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OVER_SMILEネタバレあり考察 ミズーリ、チョウロン、ベラルーシの3人

オーバースマイルが折り返しと聞いて。
心に残る作品の分、もう折り返しなのヤダヤダ‼︎
などといい歳こいて駄々こねくり回しつつ、いい作品だったなぁ……て余韻をぐるぐる磨いている自分もあり……。観劇始めてからわかるこの感覚ってすごく良いですね。身体中のエンジンがかかっては空気が抜けていくような。

おかげさまで昨日はテンションがり上がり過ぎて新宿から歩いて観劇行ったために筋肉痛でボコボコになりながら仕事してます。

ああアラサーの体力、もっと強くならなくては。

そんなこんなでもう終わりに近づく公演期間に逆らうように熱をもっているオバスマ2024。
今作の題材には戦禍、人と人との対話とは、愛とは、私たちが見るべきものとは。というのが収められていて且つ今作が今この時代にまた再演されることの意味、春はオバスマ2024というように新年度から新たな世界に旅立つ人が多いこの春休みシーズン。

現代の恵太と弥生にあたる学生達の多くが門出に何を思うでしょうか。
弥生といえば三月、芽生えと豊かさと成長を表していて、恵太は文字通り恵みを表す名前で、そんな希望の名を冠した二人があの時代を体感した上でこれからまた生きて行くってなんか凄い構成ですね。今回の作品で強く対話を試みるのって主に弥生の役割で恵太はそれこそ観客と同じ目線であり続けるのもすごく良い。理不尽に対してびびったり、言葉を失ったり、展開に突っ込んだりと恵太がいるから戦禍が起きてる今っていうのをフラットに見続けることができるんですよね。
弥生はあの世界に行っても自分を律して目の前にいる人にしっかりと気持ちを伝えていて、どの言葉にも手話にもしっかりと感情が乗せられていて……恵太と弥生、二人合わせたのが何巡も繰り返したリッチモンドの理想だったんだろうなーと泣きそうになってしまいました。
そんな二人が同じ課題を抱えた時に、出てきた言葉がありがとうっていうのがリッチモンドの一つの恵みが実った瞬間でもあるし、聞こえなかった音が届いたようなそんな空気にもなりました。

じゃあ、今まさに戦禍を生きてる若者達は?
私の中で真っ先に出てくるのがミズーリ、チョウロン、ベラルーシの3人。

ミズーリはグリーンステイツのメアリー達に仕える召使であり常に罵倒され、尊厳を踏み躙られている少女。なんでそんな目に遭うのかってそれは政治情勢によりそうなったに過ぎないと思いきやミズーリ自身を痛めつけることは別に重要ではなく実際には実兄であるドナルドを苦しめるための装置でしかなかったというかわいそすぎる少女。

人の心がないの???


いや、人の心がある故の苦しみなんですけどねこれはまさに。聖帝サウザーもそんなこと言ってた。
ミズーリの存在って戦争の負の象徴みたいなかんじなんですよね。本人の本質だとかそんなの一切無視されていて、理不尽な目に遭うのも全部たまたまその立場だったから、で終わってしまう。ミズーリの生きるも死ぬも、どうあったかではなくじゃあ結局どうなる?で終わってしまい歴史の過程で消えてしまう存在というのが儚くて、そんな儚い存在を見つけることができるのは同じくらい儚くて弱い存在であるスー。
同じように理不尽の中にあるからこそ互いに力を与え合えることができたのが凄く美しくて素敵だなと思うんだけど、あの世界だと立場の弱いものが力を持つとどんな目に遭うかって悲惨な目にあってしまうという無情。ミズーリが手に入れた勇気も、結局は悲劇になってしまったんだけど最後の最後にドナルドに対して振り絞って出した言葉は、あれだけ自分を痛めつけたドナルドの心を救ったことになったんじゃないかなーと思いました。

 チョウロンははっきりと本人も自覚しているぐらいレッドエイジの兵士。今のレッドエイジのため、仲間のためならばどんどん切り込むし熱血に任せて敵陣にバンバン飛び込む。戦った後は浴びるほどお酒飲んで仲間とふざけ合い、レイのような兵士になるのが楽しみで生きてる。
だからこそ仲間の不和には直感ですぐに気づくし、言葉と同時に体も動いてしまう直情型。だけど、レッドエイジの面々の会話には全部任せてるというように腕組んでうんうん見守ってるのが凄く良い。全幅の信頼の腕組みしてた。
戦いの中で生きるのが当たり前である若者で、それが別に悪いことではないっと思ってるからこそ戦いに関してポロッとレイがこぼした言葉にえぇ!?てなったり、今自分がいた世界が崩れるとなると大焦りしてしまう。色を無くし、十人十色であるという言葉に対して一番ショック受けているのってチョウロンかもしれないですね。あの時にシュフ総督を見ている顔がなんとも……。
赤じゃなくなったらどうすれば良いかわかんないし、目指していた隊長が思わぬ形で亡くなったショックで涙も流せなかった彼だけど色とか関係なしに動けたのが一度は自分が捉えていたミズーリが斬られそうになってるとこにでた「オイ!」だったからあのオイ!の言葉に混ざったいろんな感情を課題としてこれから生きていく姿はやっぱ恵太と重なる部分もあるんじゃないかなー。

正直卒業生代表、チョウロン。ていうアナウンス聞いたら泣く自信ある

 
 ベラルーシはもうド・イレギュラーというか色の陣営の中では唯一戦いに対して疑問を持てる人物なのめちゃくちゃいいな!て思いました。
青の国のレオナ王女も戦いに対して悲観的ではあるんだけど、違いがあるゆえに仕方ないことというどこか諦めもあるのに対してベラルーシはこの戦いに意味があるんですか?て静かに思っているし、だからこそ逐次戦いの目的や意義を問う。
武器が殺傷能力のある刀や剣ではなく棍なのも凄く良いなーと思ったしバタクを案内している時も凄く嬉しそうだったのが印象的。
あと腕に赤色の腕章つけてたけど、あれも本人的には色を間違えたとかではなく綺麗だと思ったから付けてたとかだとめちゃくちゃ良いんですよね。ただベラルーシがそんなふうに思えるのって好戦的なレッドエイジでもなく、地位が絶対なグリーンステイツでもない穏やかなユーリーブルーに生まれたからこそなのかもしれない。
どっちかの国で生まれてたら大変だったと思う。
ソロリスにも色盲なのをだまってたのは純粋に心配させたくないからという気持ちが強そう。
見えないからこそ本質が見えるってすごい皮肉な気もするし、青の国はレオナが最初に顔を隠していたように見えないっていうのは重要な要素なのかもしれない。うーんこの辺りの相関はまた深掘りしたい。

ただ武器持ってないし色わからないからとはいえバタクのあのトンデモ話を受け止めた上で城に案内するのは流石に自由すぎる


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