108H28「帰る場所」
108H28
45歳の女性。脳出血後のリハビリテーションのため入院中である。脳出血にて2週間入院し、2か月前に回復期リハビリテーション病棟に転院した。脳出血の発症前には、共働きで会社勤めの夫と持ち家に2人暮らしであった。右片麻痺と言語障害とを認める。会話の理解は良好で、状況判断も適切であるが、発話は困難である。T字杖と短下肢装具とを用いた平地歩行が可能であり、階段昇降と入浴には介助を要する。自宅内に段差が多く、トイレは和式である。
退院に向けたカンファレンスで検討すべきなのはどれか。
a 家屋改造
b 職業訓練
c 外出制限
d 夫の会社退職
e 電動車椅子の準備
【正解】
a
【解説】
医学生というと、疾患の勉強をして、ときには診断のトレーニングを積んだり、治療の知識を身につけたりと「病」に関わることが多いようです。それは、医師が「病」を扱う職業なだけに、不可避な要素であり、医師の力の発揮どころでもあります。しかし、「病」の問題さえクリアできたら、その患者さんとの関わりは終了なのでしょうか? 今回の記事では、治療が終了したという脳出血後の45歳女性の症例をpickupしました。
症例は、脳出血になった45歳女性が、急性期病院で2週間の治療を受け、その後回復期リハビリテーション病院に転院し、2か月が経ったという場面設定です。その時点では、右麻痺と言語障害とを認めますが、会話理解・状況判断ともに良好です。
まずは、日常動作の評価をしていきましょう。いわゆるADL(日常生活動作)は以下のような項目があり、それぞれについて評価を行います。
ADL [Activities of Daily Living]
・食事
・排泄
・入浴
・整容
・衣服の着脱
・移動
・起居動作 など
本問に記載されている内容を踏まえると、以下のようになります。
移動:T字杖と短下肢装具とで平地歩行可能
階段歩行は介助を要する
入浴:要介助
それを踏まえた上で、自宅内に段差が多く、トイレは和式という家屋環境を考えると、自宅退院については、a家屋改造が適切ということになります。
<選択肢考察>
a ある程度自宅内での生活ができるが、段差が多いことやトイレが和式であることが転倒のリスク等に繋がります。
b 職業のことについては言及しておりません。
c 平地歩行が可能なので、外出は可能であり、わざわざ外出制限をかける必要はありません。
d 介護認定の申請を行えば、介護サービスが使えるようになります。
e cと同様わざわざ出来ていること(杖歩行)に制限をかける必要はありません。帰って歩行能力を失わせてしまうことになります。
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