深刻すぎ)
さらにナナメ上、「意思決定」「調理」
こんな感じで、「意思決定」についても、支援不要/部分的な支援が必要/全面的な支援が必要を聞いています。ここで、「意思決定」とは何か、と言うと、
これも、もちろん体調がいいときには何一つ問題なくできるんですよ?
でも、さっきあげた具合悪い四天王のうち、誰かが襲い掛かってきているタイミングでこれ、できるかというと非常に難しいです。
健康な人にはここの感覚がようわからん、と言われますが、本当に何もかもがどうでもよくなるんです。「お茶入れようか?」と聞かれるのすら煩わしくなります。お茶を飲むか、飲まないか、私が決めないといけないから。
「しんどそうやね!どうしよう!?なにしたらいい!?」
と、親切で聞いてくれるのはいいのですが、私に決めさせんといてくれぇぇぇl!!という状態になります。これは、襲ってきた具合悪い四天王が1体であってもこうなります。
そのあたりの話は、一度noteにも書いたことあるけど。
もっと言うと、「調理」についてもおそらく「全面的な支援が必要」になります。・・・もっとも、「食事」すら「4 要らんがな」状態なのに、調理も何もあったもんじゃないとは思いますが。
「調理」とは、
この、献立を考えてから食材を準備し、段取りを考えて調理し、さらに盛りつけたうえで後片付けまでする、という一連の動作をできるのか。
まず、「献立」の段階でムリです!
「今日、何を食べるか」を決めるまでには、①和・洋・中を考え、②ご飯ものか麵類かを考え、③主菜を考え、④主菜に合う副菜を考え、⑤できるだけ一汁三菜になるように整える、という思考が必要になります。これだけで結構な知的労働です。いくつ意思決定がありますか!? 相当な回数の意思決定が必要です。こんなのムリです。ひょっとすると、献立が一番重労働かもしれません。具合悪い四天王が襲ってきているときに、これ、全部パッケージで考えて「お前、これ作れ」と言ってもらえるだけでどれだけ助かるか。
「私の病気を理解して」の解像度を上げる
私が今、なぜこんなことに興味を持っているかというと、今月あたりから急に難病仲間とあう機会があったのですが、そのいずれも、「病気を理解してほしいとは思っても、何を理解してほしいのかってうまく説明できんよね」という問題意識が出てきたからです。
私の病気を理解して
難病で話をすると、必ず出てくるテーマです。
でも、誰に?何を?なんのために理解してもらう?
ざっくりと「世の中」に向かってのメッセージであれば、ぼんやりしていてもいいんですが、いい感じの年になって人に雇ってもらったり、人と仕事をしようとすると、その解像度はかなりクリアなものが求められます。いわゆる「合理的配慮の提供」を得ながら働くことを本気で考えた場合、「どうしてもらったら働きやすいのか」までは難病患者側がある程度答えを持っておかなければなりません。けっこうシビアな問題です。
そう考えた時、どうしたら私たちのしんどさの輪郭がもう少しはっきりするかな、といろいろ探してみて、一つやってみたかったのがこの、障害支援区分認定調査項目に答えてみる、でした。
おもしろいので、最後までやってみよう。
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