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【2021年2月】投資初心者がタイで株式投資をはじめて1年経ったので結果をまとめる(前編)

今回は、タイで働く現地居住者である筆者が、タイで株式投資をはじめてみて1年経った結果と、タイ株に関する1年間の推移や出来事などをまとめます。私は投資のプロでも証券会社の利害関係者でもない、単なるアマチュア投資家の一人ですので、素人目線からタイで株式投資をすることの良い点、悪い点を赤裸々につづったつもりです。

悲喜こもごものエッセイ形式でネタ半分、恨み節も多く長くなってしまったので前編と後編に分けました。細かいことはいいから結果だけ知りたいという方は冒頭の結論のみ読んでください。

①結論(タイ株投資と損益)

Q:結局、タイ株は儲かってるの?
A:全く儲かっていません。純粋に投資でお金を増やしたい人は、今すぐこの記事を閉じて、大人しく米国や日本株に投資した方が良いでしょう。

新興国株に興味がある人は、インドやベトナム株に目を向けることをオススメします。タイに住んでいる、もしくはタイに特別思い入れのある方、中長期的なタイの経済成長に確信の持てる方以外は、タイ株に資金投入する必要はあまり無いと思っています。

Q:これまでの損益は?
A:2020年の2月にタイ株を始め、1年間で100万バーツちょっと(350万円)運用した結果はこちらです。

損益
(2/16時点。1バーツ=3.5円計算)
売却益:-  15,349バーツ (- 53,721円)
配当益:    23,063バーツ(  80,721円)
含み損:- 100,744バーツ(- 352,604円)
合計 :-   93,030バーツ(- 325,604円)

はい、正直に言って儲かるどころか、-10%程の損となっています。結果的には、手持ちのタイバーツをそのままタイの銀行に置いておけば、最低0.5%の利子は貰えたはずですので、何もせず寝ていた方が良かった結果となりました。

SNS上では米国株クラスタがGAFAやテスラで爆益、インデックス投資のパフォーマンスを嬉しそうに報告し、日本株クラスタがSBGの株価や30年ぶりの日経平均最高値更新に沸き立っている一方で、私のようなタイ株クラスタは薪の上で寝て、肝を嘗めるような思いで日々ぼうぜんとチャートを眺めています。

もちろん、ど素人の状態から始めた私の投資判断に多くの誤りがあり、力量不足が招いた結果ではありますが、この1年間で米国株のS&P500は+19%、日経平均は+32%のパフォーマンスとなっている一方、タイ株指数はほぼプラマイゼロ、一部の新規IPOがかさ上げしたことを除けば多くの銘柄がマイナスとなっています。逆に素人がこの程度の損失で済んだというポジティブな見方もありますが、少なくともこの1年間の平均的な結果を見る限りでは、マゾでもない限りタイ株に手を出すメリットはありませんでした。

※日経平均、S&P500、タイ株(SET)指数の年間パフォーマンス

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②なぜタイ株を始めたか

前置きで盛大にタイ株をDisってしまい、これからタイ株をはじめてみようという方には申し訳ありません。私はブログやライティングで稼いでいる身でも無いので、1年間身銭を切って実践した上での正直な結果と感想が上記になります。
逆に何かの間違いで爆益を手に入れていた場合、今ごろタイ株最高!今すぐタイ株始めよう!という煽り記事を書いていたことでしょう。
では、そもそも何でタイ株を始めたの、という点に少し触れておきます。

1. 株式投資に興味があった
→以前より漠然とした投資には興味があったものの、日本では少しだけ仮想通貨を触ったくらいで、その他の株式や債券といった類のものは、一切経験がありませんでした。

何冊か本を読んでネット上で知識を得たレベルの、完全な初心者投資家ですね。最近はやりのFIREやセミリタイアとまではいきませんが、将来の不安煽りや資産運用煽りが増えている世の中で、そろそろ自分でも資産運用してみたいという気持ちが以前よりありました。端的に言えば、足るを知らず、不労所得への淡い憧れです。

2. タイに住んでいた
→海外在住者として、日本に住民票やマイナンバーも無い状態ですので、日本の証券口座は開けません。その為、選択肢としては、タイで外国株を扱っている証券口座を開いてタイバーツを米国株や日本株に投資するか、地場のタイ株に投資するかです。

