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のび太さんのエッチ!

彼女の入浴中に突如現れては裸体を凝視し、
彼女のスカートを捲れば下着を凝視する。

故意か不意かは関係無い。
そこを議論するには余りにも遅すぎる。

そんな卑劣な行為を繰り返す彼に対し、
彼女が幾百幾千と浴びせた言葉。

『のび太さんのエッチ!』

本来ならば軽犯罪法1条23号 窃視の罪と
刑法第130条 住居侵入罪のWパンチ。
それを悪質なまでに繰り返し、
恐らく余罪もボロボロ出る。
通報不可避。現行犯逮捕。
情状酌量、執行猶予は無しだ。

そしてこの事が世間に知れれば、彼は社会的に罪以上の罰を受けるのは当然で、生まれ育った街で変わらず生活するのは困難なものになることは想像に難く無い。

しかし彼は辞めない。彼女も通報しない。
なんなら彼女は普段の彼に対して嫌悪感どころか好意を示す始末。

しかし彼女は言い続ける。
『のび太さんのエッチ!』と。

この言葉に怒気を孕んでいない事は彼も、
そして彼女自身も理解している。

ならば、本当にエッチなのは彼なのか。
彼だけなのだろうか。

我々は一体、
何を観させられていたのだろうか。


理想の『のび太さんのエッチ!』を考える。

恐らく早過ぎた。
年端も行かない少年少女の戯れとして。
年齢も経験も圧倒的に足りてなかったのだ。

本当はこういう事だろ?
『のび太さんのエッチ!』って。
こういう『のび太さんのエッチ!』がやりたかったんだろ?

ええい、みなまで言うな。
全て私に任せなさい。
理想的な『のび太さんのエッチ!』をご提供いたしましょう。

では、どうぞ。


パターン①

月日は流れた。
かの猫型ロボットは未来に帰り、夢か現実かわからなくなるような刺激的な毎日だった小学生時代の記憶も薄まりつつある。

彼と彼女もすっかり大人の仲間入りを果たした社会人1年目の春。

とある土曜日、一人暮らしを始めた彼の家に彼女が初めて遊びに来た。
彼女の手料理を食べ、少し背伸びをしながらワインを飲み、レンタルビデオショップで借りた映画を鑑賞しながら、一緒に過ごせるこの一日をゆっくりと噛み締めるように楽しんでいた。

時間も深まり出した午後11時。
気恥ずかしさからか酔いからか、顔を真っ赤にした彼が彼女に対してこう言った

『・・・べ、ベッドに、いかない?』

彼女は静かに微笑み、
彼の耳元で囁くようにこう答えた。

『先にお風呂でしょ、のび太さんのエッチ。』


パターン②

月日は流れた。
かの猫型ロボットは未来に帰り、夢か現実かわからなくなるような刺激的な毎日だった小学生時代の記憶も薄まりつつある。

彼と彼女もすっかり大人の仲間入りを果たした社会人1年目の秋。

ある時、意を決したように彼は彼女に向かってこう言った。

『電気を消さないでも良いですか』

あまりにも真剣な眼差しに驚いたが、彼女は見逃さなかった。
彼の耳が、真っ赤なことに。

そのあまりにも真剣な眼差しと言葉の内容のミスマッチさ、加えて耳の赤さに彼女は笑いを堪えながら、呆れと愛おしさを交えた表情で彼に優しくこう答えた。

『じゃあまず、一緒にお風呂入ろうか?
・・・もう、のび太さんのエッチ。』


こういうことだと思います。
『のび太さんのエッチ!』って。


以上です。

今はもう『のび太さんのエッチ!』は無いらしいです。正直無くてなって良いと思ってます。

寂しさはありますが、それが時代の流れでもあり、妥当な判断だと思います。

でも私はこれからも理想の『のび太さんのエッチ!』を追求し、真摯に『のび太さんのエッチ!』と向き合っていこうと思っています。

理想的な『のび太さんのエッチ!』が皆様にもあれば、ぜひ教えていただければ幸いです。

よろしくお願いします。


『のび太さんのエッチ!』参照サイト