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法律相談に行こう

「弁護士に相談したいけれど、どこへ行けばいいかわからない」
「市政だよりに『無料法律相談』と載っているから、ここへ行けば解決するんだ」
などなど、法律相談と一口に言っても、その窓口は様々ですし、役割やできることもそれぞれです。
受けている弁護士としても、「そんなことしかできないのか」とがっかりされることもしばしば。そこで、どういうときに、どこへ相談に行けばいいのか、簡単にまとめておきます。
個人として法律相談へ行こうかな、と考えている場合はもちろん、対人援助職として、「この人は法律相談に行った方がいいのではないか」と対象者に思った際の参考としてもどうぞ。

法律相談の種類

個人が利用する法律相談には、大きく分けて3つほど種類があります。
① 役所やNPO法人、市民団体等が主催する「無料法律相談」
② 法テラス地方事務所で行う「無料法律相談」
③ 法律事務所の法律相談

同じ「法律相談」ですが、対応する弁護士や時間、相談時間内に解決できることに大きな差があります。ご自身が「ちょっと法律相談をしてみたい」と思う内容によって相性がありますので、それぞれがどのような雰囲気なのか、あらかじめ知っておくとよいでしょう。

役所等が主催する「無料法律相談」

法律相談をしようと思い立った時に、まず思い浮かぶのが「そういえば、市政だよりに、市役所で毎週無料法律相談してるって書いていたな」という住民向け無料法律相談です。これは、役所によって多少の差はありますが、だいたい以下のようなルールで実施しています。

  • 1回20~30分制限

  • 同じ事案に関する利用は1回のみ

  • 担当弁護士は、近隣の事務所の弁護士(地方の場合、都市部で希望者を募っている)

役所などの無料相談でネックなのが、時間の短さです。
相談を聞く弁護士側としては、1回あたりがこの時間でも、連続6件~8件程度を聞くことになりますので、後半の時間になると酸欠になってくるほど結構ハードなお仕事です。また、たった30分で相談者から困りごとの概要をうかがい、それを法律的に整理し、ある程度の指針を示さなければならない、と思いながら聞いています。
ということは、相談者としても、かなり気合を入れて臨まないと、あっという間に相談時間は終了してしまいます。また、後に数珠つなぎで相談者が控えていますから、話が途中だろうがなんだろうが、問答無用で退出願うことになります。仕方がありません。なにせ、無料ですから。このあたりは、病院の診察室と異なる点です。

こうした特徴から、役所の無料法律相談の主な機能は、次はどうすればいいか、見立てを立てることにあります。正直、この時間では、弁護士としても即座に受任するべきかどうかの判断もできないことが多いです。逆に、一瞬で解決することもあります(たとえば、「法定相続人はどこまでですか」「30年前に友達にお金を貸したけれど返してもらえますか」など)。この、「もうちょっと考えるべ案件」と「瞬間で終わる案件」の振り分けをして、前者であれば「お金を払ってゆっくり聞いてもらった方がいいよ」という助言を受けることになります。ゆっくり聞いてもらう弁護士なんか知らないよ、ということであれば、その時に聞いてもらった弁護士が話していて不快でなかったのであれば、その人のところで、今度はお金を払って、聞いてもらいましょう。

法テラス地方事務所の「無料法律相談」

市役所法律相談と同じくらい最初に思いつくのが、法テラス地方事務所がおこなっている無料法律相談です。ただし、法テラスを利用するには一応収入・資産要件があるので、それなりに生活できるほどの収入を得ている場合は断られる可能性があります。また、個人または法人の事業に関する法律相談も対象外です。
法テラス地方事務所の法律相談のルールは、だいたい以下の通りです。

  • 1回30分

  • 同じ案件に関する法律相談は3回まで。同じ弁護士を指名することはできない。

  • 担当弁護士は、近隣の弁護士が担当しているが、役所無料相談よりも広域から参加しているので意外と遠くの弁護士が担当している場合もある。

役所の法律相談とほぼ同じような使い勝手です。相談時間が短いので、なんとなく話し始めてしまうとあっという間に時間切れになってしまうのも、役所の法律相談と同じです。そして、話の途中であっても、30分で容赦なく退出させられるのも役所と一緒です。よく準備して臨みましょう。
異なるのは、すべての市町村に事務所があるわけではないので、自宅から遠いところに事務所がある弁護士が当たる可能性が上がります。そのままお願いしようにも電車で1時間以上かかる場所の事務所の弁護士だった、ということが発生します。
また、相談が混みやすく、急ぎであってもすぐには予約が取れないこともあるようです。
ただし、法テラス地方事務所の場合、「おとなのじじょう」でその場では受任してもらいづらい、かもしれません。

法律事務所の法律相談

法律事務所は、個人向けの業務を展開している事務所であれば、法律相談の受付を行っています。だいたい費用がかかることが多いですが、地域(都市部ほど「初回無料」をうたう事務所は多いです)や相談内容により、相談料が無料、としていることがあります。法律相談の価格設定権は各法律事務所にあるので、ホームページでチェックしましょう。有償の場合、30分5000円(税抜き)であることがほとんどです。そのほか、スタンダードなルールは以下の通りです。

