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福祉⑤

量が多いなとは思ったけれど

ラーメンとチャーハンと餃子を

ペロっと、、

いや、レロっと平らげた

-レロっと平らげた-

って声に出したら

水川あさみ似の店長がドン引きするかな?

と思って視線をやると

隅に座った、腰が折れ曲がった客のジジイと

熱心に野球中継を見ていた

画面の中では

黄色い法被を着た人達が絶叫している

全員がメタルバンドみたいな熱量だ

ねぎを切り刻んでいたバイトの子は

メニューを一枚一枚

磨き上げるように拭いている

僕はセルフの麦茶を汲んできて

次に勧められた動画をチェックする


そうだ、この曲を最後に僕は

BUMP OF CHICKEN を聴かなくなった

薄々、気付いていたというか

うすピタは安すぎるゴムだから不安というか

分かってはいながら、目を背けてきたけど

この曲をもって僕は

BUMP OF CHICKEN が遠くに行ったのを

悲しいけど、実感してしまった

クラスの何軍にもなれなかった僕を置いて

急に一軍と無理してツルみだしたようなPV

よりにもよってサビのフレーズに

モブ達の大合唱を全面に押し出して

胡散臭い福祉団体みたいなバンド

即ち、ロックがポップスと化す

そういう瞬間を見届けてしまった悲しみ

唯一のクラスの友人に裏切られたような

そんな気分でいっぱいになった

そしてメイキング映像を紹介する奴らも

奥底の奥底で

邦楽ロックを小馬鹿にしているのが

半透明ではあるけど、透けて見える

そもそも

ステージに立ってない奴は

ステージに立ってる奴を紹介できないのに

最近ではどうやら港区女子が

・バンプオブチキン
・ビッグママ
・ブラフマン

3つの邦楽ロックバンドを
3Bと称して馬鹿にしているらしい

海遊館あるからって調子乗ってんじゃねえぞ

化粧取ったら

ジンベエザメみたいな顔してるくせによお!




向かっ腹が立ってきてYouTubeを閉じて

Bluetoothイヤホンを外した

野球中継の喧しさが際立って不快だ

テレビを見る気になれないので

席を立とうとした瞬間に

壁のメニュー表の下に

フィルムで保護された色紙が見えた

うねうねした平仮名

ああ、また

あいだみつ◯みたいな守銭奴ポエムかあ

と思ったら、何やら文章形式だ



◯◯らーめん てん長さんへ

このあいだはありがとございました

いろいろインタビュができました

ぼくがはじめて◯◯らーめんを知ったとき

もっとおきゃくさんが来そだなとおもいました

そのりゆうはらーめんのしゃしんが

メニュにぜんぶのってて

ぜんぶおいしそうだからです

しょうらいはだいはんじょうして

かりすまらーめんになるとおもいます

◯◯しょうてんがい
おおえんだん だん長
◯◯小
◯◯ たくみ





僕: あの、、すいません

店長: はいはーい

僕: 色紙に書かれたメッセージなんですけど

店長: ああ、、笑

僕: どんな子が書いたんですか?

店長: ああ、この前、支援学級の子らが来てね
    なんか1人すっごく熱心に
    うちのメニュー見てる子がいたんよ
    たしか5年生だったかなあ
    あたし
    将来カリスマラーメン店長やて笑

僕: へえ、、あの、、
   良い文章だなあと思って、、
   しっかり読み返したいので、、
   写真撮ってもいいですか?

店長: え?笑
   まあ、どうぞどうぞ〜


レジで支払い中に

バイトの子と腰が折れ曲がったジジイが

意外にも明るく会話しているのが聴こえた


バイト: いやいや、大盛りは無理ですよ〜笑
     学生さんでも
     食べきれない人いるんですから
     並にしといた方がいいですって〜

ジジイ: いや、わしかて昔は大食いやってん
     今はパチンコ屋になっとるけど
     昔あそこに定食屋があってなあ
     おかわりしすぎて
     よう怒られたんやわ〜

バイト: もー
     いつの時代の話してるんですか笑



いや、まだ飯頼んでなかったんかい

小さなグラスに注がれたサッポロビールを

ちびちび飲みながらメニューを眺めては

クラスの3軍に見せかけて

実は陽気で可愛いバイトの子に

腰がくの字に折れ曲がったジジイが

場末のスナックみたいに話しかけている



「店内でずっとキョロキョロ眺めとるから
 保健所かと思ったわ笑」


と、温かい言葉をかけてもらい店を出た

店を出たと同時に

この店がラードを一切使わない理由が分かった

やけに低い位置にメニューを置く理由も

お品書きがほとんど平仮名で書かれてる理由も

全品写真付きの理由も

子どもは

どんなラーメンも半額で食べられる理由も

学生は

3玉くらい入った大盛りに変更可能な理由も

特に説明はなかったけれど、分かった

視界が我慢汁で半透明になるのも分かった

軒先で我慢汁出しているのを

水川あさみ似の店長に見られたら出禁だから

そそくさと電動自転車に乗り込んだ

ギアをマックスにして

ほぼシャッター街となった夜の商店街を

シャーっと駆け抜けた

いや

-ヌチャーっと駆け抜けた-

って、ふざけてあなたに言いたい気分

商店街の出口付近

元々はアーチの支柱だった部分に

縦50センチ、横1メートルくらいの

長方形のベニヤ板が一枚

頼りなく据え付けられていた

虹が🌈描かれていた

同様のベニヤ板を繋ぎ合わせて

アーチみたいにしたかったのかもしれない

寸止めになったような虹🌈

これまた頼りない街灯に照らされて

はあ、、

しつこいなあもう、、

虫の息みたいな商店街のくせに、、

聴くよ、聴けばいいんだろ聴けば!

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モブに歌わすなモブに!

どいつもこいつも

福祉みたいなことしやがって

-うまく手は繋げない それでも笑う-

たしか何処かの駅で

何処かの子どもが描いた

大団円の絵もそうだったな

よーく見たら、手と手に隙間があった

握手が苦手な僕には

それくらいが丁度いい

だから無理に大盛りにしなくていいんだよ

ラーメンもnoteも

盛らなくて、いいんだよ

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