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上場後初の株主総会で "想定問答の準備" を担当した話

初めまして、note初投稿になります。
株式会社スペースマーケットで財務・IRを担当している田中と申します。

弊社スペースマーケットは、昨年12月に上場し、2020年3月に上場後初の株主総会を実施しました。

私はそこで"想定問答の準備"を担当し、株主総会当日は事務局として進行のサポートを行いました。
実は私は上場を経験するのも、株主総会に携わるのも初めてだったので、想定問答の準備を任された時にはハツラツと「やります!」と言ったものの、何をやればいいのかイメージが全く沸いていませんでした。ただやる気だけがそこにはありました。
(スペースマーケットには、このように未経験でも大役をドンと任せる風土があります。良い会社です。)

そんな状態から無事株主総会を終えた今、自分の思考の整理も兼ねてどのように想定問答の準備をしていったのかをここで書いていこうと思います。

※"株主総会とは何か"という前提や、運営に関する全体的な内容については、下記の記事で詳しく分かりやすく説明されているのでそちらをご覧ください。


そもそも想定問答ってなに?


株主総会には、出席した株主からの質問を受け付ける、「質疑応答」の場面があります。そこで、適切で正しい回答を返すために、想定される質問と回答をあらかじめ準備する必要があります。

また、回答は基本的に株主総会の議長(多くの場合は社長)が行います。そのため、自分ではなく議長が適切で正しい回答をスムーズに返せるように準備をする必要があるので、どのように回答を伝えるかとという、情報の伝達手段も工夫する必要があります。

株主総会における質問は、B/S・P/Lの各種指標や経営戦略、提供しているサービスの仕様に関することや組織・人事についてなど多岐に渡ります。
ここで事実と違う回答をしてしまうと、株主とのコミュニケーション上問題がありますし、誤って未公表の情報を出してしまうと、インサイダー取引規制に抵触してしまう恐れもあります。

株主総会の質疑応答の場面は、株主と直接コミュニケーションが取れる貴重な機会です。会社のことを正しく伝え、今後の成長に期待いただくプラスの作用をもたらすために、想定問答を充実させておくことはとても重要です。


想定問答集を作る


早速、想定問答集を作っていきます。
弊社の場合、証券代行業務を委託している信託銀行に想定問答集の土台をいただき、そこに自社特有のKPIやサービスに関する内容・項目を補充していく形で進めていきました。
個人的に想定問答を補充する際に役立ったことを、3つ紹介したいと思います。

①IPO時のロードショーを行なった際の議事録を参考にする
自社特有のKPIに関することや、財務指標についてなど投資家目線の質問については、IPO時のロードショーを行なった際に議事録を取っておき、これを参考にすることでかなり充実させることができます。

例:「サービスの利用用途の割合、年代別のシェアについて」「市場環境、競合他社の状況について」など。

②カスタマーサポート宛に届いている問い合わせの内容を参考にする
プロダクト、サービスに関するユーザー目線の質問については、普段ユーザーからの問い合わせを受けているカスタマーサクセスの担当者の意見を参考にすると良いでしょう。これでユーザー目線のよくある質問について網羅できます。

例:「不正利用を防ぐ取り組みについて」「利用時のトラブルの解決方法について」など。

③証券代行業務を委託している信託銀行から、トレンドの質問についての情報を得る
その他、流行の話題や直近の株主総会で聞かれることが多いトピックについては、総会のサポートで入っていただいている証券代行に意見を聞くと良いです。

例:「KAMについて」「GDPRへの対応について」など。


作成した想定問答は下記のようなカテゴリを作り、分類しまとめておき、株主からの質問に対し、すぐに検索し参照ができるようにしておきます。

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「経営戦略・営業戦略」「財務指標・業績」「事業」「株価」
「株主構成」「ガバナンス」「役員」「組織・人事・労務」
「IR活動」「株主総会の運営」「リスク管理」「最新トピック」
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このように想定問答集を作成していった結果、弊社の場合は200〜250個ほどの想定問答を用意するに至りました。



作成した想定問答を議長に伝える


想定問答集がある程度出来上がったあとに、その想定問答をどのように議長に伝えるかを考えます。
弊社の場合、議長席にPCを置き、そこに用意した回答をGoogleスプレッドシートで表示する方法で議長に情報を伝えていました。

ただ回答だけを表示させるのではなく、質問・シナリオに合わせた前後の分と回答を補う内容を表示させていました。

株主総会のシナリオは未経験者にとっては複雑なので(動議などが発生した際にシナリオが分岐していく)、質問に合わせて回答の前置きや、回答後にどのようにシナリオに戻っていくかなどを表示し、丁寧に情報を伝えるようにしていました。

また、1つの質問に対し、用意した想定問答1つで漏れなく回答ができるケースは稀なため、本回答とともに関連する内容を表示させることでこちらの回答の意図を伝えていました。

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質疑応答は、基本的に下記のように進行していきます。

①株主が質問する
②議長が質問を繰り返す
③議長が質問に対する回答をする

想定問答の検索に費やせる時間は、株主が質問し、議長による質問の繰り返しが終わる30秒ほどの間です。そのため、事前に想定問答の内容をしっかり頭に入れておき、素早く検索できるようにしていました。

会社の規模が大きくなってくると、想定問答のカテゴリごとに分担をするなど対応が必要になってくると思いますが、200個ほどの想定問答の数であれば一人でも問題なく対応ができると思います。


質疑応答の練習をする


私は、株主総会の質疑応答を無事完了させるために、一番大事なのは議長とともに行う事前の練習だと思います。

前述した通り、株主総会の質疑応答の場面はシナリオが複雑で、かつ、一度に複数の質問に答えなければならないため、慣れていないと必ず迷います。(弊社が実際に行なった株主総会では、1人の株主から一度に5つの質問をいただきました)

株主からの質問を受け、事務局で回答を用意し、議長に回答を伝達し、議長が回答を行うという一連の流れを繰り返し行い、情報の伝達方法のどこに不備があるかを突き止め、その都度改善していきます。

また、回答のスタンスやニュアンスを伝えることも重要です。株主とのコミュニケーションに齟齬が生まれないように、どのような意図の回答かも一緒に伝えるようにします。

練習の際には、別部署の方にフラットな視点で質問を投げかけてもらうようにしていました。ここで、想定問答集にない質問をぶつけられることも多いので、その場合の動きの確認をし、想定問答集の内容を充実させていきます。


想定問答の準備を終えて


想定問答集を作りしっかり練習した結果、実際の株主総会では全ての質問に対しスムーズに回答を行うことができました。想定問題の準備を担当したことは、結果的にとても貴重な経験となりました。

まず、株主ひいては投資家、自社サービスのユーザーがどのような質問をするか、そしてそれにどう答えるかを考え続けることで、自社の理解につながりました。

また、作成する想定問答のほとんどは自社固有のものではなく、全ての会社に共通する内容のものなので、ビジネスに関すること全般の理解も深めることができました。

会社が大きくなるにつれ、株主総会の規模も大きくなっていくので、その規模に耐えうるオペレーションの構築について今後は考えていきたいです。


以上、上場後初の株主総会で "想定問答の準備" を担当した話でした!


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