ロシアへの協力を拒んで殺された指揮者ユーリ・ケルパテンコの演奏。

ロシア軍がウクライナ南東部・ヘルソンの町を占領し、住民たちがロシアの統治を歓迎していると演出するためにコンサートの夕べを企画しました。そして、ヘルソン室内オーケストラの指揮者ユーリ・ケルパテンコさんに出演を要請したところ、占領者のプロパガンダに協力するのはいっさいお断りだ、と拒絶されました。頭にきたロシア軍は彼の自宅に乗り込み、ケルパテンコさんを射殺したという事件です。
ケルパテンコさんのフェイスブックは今年の5月が最後の書き込みでした。

彼とヘルソン室内オケの演奏はヨウツベにもいくつかあがっています。指揮ぶりをみると、ご本人の性格なのか、内省的で篤実な演奏です。けっして派手ではなく、控え目でつよい主張はありません。しかし嫌味なところがいっさいない、おだやかな表現が好ましいです。ロシア軍の要請を断るのは勇気がいったと思いますが、ウクライナ人の誇りにかけてそうなさったのでしょう。ご冥福を祈ります。

ちょうど1年前の演奏、バーバーの「弦楽のためのアダージョ」です。

これはウクライナの女性作曲家ザンナ・コロドゥブの「交響曲第3番」。4分ちょっとの短い演奏なので、ひょっとしたら作品の一部かもしれません。まったく知らない作曲家ですが、ショスタコーヴィチ味があっておもしろく聴けました。

11月14日追記。  ヘルソンがウクライナ軍により解放された。もしあと1か月ちょっと早かったら、ケルパテンコさんは殺されずにすんだかもしれない。あるいは擬態でもいいから、頭を低くしてロシア軍に協力していたら、生き延びていたかもしれない。

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