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「私の病気を理解して」の解像度を上げよう

障害支援区分認定調査の調査項目に答えてみた

ひょんなことから、障害支援区分認定調査の調査項目に答えてみました。これは、障害福祉サービスがどれくらい必要なのかを決定するため、日常生活のさまざまな場面で、どのような時にヘルプが必要かを山のようにチェックするものです。お年寄りの場合、介護保険の要介護認定のときにやりますよね。あれに近いものですが、あれは「何ができるか/できないか」といった視点に立つのに対し、障害支援区分は「どのような支援が必要か/不要か」という視点の調査項目になっています。

さて、この障害支援区分認定調査は、もともと身体障害者と知的障害者を念頭に置いて調査項目を作っていました。そうすると、体が動かないわけではなく、ただひたすらだるいために家事がままならない、といったスタイルがデフォの難病患者には合わない(答えにくい)と言われており、「ほんなら実際やってみたろやないか」ということでやってみました。アンケート感覚ですね。

なお、調査項目や、答え方については、厚生労働省にちゃんとマニュアルがあります。

わ、わかりにくいですが、興味ある方はがんばりましょう。

まずは「食事」

この調査項目は山のようにたくさんあるので、一番イメージしやすそうな「2 身の回りの世話や日常生活等に関連する項目」をやってみましょう。
まず。

2-1 食事
 1 支援が不要
 2 部分的な支援が必要
 3 全面的な支援が必要
障害者総合支援法における障害支援区分認定調査員マニュアル52頁

さらに

○ 「できたりできなかったりする場合」は、「できない状況」に基づき判断する。 
なお、「できない状況」に基づく判断は、運動機能の低下に限らず、 
・「知的障害、精神障害や発達障害による行動上の障害(意欲低下や多動等)」や「内部障害や難病 等の筋力低下や易疲労感」等によって「できない場合」
 ・「慣れていない状況や初めての場所」等では「できない場合」を含めて判断する。
同上

とあります。
つまり、難病等による易疲労感によって「できない」場合があるのであれば、「できない」と回答することになるんですね。
その前提で、「食事」に支援が必要か、ということを聞かれているわけです。
そこで、自分のことを振り返ってみるに、「食事」をできるかというと、まぁ、問題ないときは、問題なくできます。でも病状で「一番できないとき」、私の場合は副腎クリーゼ真っ最中のタイミングでどうか、と考えると、支援があろうがなかろうが、そもそも食事ができんくない??という点に思い至るわけです。つまり、究極に体調が悪化している日のことを思い浮かべると、

  • 頭から何かが生まれてきそうな頭痛

  • 地獄の底から湧き上がってくる嘔吐

  • 重力5Gの倦怠感

  • 冬の日本海で船に乗っているようなめまい

これらの具合悪い四天王どれか(だいたい複数)と、文字通り闘っているわけです。そんな状態でメシなんか食うてられるかァっ!!というのが正直なところ。たぶん、これは、身体障害や知的障害のある人の食事介助のイメージで載ってる質問事項なのでしょうが、選択肢に「4 食えません」がないものか、と冒頭から悩ましいのです。

気を取り直して「健康・栄養管理」

2-6 健康・栄養管理
 1 支援が不要
 2 部分的に支援が必要
 3 全面的に支援が必要

ここでいう、「健康・栄養管理」とは、こんなことを指します。

健康・栄養管理(体調を良好な状態に保つために必要な健康面や栄養面の管理)について、支援が 必要かどうかを確認する。 
【健康・栄養管理の例】
 ・健康維持のために、自身にとって適切な食事量・運動量に基づいた対応をする。
 ・体調不良時において、医療機関での受診結果や医師からの服薬等の指示に基づいた対応をする。
 ・自身の持病等を踏まえた、適切な摂取制限や治療食の摂取等を行う。
障害者総合支援法における障害支援区分認定調査員マニュアル61頁

さて、体調不良時に、医療機関での受信結果や医師からの服薬指示に基づいた対応ができるか。これも、一番ヤッバい体調不良時って、「迷わず119番」な状態ですよね! でも、私はこの「迷わず119番」が苦手で、過去、副腎クリーゼで救急搬送されたときは、大半、家族が指摘したものによります。なのでここは諦めて、家族に対し、「吐いて吐いてどうしようもないときは、迷わず119番して」とお願いしています。
119番したあとは、救急隊に病状を伝えなければなりません。が、これも本気でヤバいときは自分ではできません。また、家族も細部まで全部説明することができません。なので、家族には、救急搬送時には保険証ポーチごと救急隊員へ渡して、とお願いしています。そこにはお薬手帳も入っているし、指定難病受給者証も入っているので、神戸大学附属病院へ運ばないとヤバそうだ、ということはわかります。

