大きい声
◇
ついにというか、やっぱりというか
日本に帰って僅か数ヶ月で
社内で[大きい声]を発動
電話口の向こうには取引先のババア
女性社員みんな迷惑してるという、お局
そんな予備情報を仕入れていなくても
多分結果は同じだったろう
恫喝にならぬよう細心の注意を払い
久しぶりに声帯を解放する
バンド練を思い出した
数分後にまたかけ直す
双方の至らない点が整理できた
お局という
鼻つまみものになる姿を想像した
[いつもの声]で謝った
お局は振り幅にビックリしていたが
殴り合った後みたいに
妙にフレンドリーだった
翌日
口の悪いことで知られる拠点長まで
妙にフレンドリーになっていた
口数が少ないことで知られる副拠点長は
妙にメランコリーになっていた
敬語になったり命令口調になったり、変だ
僕の[大きい声]で
磁場が狂ってしまったのかもしれない
◇
-くぼみちゃん!-
-通勤途中にノーツ読んでるよ!ノーツ!-
-くぼみちゃんのまんまで笑えるわ〜笑-
と、電話口の向こうから
北緯1度のサイゼリアでのくっちゃべり
あの時と同じ声がする
ざっくりした理解で
noteをノーツと言ってしまうあたりが
親戚にバンド活動を応援されてるみたいで
めちゃくちゃ恥ずかしい
こちとら
メタバース空間を演出して
アバターを一人歩きさせる
そんな暖簾でやってるのに
現実世界の言動と同じ
とか指摘されてしまうと
調子が狂ってしまいそうだ
◇
-髭ダンみたいな産業ロックはねぇ、、-
と、どっかの大学の軽音楽部の女の子が
駅前の手相占いのようにモゾモゾ話していた
いや、まだ産業ロックなんて言葉が
軽音楽部の間で使いまわされてることに
いと、いみじかりけり
有名になり多数に支持されて
産業化、即ちポピュリズムに染まる過程
端的に言うとJポップと化したロックバンド
そういうバンドに対して使う言葉だ
髭ダンやKing Gnuが
ロックバンドを自称してるかどうか知らない
仮にそうだとしたら世の末だし
そんな世紀末にこそ
聖飢魔IIみたいなバンドが
ひょっこりとまた出てくるかもしれない
この曲の歌詞の表層だけ齧って
インドネシアへ踏み込んだ
学生の時のあの衝動も
ついでに出てくるのかもしれない
いつ出てきてもいいように
投資を怠らぬよう
細心の注意を払っておきたい
◇
産業ロックだろうが
めんたいロックだろうが
カリスマ会社員だろうが
カリスマ主婦だろうが
要はそれを背負えるのかということだ
タグを貼るとかそんな生温いことじゃない
そこから派生するイメージまで
全部ひっくるめて背番号として
後ろに縫い付けてしまう
背負うというのはそういうことだ
少なくとも
Asian Kung-Fu Generation は
邦楽ロックの全てを背負ってる
それはこの曲を聴けば分かる
分からないからと言って
あなたを仲間外れにしたりはしない
それくらいの覚悟のある楽曲だ
ロックがクスクス🫢の文脈で使われようが
ポエムがクスクス🤭の文脈で使われようが
誰とも敵対はしない
ぶっ◯すぞ!と叫ぶかもしれないけど
ぶっ◯す対象は身体ではなく
あなたの殻だ
◇
LINEなりメールなりすると
僕の文章から[大きい声]を感じる人が
時々現れる
そして会った時に勝手にギャップを感じて
勝手に指摘して勝手に盛り上がっている
僕は[いつもの声]で書いているのに
ということは、あなたの声量が
ちょっと🤏小さすぎるのかもしれない
細心の注意ばっか払ってるから
緊張して思うように振動しないのでは🤨
僕はそう睨んでる
いや、睨んではない
瞬きをせずに
ジッと見てる
世界が変わる様を
メイクを落として
[美人]から[いつもの顔]になる瞬間を
翌日
妙にフレンドリーになることを想像する
メランコリーなパンティーラインも
セックス中の[大きい声]も
想像しても良いかどうか
まずは電話口で相談する
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