イケメンについて語るなら彫刻刀持って来い
へえ
この顔、パーツの位置完璧なんや
この顔ね、、
へえ、、、
ふーん
イケメンって何？
そういえば、ちゃんと調べたことなかったな
イケメンが何か分からないのに
本当のイケメンがどうとか言われたら
更に混乱してしまう
母国語のはずなのに
こいつらの論理が見えてこない
筋が見えない
哲学的なマン筋が、見えてこない
今更恥ずかしくて訊きにくいんだよなあ
イケメンって何？って
◇
あんたなんか全然イケメンじゃないから
気にしなくていいんだよ！笑
って
適度にクスクス🤭してくれたならば
彫刻刀で互いに中指詰めながら
しっかりと己の審美眼について
どちらかが気絶するまで
楽しく激論できるんだけど
昔からなかなかクスクスをもらえない
こはいかに
◇
まさか
命を賭けてないのかな？
イケメンがどうのこうのって
美を語るってこと、、じゃないんかな
ああ奇遇ですね！
僕も審美学に興味あるんですよ〜
って割って入らせない壁
そうそう
男女関係なく使えるはずのスキンケア用品を
わざとらしく化粧品コーナーに置いて
男が入って来ないようにするあの膣壁
都合よくしゃしゃり出てくる性差
あれは何なんだろう
全国のおっさんが急に肌綺麗になって
スッピンでマウント取れなくなって
語れることがなくなるのが怖いんかな？
語れること何もなくなるからこそ
また新たに問いを立てることができるし
その答えを探す思索の熱量が
生きてる証拠なはずなのに
その証拠を見せびらかして
ビラビラの直径を彫刻刀と比べては
僕らは互いに反応し合えると
思ってたのになあ、、
筋違いの筋子だったのかな
筋子は無理、食わず嫌い
◇
おうおう！言うね言うね！
よっ！よく見たら肌の汚ねえ女！
おうおう！言うね言うね！
よっ！よく見たら目力ない女！
いいよいいよ〜！
スッピンはぶっさいくだけど
値踏みしなきゃ気が済まねー！
これっきゃない！
いったれいったれ！
って
清々しい合いの手を入れる準備はしてるのに
イケメンがどうのこうの喚く人が
近づいてきてくれないから
なかなか新たな地平に到達できない
10数年
イケメンについて考えるのをサボっていた
そして
イケメンが何か分からずとも
今のところ生活に支障はない
だけど
これ以上円安が進むのであれば
イケメンについて再考した方が良い
テクニカル指標的に見直す時期に来ていると
ウォール街の連中も言っていると
関係筋の子から伺っている
◇
僕の顔面や容姿に対して
何を主張しようが構わない
主張したからって殺したりはしない
けどやっぱり
美という哲学の主役級のテーマで
この世に知らしめたい自論があるなら
殺すつもりで来てほしい
その確かな熱量があったから
目の前に差し出された彫刻刀で
あの人は木彫りを始めたのかもしれないし
◇
あの日、ばあちゃんは
地域の合唱団を何らかのトラブルで
クビになった
確かその後から20年くらい
つまりは死ぬまで
熱中していた、木彫り
「僕ね、鏡で自分の顔見たらね
なんか気持ち悪いって思うんよ
なんでなん？」
「くぼみちゃん
女に文句言われたんか？」
「ううん
男前とも不細工とも言われない
髪長くしたら女の子みたいとは言われた」
「なんて言われたいと？」
「何も言われたくないんよ
女子に見られたくもない
嫌やもん、比べられるの」
「よし
ばあちゃんが版画掘ってやろう」
「やめてよ、気持ち悪いし、なんか怖い」
「気持ち悪いことなか
可愛い顔しとるやん、くぼみちゃん」
「いや僕男なんやけど」
「男前より、可愛い方がよかよ」
「ふうん、なんで？」
「可愛いなら、みんなに好かれるけん
可愛い顔が1番よかよ」
「よく分からんけど、、
僕の顔って可愛いん？」
「姉ちゃんより、可愛かよ」
「いやいや
僕と違って姉ちゃん凄い人気よ
僕の友達みんな
姉ちゃんと付き合いたいって言いよるもん
ばあちゃんだけよ
そんなこと思っとうの」
「ばあちゃんの友達みんな言いよる
あんたんとこのお孫さん
可愛い中学生やねーって」
「え？いや、ばあちゃん友達おらんやん笑
なんでそんなテキトーなん笑
合唱団もクビなったんやろ？
喧嘩したって聞いたけど」
「まあいいたい、その話は
ちょっとその葡萄の向き変えてくれんね」
「ばあちゃん、木彫りで何作りようと？」
「葡萄の筆箱」
「誰が使うんよ、そんなの笑」
「誰も使わんでよか
年寄りの趣味にいちいち口ださんの」
「、、それ楽しいん？」
「ちょっと黙っとき」
中指は直ぐに刺さりそうなほど
刃先の近くに添えられていた
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