#002 リリックトリガーーイヌマニダイサクセンー

第2回目のお題は「リリックトリガー」。

スムルースの曲はスルメ曲というのは有名で、聞けば聞くほど味わい深くなるのだけど、この曲ももれなくスルメ曲。

初めて聴いたときは、というか、正直わりと最近まで、なんだかロマンチックな曲だなあと思っていました。星とか出てきたらすぐロマンチックで片付けてしまう無粋な私。ごめんなさい。
でも、ある日突然、この曲やば…と思って放心状態になりました。

この曲のテーマは、幸福の克服。

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人は皆、幸せになる権利がある。
私は本気でそう思っています。好きな人には幸せになって欲しいし、私も幸せになりたいし、好きな人の幸せと自分の幸せが一緒ならこの上ない幸せだし、嫌いな人のことは正直どうでもいいんだけど勝手に幸せにしといて欲しいと、自分勝手にそう思っています。

「幸せ」という、あるようでない、ないようである、そんな概念の話を誰かが持ち出すと、私は正直ちょっと警戒してしまうので(変なのに誘われないかなとか)、あんまり自分から話したくはないのですが、どうも最近の自分は無意識に追い求めているような気もしていて、自分なりの考えを少し書いてみようと思うようになりました。

もちろん幸せは人それぞれというのはいうまでもありません。誰かに決められるものでもなく、自分が決めるものです。でも、人って意外と自分の幸せに臆病なんじゃないか?と思うのです。

手に入れるために、失うものもあるということ。
手に入れるということは、いつか失うということ。

そんなん、こわい。それやったら、手に入れないで、今のままでいい、ってね。でもこれではいつまでたっても幸せになれないじゃないか…。

この曲は、星の瞬きを表したみたいなギターと、ハッとするドラムから始まります。Aメロは常に緊張感のあるベースも手伝って、ちょっぴり不安感もある。
曲全体にどこかつかみ所のない揺らめきや不安定な部分もありながらも、でもどこか冷たさもある。その冷たさは強さなのかなんなのか。

サビは、なんと形容していいのかわからないのですが、私は包容感のあるメロディと歌詞だと思うのです。見守っている感。

そこにあるのは 夢の竪琴
すべて忘れ 孤独でいた
なのに 涙があふれるのは
君に触れて 幸福の引金をひいた
もう独りでまたたけない
名もなき星に名をつけよう

引き金って一見物騒だけど、一種そのくらいリスキーなものを、実は常に手に握っているんじゃないかと思います。引くか引かないか、自分次第。

その引き金の正体は、おそらく言葉。

君を詩にして 君の詩にして
幸福の克服 リリックトリガー

1人の幸せもあります。でも、1人ではないという幸せもあります。人をひとりぼっちじゃなくすのは、おそらく、言葉です。

あのときのあの人の言葉で私は変わったなとか、きっとあのときこう言っておけば変わったのかなとか、あの一言が私とだれかをつなげた、あるいはその反対かもしれない、とか。思い返せばいくらでも。

自分が幸福を手に入れるためにこの引き金を引くのか。引かないのか。もちろん、その引き金で放たれたものが、どこにどのように届くのか、届かないのかは、わかりません。失敗する危険も孕んでいます。でも引かないと変わらない。どうする?

幸せを追い求めることは、それだけの覚悟がいるのだと思います。変わることに対しても、変えないことに対しても。

幸福になるには幸福と手を取り合わないといけない。自分の幸せというものに気付き、受け入れる覚悟。

最後のサビの歌詞では、“幸福の引き金を引いた”、だったのが、“幸福が引き金を引いた”になっています。そして、“もう独りでまたたけない”が、“もう独りでまたたかない”に。
素直に受け取ると、この歌の主人公は、きっとひとりではない幸せを決意をしたのだと思います。そして、それを幸福が祝福している。
なんてロマンチックなのか。

あああ、どうしよう。ドキドキする。
つりばし効果でますますスムルース好きなってまう。

なんか、思いが強すぎてうまく言えていない気がする。
こうやって書けば書くほど、幸せというのが何か形の決まっているもののようにですが、そうではなく、形はないし、あったとしても、どんどん形を変えていくものだと思います。それに、引き金を引くほどの何かを起こさなくても、目の前にあったり、輪ゴムをピーンって飛ばすだけで、手に入る幸せもあります。

その幸せは、誰かに邪魔されるものでもなく、誰かに言わなきゃいけないものでもなく。自分で小さく幸せと思っていればいいんだと思います。あとね、自分の幸せに後ろめたさを感じなくていいんです。

人生ってロマンチック。素敵だね。


次はたむさんの番です。
何の曲がくるのか、お楽しみ。

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