『ドラゴン・ティアーズ』プロローグ

※制作中の『はじめようミニチュアゲーム2017』の本文の途中経過をちょっとずつ公開しています。
※記事は最後まで読めますが、企画を支援したい方がいらっしゃいましたらぜひちゃりんとお願いします。

 腕は2本、足も2本。でも、あれは……いま村人のひとりを斬り倒したのは……人間ではない。あんなものが人間であるはずがない。
 オーク!
「伝説の魔物がほんとうにいたなんて……」
 ベアトリス姫は震える思いで獰猛に吠える魔物の一団を見つめた。手に鉄の塊のような剣をたずさえたオークたちは、逃げ惑う村人たちを吠えながらのんびりした歩調で追いかけている。
 嗤っているのだ、と姫は悟った。
 あの怪物たちは恐怖に怯える人間たちを追い回して嗤っているのだった。
(陛下はついにお信じにならなかったけれど……)
 巷間に広がる奇怪な噂を、ベアトリスの父王をはじめ、王家の人々は信じようとはしなかった。ベアトリス自身、ドラゴンだのエルフだのオークだの、死者が蘇ってくるだのと、巷間聞こえてくる噂は、続く隣国との戦のせいでささくれだった民の心が生み出した幻想にすぎないのだろうと、疑いの心を捨てきれないでいたのだ。
 しかし、伝説の怪物は実在した。
「いかがいたしますか、姫」
 彼女の言葉を信じてついてきてくれた老戦士ガドフリーの言葉にも戸惑いが隠せない。しかしベアトリスの心にはもう迷いはなかった。
「民を守るのが王家の努め、魔物どもを追い払うのです!」
 ベアトリスたちに、村人を追い回していたオークどもも気づいたようだ。雄叫びをあげてこちらを威嚇している。
「続け、ウォルネットの勇者たち!」
 彼女が剣を引き抜いたとき、一瞬太陽が遮られた。巨大な有翼の怪物──ドラゴン──は、これから始まる戦いなど興味なさげに悠然と空の彼方へ飛び去っていった。
(いったい私たちの世界になにが起ころうとしているの?)
 だが、突進してくるオークの群れを前に、彼女に考えている暇は与えられそうもなかった。

──君の戦いへ続く!


※今回は『はじめようミニチュアゲーム2017』に掲載されるルール『ドラゴン・ティアーズ』の背景世界を物語調に紹介してみました。たぶん本誌冒頭に載るのかなー。
※D&Dふうの、ということで、人間、オーク、エルフそしてアンデッドなどが登場します。

※ゲーム本体についても徐々に紹介していきますので、応援よろしくお願いします。

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