巡り合わせでタイで働かせてもらっている身として、個人的にもタイ企業や経済の勉強にもなるかと思い、タイ株を選びました。
もし自身がタイに住んでタイで働いてなければ、タイ株に手を出すことは無かったでしょう。いわゆるホームバイアスです。

3. タイバーツが余っていた
→日本より利子の高いタイと言えど、一般的な年利は0.5%でほとんど増えない。銀行預金をしておくなら、少なくとも配当で数%はもらえる株式に投資した方が良いと判断しました。
また、未だに外国人旅行者気分が抜けきれず、バーツ残高が上下しても、日本円のように損得に対する感覚は鈍くなっていたのかもしれません。

結果の項で100万バーツくらい運用と書きましたが、私は資産家でもタイランドエリートでも何でもない単なる勤め人で、何を狂ったのかタイに来て夜遊びもせずにせっせと貯蓄した資産のほとんどをタイ株に突っ込んでしまったことになります。後は、タイもStay Homeで在宅勤務が多くなり、ついつい仕事をサボり株価をチェックしてしまうといった裏事情もあります。
(皆さんそうですよね?)

4. 投資環境や税制面
→基本的にタイは日本以上に金持ちには甘い国ですので、投資や税制の面でも日本より優遇されています。
私もタイ株を始める前は、ネット上でのタイ株に関する記事を読み漁り、タイは投資をするには最高の国だ、タイに居ながら何もしないのは黄金の羽根を拾わない行為に近いのではという気分になっていました。
これに関しては、次項のメリットで詳しく記載します。

なお、以降タイ株はSET(Stock Exchange of Thailand)とも呼称し、日経平均のような指数はSET Indexと言います。

③タイ株のメリット、デメリット

では、タイ株に投資するにあたっての一般的、個人的なメリット、デメリットをそれぞれ記載します。

・メリット
1. 税金が安い
→タイに居住している方に関しては、株式取引に対するキャピタルゲインは非課税、配当によるインカムゲインは10%のみとなっています。
日本ではそれぞれ20%ほどかかりますので、これだけ見るとタイはデイトレーダーや投資家にとっては夢のような国ですね。

タイ在住者の皆さんは日々実感されていると思いますが、道理でこれだけ貧富の差が激しいはずです。ガパオライスが150円ほどで食べられる一方、ベンツを乗り回してスタバのコーヒーに400円以上払い、やたらとOMAKASEを連呼するハイソーな人々が多い訳もうなずける気がしました。

ただ、税制に関しては、タイ株に限らずタイ居住者が米国株や日本株に投資しても同様かとは思われますので、タイ株への投資だけが優遇されている訳ではありません。人によってはタイで投資信託等を購入することで所得税等が減免される制度があるようですが、私は特に利用していません。

2. 高配当が多い
→これに関しては、タイ株に関する記事でもれなく触れられています。
下記リンク先の各国比較を見るに、タイ株の平均利回りは2.93%、先進国平均は1.9%、新興国平均が2.06%ですので、タイ株の平均配当が高いというのは事実のようです。

探せば8%を超えるような配当を出している企業も実際にあります。ただ、高配当株に投資することと、トータルで利益を得られるかどうかは、全くの別物です。1年前の私は、無知ゆえにこのあたりを正しく理解できておらず、高配当=ローリスクで定期的に金がもらえてしまうぜやっほーい!くらいに捉えていました。今思うと本当に愚かでした。

他には少額で気軽に取引できる、と記載している所もあり、実際に銘柄によっては100バーツから取引できたりする銘柄もあります。
ただお遊び目的ならともかく、小銭で取引をできることが純粋にメリットとは思えませんので、資産運用を考えている方にはあまり関係無いでしょう。
もしかすると100バーツから取引を始めて財産を築いたタイドリームもあるのかもしれません。

3. 投資やタイ経済の勉強になる
→個人的には、これが一番大きなメリットです。
1年間タイの経済動向を追いかけたり、タイ企業のことを調べたりすることが習慣化したことで、タイのビジネス事情に関しては以前より詳しくなったと実感しています。例えばレストランやデパートに行っても、ああここはXXの系列で○○の資本だったなあ、とかを考えています。