・・・っていう話ですよね?(深刻すぎ)

さらにナナメ上、「意思決定」「調理」

こんな感じで、「意思決定」についても、支援不要/部分的な支援が必要/全面的な支援が必要を聞いています。ここで、「意思決定」とは何か、と言うと、

日常の意思決定(毎日の暮らしの中で自分の希望を判断すること等の行為)について、支援が必要 かどうかを確認する。 
【日常の意思決定の例】
 ・自分の希望を判断する。(着たい服の色や種類を決める) 
・自分のしたいことを伝える。(テレビを見たい、読書したい) 
・複数の選択の中から、自分で決める。(メニューから食べたいものを注文する) 
・自分の希望を伝える。(トイレに連れて行ってほしい)
障害者総合支援法における障害支援区分認定調査員マニュアル66頁

これも、もちろん体調がいいときには何一つ問題なくできるんですよ?
でも、さっきあげた具合悪い四天王のうち、誰かが襲い掛かってきているタイミングでこれ、できるかというと非常に難しいです。
健康な人にはここの感覚がようわからん、と言われますが、本当に何もかもがどうでもよくなるんです。「お茶入れようか?」と聞かれるのすら煩わしくなります。お茶を飲むか、飲まないか、私が決めないといけないから。
「しんどそうやね!どうしよう!?なにしたらいい!?」
と、親切で聞いてくれるのはいいのですが、私に決めさせんといてくれぇぇぇl!!という状態になります。これは、襲ってきた具合悪い四天王が1体であってもこうなります。
そのあたりの話は、一度noteにも書いたことあるけど。

もっと言うと、「調理」についてもおそらく「全面的な支援が必要」になります。・・・もっとも、「食事」すら「4 要らんがな」状態なのに、調理も何もあったもんじゃないとは思いますが。
「調理」とは、

調理に関する一連の行為について、支援が必要かどうかを確認する。 一連の行為とは、簡単な食事の調理や食材の準備、器具の後片付け等の行為をいう。
 【一連の行為の例】
 ・献立
 ・食材の準備 
・食材を洗う 
・調理(食材を切る、焼く、煮る、炒める等) 
・皿に盛りつける 
・配下膳 ・食器や調理器具を洗う、しまう 
・ゴミを捨てる
障害者総合支援法における障害支援区分認定調査員マニュアル68頁

この、献立を考えてから食材を準備し、段取りを考えて調理し、さらに盛りつけたうえで後片付けまでする、という一連の動作をできるのか。
まず、「献立」の段階でムリです!
「今日、何を食べるか」を決めるまでには、①和・洋・中を考え、②ご飯ものか麵類かを考え、③主菜を考え、④主菜に合う副菜を考え、⑤できるだけ一汁三菜になるように整える、という思考が必要になります。これだけで結構な知的労働です。いくつ意思決定がありますか!? 相当な回数の意思決定が必要です。こんなのムリです。ひょっとすると、献立が一番重労働かもしれません。具合悪い四天王が襲ってきているときに、これ、全部パッケージで考えて「お前、これ作れ」と言ってもらえるだけでどれだけ助かるか。

「私の病気を理解して」の解像度を上げる


私が今、なぜこんなことに興味を持っているかというと、今月あたりから急に難病仲間とあう機会があったのですが、そのいずれも、「病気を理解してほしいとは思っても、何を理解してほしいのかってうまく説明できんよね」という問題意識が出てきたからです。

私の病気を理解して

難病で話をすると、必ず出てくるテーマです。
でも、誰に?何を?なんのために理解してもらう?
ざっくりと「世の中」に向かってのメッセージであれば、ぼんやりしていてもいいんですが、いい感じの年になって人に雇ってもらったり、人と仕事をしようとすると、その解像度はかなりクリアなものが求められます。いわゆる「合理的配慮の提供」を得ながら働くことを本気で考えた場合、「どうしてもらったら働きやすいのか」までは難病患者側がある程度答えを持っておかなければなりません。けっこうシビアな問題です。

そう考えた時、どうしたら私たちのしんどさの輪郭がもう少しはっきりするかな、といろいろ探してみて、一つやってみたかったのがこの、障害支援区分認定調査項目に答えてみる、でした。

おもしろいので、最後までやってみよう。

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