見出し画像

【Voicy】始語が遅いと発音の不明瞭さも長引くの?

こちらはInstagramの質問箱でいただいたご質問です。

話し始めのめやすは生後10~12ヶ月頃と言われています。
1歳半までに何らかの意味のあることばが1つでも出ていれば
ことばの発達としてはそこまでゆっくりさはない、と考えてもいいと思います。
もちろん、その後キャッチアップしてゆっくりさが消失するお子さんもいますので、あくまでめやすです。
逆に、1歳前後で話し始めたのに語彙が増えていかず、
後に発達のゆっくりさを呈するお子さんもいます。
2004年のコミュニケーション障害学の特集にて、
そういった言語発達がゆっくりなお子さんの事例を取り上げています。個別事例ですが。

「発音不明瞭」を主訴に言語外来を受診した2症例の言語症状と経過
今富摂子
Case Studies of Two Children with Unintelligible Speech

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcomdis2003/21/2/21_2_106/_pdf/-char/ja

でも、実際に1歳児健診には問題がなかったけれども
3歳児健診でことばの遅れを指摘されたお子さんに出会ったことは何度もあります。
この頃は非常に個人差が大きいのと、発達速度が一定ではないので「あと伸び」することも「先伸び」することもあります。

話し始めのことを始語または初語と言いますが、このタイミングと発音との関係性はあまり語られてきていません。
なお、定型発達児と言語発達障害児の初語の調査の論文を読むと
やはり言語発達障害児の方がことばの出始めに遅れが見られます。

定型発達児と言語発達障害児における初語の調査
吉岡豊,土佐香織

https://core.ac.uk/download/pdf/70372738.pdf

ここから考えると、始語が遅いお子さんは何らかの言語発達障害を持っている可能性があり
その障害の中に構音障害をもたらす要因が含まれることがある、
と考えるのが自然かと思います。

なお、作業療法士さんも関わった研究では
幼児の構音不明瞭と手指運動の発達との関連について
―言語聴覚士と作業療法士の視点で検証―
聖隷クリストファー大学 池田泰子,建木健,藤田さより
An association between unclear articulation and manual dexterity development in children.

http://coder.or.jp/hdr/26/HDRVol26.01.pdf

手指運動に不器用さが見られると構音の不明瞭さもある、という結果が出ています。
さらには協調運動や感覚の受け取りに鈍さがある、とも示唆されています。

これらのことから考えられるのは、始語のゆっくりさと構音の不明瞭さは別々に考慮する必要があり
始語がゆっくりな原因としては耳の聞こえや知的な発達のゆっくりさ、口腔機能の発達のゆっくりさなど様々考えられるので
必ずしも構音の不明瞭さに繋がるとも言い入れないということと、
手先の不器用さといった運動面の発達と構音がリンクしている可能性は高い、ということです。
手の運動と口の運動はどちらも筋肉のコントロールという意味では共通していると言えます。

また、構音不明瞭が長引くかどうかについても研究は乏しく
不明瞭さの起点をどこに置くか(親が自覚したときなのか、構音訓練を開始したときなのか、など)
構音のパターン(発達途上の未熟性なのか構音障害なのか)
によっても「長引く」を定義付けるのが難しいからではないかと思います。

不明瞭さの修正が難しいということには言語発達障害が深く関わってきますので
「始語が遅い」→「構音不明瞭が長引く」という対応関係のあいだに交絡因子が多数含まれており、
ストレートに矢印を引けるわけではありません。
ということで、現時点で言えることは
「言語発達障害があり始語が遅れたお子さんの中に、構音の発達が未熟なパターンを持つお子さんもいて
その場合は障害特性によっては構音の不明瞭さへの自覚が乏しいことが多いので
正しい構音に修正するのに時間を要する」
ということかと思います。

また論文などを見つけたら追記します。
どなたかのご参考になりましたら幸いです。

よろしければサポートお願いいたします⸜❤︎⸝‍ 全額教材の開発費用に充てさせていただきます!