女3人、無頼旅 3

【カナンRPG小説 さむらいの妻 3】

 話は知るため、語るため……。

 このおはなしは、「石と呪いのファンタジー」世界を舞台にした、『カナンRPG』を実際にプレイした様子を、おはなしふうに書き起こしたものです。

 登場するキャラクターは、実際にプレイしたキャラクターそのままではなく、このおはなしのためのキャラクターなんですが、プレイの様子は実際のものをもとにしています。……まあつまりは、実際のプレイの様子とはちょっと違うかもしれないですよ、ということです。
 今回登場するのはこの3人。

●シグサ(♀)
 ふたつ名は〈荒ぶる頭〉、音楽好きの24歳。
 カナン中の音楽を楽しみたくて旅しているとは本人談。

●モモシル(♀)
 ふたつ名は〈青きまなざし〉。
 猪突猛進、なにかというと敵を作る、負けん気の強い18歳。
 腕っ節に覚えもないくせに、トラブルを起こす。

●コズ(♀)
 ふたつ名は〈大河の母〉。
 おせっかいで男好きの19歳。
 人当たりがよくておっとりして見られるが、実は3人の内でいちばんの長刀の使い手。

 前回、店の主人の話から、さむらいが怪しいことに気づいた3人はそのあとを追ったのだが……。

※RPGについて詳しい方へ。
 『カナンRPG』は、「石と呪いのファンタジー」世界、カナンを舞台にしたファンタジーRPGです。
※『カナンRPG』についてはこちらから、PDF版ルールブックは好評ダウンロード頒布中です。


【山道を探す】
 老主人から、かつて村にきたさむらいがやってきたという山を教えてもらったシグサたちは、とるものもとりあえず、山へと分け入った。
 さむらいの正体がなんだかはわからないが、娘たちの安否が心配だったのだ。
「追いかけるたって、なにをどう追いかければいいのよ」
「女の子4人連れよ。猿神みたいにはいかないでしょ。道をたどっていけばいいんじゃない?」
「道……ねえ」
 コズは斜面を見上げた。
 斜面といっても、一面うっそうと緑に覆われ、視界は完全にふさがっている。
「まずはその道を探さないと」
 結局半日ほどかかって、さむらいが辿ったらしい細い道を見つけた。そう思って探さなければわからないような「道」だ。
「これを行ったの? あの娘たち、意外とすごいわね」
 踏み固められてはいるものの、大きな石だの木の根だのが不規則に顔をのぞかせている山道はそうとうに歩きにくい。これをあのさむらいはともかく、4人の少女がのぼっていったのだろうか。
「それにしても、いよいよ怪しいわよね」
「なにがさ」
 シグサに聞き返すモモシル。
「だって、我が妻の侍女なんて言って。この道の向こうにそういうおうちがあると思う?」
「あー」
 シグサは、侍女を必要とするような身分の女が、こんなけものか狩人しか通らないような道しかないところに住んでいるのか、と言ったのだ。
「で、追うの?」
 とコズ。
「当然でしょ!」
 とずんずん下生えをかき分けていくシグサに、肩をすくめてついていく。モモシルも続いた。
「悪い神にとって食われてなきゃいいけどねえ」
 不謹慎な女である。

【悲鳴】
 これまで旅慣れている3人のこと、いったん道を見つけるとそれからは早かった。本職の狩人もかくやという速さで、山道を登り切り、どうやらさむらいの屋敷……とおぼしき場所にたどり着いた。
 屋敷。
 それはきっと、何十年か前には立派な屋敷であったろう。
 しかしいまとなっては廃墟、いや残骸と言った方がよかった。
 屋敷を囲んでいた塀は数カ所を除いて崩れ去っていたし、庭とおぼしき場所は雑草がのび放題……いや、ちょっとした森のようになってしまっていた。
 それでもその中で少し開けた場所に、少女たちが立っている。
 後から追いついたシグサたちには表情までは見えなかったが、すっかりおびえきっているのは離れたところで遠くから見てもよくわかった。
 まだ向こうは気づいていないだろう。シグサが声をかけるかどうか、ためらったところで、さむらいの声が聞こえてきた。丈高い雑草のおかげで姿が見えないが存外近くにいるのだ。
「もうすぐ妻がやってくる。おまえたちで妻の無聊を慰めてやってくれ。なにしろ我が妻は気まぐれなところがあってな。怒ると手がつけられぬのだ」
「奥様、ほんとにいるんだ」
 モモシルがつぶやいた。それはほかのふたりも思っていたことだ。こんな場所に高貴な身分の女が住んでいるはずはない。自分たちを騙すための言い訳か、さむらいの妄想なのではないかと。あるいは……もうひとつありえることを想像していたが、もしそうならいっそう話はやっかいになる。
 結局声をかけないまま、3人は少女たちのいる方へと近づいていった。
 そして、もういいだろう、と声をかけようとしたそのとき。
「きゃあああああああああああっ!」
 少女のひとりが悲鳴をあげた。
 それにつられたか、ほかの3人も次々に悲鳴をあげ始める。
「な、どうしたのよ……」
 言いかけてシグサは息をのんだ。
 少女たちが見たものを自分も見あげてしまったからだ。
 どうやら、彼女たちの予想のうち、最悪のそれが現実のものになってしまったようだった。

【ゲームテーブルから】
 ここからは解説です。
 『カナンRPG』のルールについて、ある程度知っているひと向けに書かれていますのでご了承ください。

 道を探して山を登るところでは各人に〈狩人〉技能か〈自然知識〉技能判定をやってもらっています。経験でも知識でも、得意な方で成功してくれればいい、ということで。

 ところで、1回の掲載量ってこのくらいだと短いですかね? もうちょっと読み応えがあった方がいいのか……。

テキストの舞台となっている架空世界カナンについては http://imaginary-fleet.sakura.ne.jp/ca/main.html こちらのサイトをご覧ください。
これからもカナンの情報はじわじわ増えていく予定です。
※課金設定もあくまで試験的なものですが、カナン世界に興味のある方、支援したいぞ、という方は入金してくださってもオッケーですよ。


ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?