ルックバック読んだ?
ボクは読んだよ。
読んでない人は読んでください。ボクはいまからその話をする……。
https://shonenjumpplus.com/episode/3269754496401369355
傑作ですよねえ。で、読み終えたあと、なにか語りたくなってしまうのもわかろうもの……ということで、ボクもちょっと書きます。そうさせる力がある、やばい作品だから……。
(以下ネタバレ)
本作は「自分を自分にしてくれたものへの決別と決意」のお話だと思いました。
学級新聞に連載している藤野ちゃんの漫画、みんな絵を褒め、ひとり面白いと言ってくれる子も六年生になってそれを突き放してしまうわけですが、彼女のすごさってそこじゃないんですよ。で、京本ちゃんだけが心からの称賛でそれを掬い取ってくれるんですね。小学生ながら内輪ネタに逃げず、毎回オチをつけて、3年間描き続けるって、すごいプロ意識ですよ。だから、プロとして扱ってくれた京本ちゃんに対して、プロとして振る舞った藤野ちゃんの人生が面白くなってしまう。運命ですよねえ。漫画に常に心が向いているのに、周りに流されて違う自分になろうとするのを(良くも悪くもですが)せき止めてくれたのが京本ちゃんで、まさに自分を自分にしてくれた恩人なんですよね。
で、その人との別れ。
そういった構成は存外多い。オチは二択。
失われた人を、世界に見出すか、自分に見出すか。
世界に見出す系は、残った作品や、人々の反応から、失われた人を思い出し、自らの決意を新たにするオチ。
自分に見出す系は、誰も自分と恩人の関係を理解していないけど、自分の中に失われてしまった恩人はいると確信を持って前を向くオチ。自分が死んだらその恩人も死ぬから生きようとする話と捉えても良いかも。ヒカルの碁とかそんな話ですよね。
で、本作は後者で、今まで触れてきたこのタイプの作品より胸を打つんですが、それはなんでじゃろと考えて……。我々がある日突然、各々が内密に心をつないだ相手を(作品を)理不尽に奪われた経験を経てしまったからじゃないかと思うんですよね……。物語に対して、共感はできなくても、文章と文脈から理解はしようと常々思っていますが、この時期に、このテーマで、この筆力で描かれた恐ろしい作品に出会ってしまって、ボクが思っていることは無意味なのでは?と思ってしまいます……それはともかく。
本作はあの事件から離れられない、離れずに読むのはアンフェアだとさえ思います。じゃなきゃあえてこの時期に公開はしない。そしてボクは、あの事件のあと、あの会社の作品を無邪気に楽しむことができなくなりました。だからといって作品の価値は減じないのですが、心ばかりはどうにもならない。どうすればいいのか。
その答えの一つがここにあって、一つの得心がいくわけです。
自分を自分にしてくれたものが失われ、自分はそれをどう受け止めて、どう行動するか。(別に藤野ちゃんが絶対的な正解というわけではなくて、さ)
それを考えるよすがにしようと、ちょっと前向きな気持ちになったんですよね。だって新作見ながら「武本監督ならこうしないよな」とか考えるの、不健康な上に失礼で、本当は自分もしたくないし……。
なんか結局自分語りみたいになっちゃった。
こわいな……。
以上。
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