  • 1回の相談時間は自由

  • 30分5000円(税抜き)。1時間聞いてもらったら10,000円。1時間半聞いてもらったら15,000円。

  • 「債務整理」の相談は、初回無料の設定をされていることが多い。

  • 指名OK

このように、有償にはなりますが制限時間は緩いので、ゆっくりとお話を聞いてもらうことができます。DV、闇金対応、刑事事件(逮捕直後)など、類型的に時間との勝負になる案件は、その場で受任してもらうことも当然可能です。弁護士にとっては事務所なら文献もそろっていますしPCで判例検索などもできますので、ベストコンディションで相談を聞けるということになります。相談者にとっても、30分で「終わりですよ(# ゚Д゚)」と呼びに来る人がいない環境で話せます。
ただ、安くはない費用がかかります。このため、いきなり有償で法律事務所に直接飛び込む前に、「お金を払って聞いてもらうほどのことか?」という点に不安がある方は、無料法律相談を1回かませるとよいのです。

法律相談の疑問あれこれ

法律相談を聞いている中で、「これってよく言われるけどどうなの?」という注意点について書いてみます。

メモを持って行った方がいいといわれたけれど、どんなメモがいいの?

たしかに、特に無料法律相談の場合、30分やそこらの時間制限の中、うまくまとめて話せないから、全部紙に書いていこう!とされる方もおられます。これは、「程度次第で正しくもあり、誤りでもあり」というところです。
たまに、離婚についての相談の際、「これまでの話を全部するのが難しいから」と、細かく時系列に沿ってできごとを書いたメモを何枚も持ってこられる方がいます。しかし、読むにしても時間がかかり、あまり多いとそれはそれで30分ではおさまりません。また、速読を求められる状況下で、そのメモを書いた相談者と同じ「想い」でメモの内容を理解することも難しいのです。
この場合、「簡単な」メモを作成することは大歓迎です。「簡単な」って具体的にどんなんやねんと言われそうですが、おおむねA4サイズで、常識的なフォントサイズで2枚が限界かな、と思います。

裁判所から「訴状」が送られてきました。読んでもらえますか。

これは、まず上記と同じで、長さによります。長い訴状をその場で読んで、きちんと理解することは困難です。次に、訴状等の「裁判所からの郵便物」が届いているということは、どんな事件類型であっても、それだけで法的にきちんと対応しないと後々大変なことになる状態です。
そういえば昔、「訴状に書いてあることは荒唐無稽な話だったので、公明正大な裁判所がこんな判決書くはずがないと放置していたら、判決が届きました」という法律相談を受けたことがあります。
れは極めてヤバいです
裁判とは、基本的に「訴える人(原告)」と「訴えられる人(被告)」の双方から出た事情のみに基づいて判決を書きます。このため、原告が訴状でどれだけ荒唐無稽なことを相手が言っていても、「あんた、それ、荒唐無稽屋で」とあなたが裁判所へ行って言ってやらないと、裁判所は相手の主張通りに判決を書いて終わってしまいます。
なんにせよ、裁判所から郵便物が届いたら、少なくとも無料法律相談で見てもらった方がいいでしょう。

遺言書を書いてみました。あっているか見てもらえますか。

↑の「遺言書」に、「協議離婚書」「契約書」「答弁書」などを代入するといろいろなパターンがあり得ますが、とにかく自分の書いた法的文書を添削してほしい、と、無料法律相談に持ってこられることがあります。
しかし、その文書を作成するに至った経緯や、その文書で相談者が実現したいことなど、いろいろうかがっていると30分では足りません。また、そこで「よっしゃ、大丈夫」と太鼓判を押すということは、法律家として大なり小なりその文書に責任を負うことになりますので、無償で太鼓判を押してくれる弁護士は少ないでしょう。
有償の場合、やはり太鼓判を押す責任は、法律相談だけでは負いかねるので、きちんと契約書作成費用を支払ってくださいね、という話になる可能性が高いといえるでしょう。

弁護士の知り合いがいません。どうやって探したらいいですか。

市役所で勤めているときによく言われました。「いい弁護士を紹介してほしい」というのは頻出のご相談です。しかし、市役所として、「ここがいいよ」などと紹介できるはずもないので、それはお断りしていました。
このように、「いい法律事務所を紹介してくれる公的機関」は存在しません。法テラスにお願いしても、せいぜい住所が相談者に近いところを、上から順番に割り当ててくれるだけで、「質」までは担保してくれません。
というわけで、自力で探すしかないのです。
10年ほど前なら、「タウンページでよさげな広告を出しているところがいいよ」と言っていたのですが、IT化が進んだことでタウンページなんか死語の世界ですよね。
こういう時の方法の一つに、無料法律相談があります。役所や法テラスへ行ってみて、そこで話を聞いてくれた弁護士とウマがあえば、そのままお願いしてみるといいでしょう。
しかし、相談窓口に来ている弁護士は、どちらかというと近隣の法律事務所から当番で来ているだけなので、事務所が意外と遠かったり、そもそも「こいつ、合わんな」と思う先生だったりします。そういう時は、実はネットでググるのが一番早かったりします。自力でのコネがまったくないところからいきなり「名医」を当てるなど、医者探しでも難儀しますよね。まして、そんなにしょっちゅう行くことがない法律事務所ともなれば、取りうる手段も限られています。そうすると、結局ネット情報を参考に相談するのが一番手っ取り早いのだろうと思います。

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