漫才台本『話のつなぎ』

A・B「はいどーも〜」
A「よろしくお願いします〜」
B「会話が続かんのよ」
A「あらどうしたの」
B「この前な、髪切ってもらいに美容室行ったんやけど、あまりにおれの返事がつまらなすぎて美容師さんが黙って切りだしてもうて…」
A「美容師黙した!?そりゃたいしたもんだ」
B「一応美容師さんの話には『へぇ〜』とか『そうですかぁ』とか、返事はしてたんやけどなぁ」
A「そりゃ人の話をただ『へぇ~そうですかぁ』って返事してたら会話も終わるわ」
B「そんなアホみたいに言うとらんわ。でも『へぇ〜そうですか』しか言えへんもん」
A「ちゃうんよ。相手の会話の中にある『ワード』から連想して自分のトークをやっていくんよ」
B「ほうほう」
A「例えばな、『あっちに新しい喫茶店ができたらしいですよ』という話をされたとする。そしたらやな『喫茶店』っちゅうワードから『コーヒー』とか、連想できるやろ」
B「まあまあ、できるなぁ」
A「そしたらそのまま『喫茶店といえば、うちの実家はコーヒーを豆から挽く家で、結構コーヒーにはうるさい家庭なんですぅ』みたいに話を広げていけばええねん」
B「君の家はコーヒーを豆から挽くんかい」
A「挽くかぁ!例え話や。俺含め俺の家族が飲めるコーヒーはMAXコーヒーだけやぁ」
B「糖尿一家やないかい」
A「うるさいのぉ。とにかくこんな感じや。どうや、できそうか?」
B「うーん…あんま自信ないかもなぁ」
A「ほなわかった。そしたら俺が連想しやすいワードを織り交ぜながら適当に話してみるから、その中のワードから連想して話をする練習をしよう。」
B「わかった。ありがとう。」
A「行くで。『昨日は一日休みやったから公園行ってコーヒー片手に知らん子ども野球してるのを見てたんよ。しばらくしたら、どっちもノラな。が、近くに来たもんで、リュックの底でぺしゃんこになってたまんじゅうあげたんよ。えらい喜んどって、ええことしたな思ってん。』」
B「君、どんな一日過ごしとん。後半エグいて…」
A「俺、どんな一日過ごしてしもとるんやろ…そんなことはええねん。ちょっと、連想して話続けてくれんと!!」
B「ああ、ごめんごめん。話に集中しすぎてたわ。もう一回話してくれるか?」
A「しゃあないなぁ…『昨日は一日休みやったから公園行ってコーヒー片手に知らん子ども野球してるのを見てたんよ。しばらくしたら…」
B「猫といえばぁおれ実家で猫飼っててぇ!!でも先月逃げ出してから帰ってこうへんねん…」
A「悲しいなぁ。最初の勢いどこ言ったん?人の会話ぶった切って話す話やないよ君。会話としては続いてるからええんやけど、もうちょっと明るい話にしてみよかぁ」
B「…わかった……」
A「気を取り直して、いくで『昨日は一日休みやったから公園行ってコーヒー片手に知らん子ども野球してるのを…』」
B「子どもと言えばぁ!!、にゃ~たんが子猫の頃も一回逃げ出してなぁ。いっぱい探したよぉ。帰って来たのは2年後!ほんま奇跡やと思ったわぁ。今回もそうなったらいいけど…」
A「にゃ~たん、逃げ癖エグいなぁ。」
B「4年間で20回よ」
A「エグ!失礼やけど今のにゃ~たんってオリジナル版よな?」
B「失礼だねぇ!オリジナルに決まっとるやろ!」
A「すまんすまん。でもにゃ~たんの話ばっかりしても話し進まんから、ちょっとは違う話につなげてみんと」
B「そうかぁ。やってみるか」
A「よしきた。『昨日は一日休みやったから公園行ってコーヒー片手に知らん子ども野球してるのを…』」
B「野球!!野球といえば球技!球技と言えば俺サッカーやっててぇ!ディフェンダー!ディフェンダーといえば闘莉王やけど、闘莉王のYouTubeチャンネル、『闘莉王TV』昨日の最新回、見たぁ!?」
A「見とらん!見とらんし知らんかった!『闘莉王TV』!!わりぃけど!!!」
B「おもろいんやけどなぁ」
A「闘莉王TVが面白いのはいいんよ。飛躍しすぎ、君。野球から『闘莉王TV』て!!何をベラベラベラベラつなげていきよんのよ。大喜利に自信ある人やないんやから」
B「え?」
A「『フリップを出す前にベラベラ語りすぎて最終的にお題と全然関係ない答えだしてる人』みたい!!!言うとんねん!」
B「そこまで言わんでええやんか」
A「そこまで言わんで良かったわ。ごめん。」
B「ええよ」
A「ありがとう。しかしな、君。さっきから僕の話を遮っていらんこと話してるけど、基本的に人の話を最後まで聞いたうえで話を続けていかなあかんのよ。」
B「そらそうや」
A「せやろ。じゃあもう一回やってみよか。次は遮らずな。『昨日は一日休みやったから公園行ってコーヒー片手に知らん子ども野球してるのを見てたんよ。しばらくしたら、どっちもノラな。が、近くに来たもんで、リュックの底でぺしゃんこになってたまんじゅうあげたんよ。えらい喜んどって、ええことしたな思ってん。』」
B「ええとええと…猫…にゃ~たん、はダメやから、や、野球…はやったことないしわからない…ええ…コーヒー…は、エメマンしか飲まんし…饅頭…饅頭………!!『に、人間誰でも怖いものってぇものがあるんだ。それは何故かってえと、生まれたときに胞衣<えな>を埋めるだろう。その埋めた場所の上を最初に横切ったものがあると、それが そいつの怖いものになるんだよ。』」
A「『まんじゅうこわい』!!!!意を決して『まんじゅうこわい』を一席興じようとすな!!!!ようわかったな俺も!!この一節で!!二人揃ってどんだけ好きやねん『まんじゅうこわい』!!」
B「『まんじゅうこわい』ばっかりうるさいねん。あ、『まんじゅうこわい』といえばこの前落語の寄席見に行ったときの話やねんけど…」
A「うんうんうん……てか君、話つなげるのめちゃくちゃうまくなっとるやんけ!」
B「マジか!!」
A「おう!」
B「そりゃあ良かった!じゃ、帰ろかぁ〜」
A「次は話の『オチ』つける練習せなあかんなぁ」
A・B「どうもありがとうございました〜」

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