持続可能な木材利用を～ウッドショック～
今年、コロナの影響もあって日本が莫大に輸入する木材の供給が滞り、アメリカに端を発した「ウッドショック」が日本を震撼させました。昨年も同じように「住宅が建てられなくなった」と言われていましたが、中国から輸入していたトイレなどの住宅設備が不足し、家そのものの完成が困難になっただけで家全体ではありませんでした。
しかし今年は、中国やアメリカでの住宅需要の高まりによって、普段から輸入していたような外国産の木材が日本に来なくなってしまいました。これにより、工務店によっては「今年の着工はできない」とか「建築期間を延ばす」というような対応をせざるを得なくなっているようです。昨年よりもこの余波は大きいように見えます。ただ、それは輸入木材が困っただけで、国産の木材以外使っていない天然住宅には関係があまりないはずでした。
それでも天然住宅の木材についてもほんの少し値を上げなければなりません。なぜなら、外国産木材が入らないことに伴って、国産木材の需要が増え、原木価格が上がっているのです。木材を供給している「くりこまくんえん」もその影響を受けています。
そもそも、一般的な住宅を建てるのに必要な木材費は本当に少ないです。イメージ的には多くを占めると思いがちですが、2000万円の建築費があったとしても、木材費はせいぜい100万円※です。莫大に使われるのに安すぎるほどなのです。しかも、原木の価格は50年間変わっていません。そのせいで国内の林業関係の収入は、労働災害が一番多い職種なのにも関わらず、恐ろしく少ないのです。だからこの「ウッドショック」のタイミングで国産木材の値段が適正なレベルまで上がればよいとも思います。
※天然住宅では木造戸建住宅一棟の建築で400〜800万円を山側に還元しています
しかし、我々の組んでいる「くりこまくんえん」では、その値上げ程度を一割程度に抑えようとしてくれています。山側が気の毒だからもう少し支払いたかったのですが、普通に暮らす購入者の側にも負担をかけたくありません。ただでさえまともに暮らそうとしている人々は、みんな生活が苦しいのですから。コロナの影響は残念ながらすべての人々に及んでいます。ほんの一部の「中抜き」で稼ぐ企業以外は、苦しいのです。
天然住宅の木材費はもともと林業者に過度の負担を掛けないようにしてきました。そのおかげで協力関係が構築できているため、できるかぎり住宅購入者の負担を少なくできるよう協議を重ねています。他と比べると値上げ幅がずっと少ないと思いますが、なんとかご理解いただきたいのです。
▲学童保育の施工事例。無垢の杉のフローリングは、子ども達にも好評です
しかも「天然住宅」で使う木材は、最高級の品質を保っています。というのは他社で使う木材には、「高温乾燥」と呼ばれる機械乾燥で、120℃の温度で乾燥させたものが一般的だからです。木材は80℃を越える温度で乾燥させると、木材の最も重要な「リグニン」と「セルロース」が壊されてしまいます。だから高温乾燥させた木材では、表面に割れが入るのではなく内部に割れが起きて弱くなり、防虫成分である「リグニン」を失って殺菌・ウイルス中和の効果がなくなるばかりか、下手するとシロアリに喰われやすくなるのです。
天然住宅で主に使うのはスギが多いですが、スギは何もしなくてもシロアリを寄せ付けず、殺菌・ウイルス中和の効果を持っています。それを通常は木材乾燥の過程で失わせてしまっているのです。これを失わせず、艶のある木材にして内部割れの少ない木材にするには、「木材の乾燥技術」がとても重要なのです。
ここで「woodbe」の技術を紹介します。下のホームページに詳しく紹介されていますが、「くりこまくんえん」で使っているのはこれと同じものなのです。
https://www.woodbe.jp/
なぜ同じかというと、私自身がこの活動に関わり、ともにつくってきたからです。そして「woodbe」の活動自体にも関わっています。この技術を成功させるために、かれこれ10年以上も前から関わってきました。今回これに賛同して参加してくれたのが石川県にある「フルタニランバー社」で、そこがホームページ含めて作成し、広く知らせてくれています。本当になぜこれほど乾燥がうまくいくのかわかりませんでした。調べていく中で、初めて理解できてきたので、次回そのメカニズムを紹介してみたいと思います。
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2021年8月に発行しました「天然住宅 田中優コラム」を一部編集し転載しました。
田中優コラム一覧はこちらより
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