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メロンフィズ

バーには一度だけ行ったことがある。
中学2年生のとき。
珍しく父親が早く帰宅。
テスト勉強をしている私に
「出かけるぞ」
歓楽街から外れたビルの1階。
重そうな扉を開くと
洋酒瓶の壁に圧倒される。
カウンター席に座る。
水割りとメロンフィズで乾杯
バーテンダーさんが
「大きくなったね」
どうやら二回目らしい。
もちろん、記憶にない。

父は隣の人と何やら世間話。
私は、ぼんやりとバーテンダーさんが
シェイカーを振っているところを眺めていた。
カシャカシャカシャ
シェイカーの中で氷とお酒が混ざり合う音。
琥珀色の水羊羹。
三色団子。
次々とみたことのない色のグラスができていく。
バーテンダーさんは、丁寧に説明をしている。
あの頃の思い出は、この辺りでフェードアウト。


マンガが思い出の続きを見せてくれる
無口な父親だったが、
何か尋ねると営業で身につけたトーク力。
話に引き込まれる。
真剣に向き合ってくれているのを感じた。

父よあなたの齢をこえた私に、
どんな話を聞かせてくれるだろうか。

二十歳になる前に父は逝った。

あなた代わりに、ここのバーで教えてもらいます。
お酒の嗜み方。
これからの人生の楽しみ方。

昨日、教えてもらったこと

人間の4つの幸せ
深く感じて、自由の考える
単純に楽しむ
人から求められる
そして“命をかける“

ハイボール飲みながらか、手帳に書き留めた。

『バーテンダー』 原作 城アラキ  作画 長友健篩

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