タイ株をやっていなければ、KCE Electronicsというプリント基板を製造している会社が、こちらでモスバーガーを運営しているといった使い道のない豆知識も知ることが無かったでしょう。
また、私はこれまで大学などで経済学や財務会計を学んだこともありませんので、その点でも財務諸表の読み方や、経済の動きに関して本腰を入れて勉強する良い機会となりました。これらの知識と経験は、今後生きていく上でも貴重な無形資産となり人生が豊かになりました、と言いたいところですが、そうでもして自分を納得させないとやってられません。

4. 長期ではハイリターン?
→下記にSET Indexの長期チャートを貼り付けます。
1990年代後半にアジア通貨危機の震源地としてSETは暴落、長い低迷期に入りますが、リーマンショックで底を打ってから2010年以降のパフォーマンスは洪水やクーデターを挟みつつもなかなか素晴らしいものとなっています。ただ、ここ数年はコロナ禍前から不況と言われており、貿易戦争などで株価は低迷していました。

長い目で見るとSETがハイリターンを叩き出している側面があるのは事実ですが、どこを切り取るかと、今後の中長期的な経済成長の見通しには各論あるかと思いますので一概には言えないところです。
その為、タイ株は20xx年からのリターンを見るとxx%出している!タイ株最高!と主張している人がいても、あまり鵜呑みにはしないよう気を付けましょう。

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・デメリット
1. 儲からない
→はい、これに尽きますね。5年~10年単位でみたらタイ株はめちゃくちゃ上がっている、1年くらいで判断するのはけしからん!という方もいると思いますが、私はそこまでの長期ホールドを考えている訳ではありません。

また、それは自分がへっぽこトレードしかしていないんだから、損してるのをタイ株のせいにするな、というご指摘ももっともです。
ただ、現時点で平均的なタイ株のパフォーマンスがその他外国株より劣後している以上、これを下回るデメリットはありません。

もちろんこの1年、COVIDショックや低迷期をタイ株で勝ち続けている方も居るとは思いますが、ネット上ではひっそりされています。
私にとっては、いくら税金が安くても、払うべき利益も無いのが悲しい現状です。中長期投資だから短期的に下がっても良いという訳では無く、継続的にプラスを出していけるのが正義だと思うようになりました。

上記の高配当に関しても、当初は初心者らしく多少損しても配当でカバーできればいいやと考えてしまいましたが、やはり株価が上がり続けるのが健全な姿です。基本的に高配当は、今後業績や株価が上がる見込みがあまりない企業が、先行投資をせず株主を引き留める為に資金を吐き出している面もありますから、配当利回りに囚われてしまうことは要注意です。まさに1年前の私ですね。

その為、最近では配当額はほぼ気にせず、もらえたらラッキーくらいの気持ちでトレードしています。まあ、やっぱり配当が振り込まれると喜んでしまうのが性ですが。

2. 情報格差
→タイ語でビジネスニュースが読めるに越したことはありませんが、私は一切タイ語は読めず、普段の情報入手は英語ニュースや日本語ニュースに頼っています。タイの経済情報や企業動向を追うには、Bangkok Post等である程度英語ニュースが読めることが最低条件かと思います。

SET上場企業に関しては、必ず英語とタイ語の両方でAnnual ReportやIR情報は発行されます。日本語でタイ株情報を載せているようなメディアは、SBI証券か、NNAくらいではないでしょうか。
また、これらのニュースサイトはタイ語の一次情報を英語に翻訳して発信、さらに英語から日本語に翻訳して発信している所が多いと思われますので、インサイダーでも無い限りは情報の入手速度や精度で地場の投資家の先を行くことは不可能です。まさに、猿がダーツを投げる以下のレベルでトレードしているのかもしれません。

日本人タイ株ブロガーの方も何名かいらっしゃいますが、米国株などと比べると圧倒的に少ないです。やはり皆さんタイ株ではそんなに儲かっていないのか、いつの間にか退場している方も多く切ない限りです。
その為、私の結論としては、タイ語を使いこなせる方以外は、短期の好材料、悪材料を追ってトレードし勝ち続けることは不可能で、ファンダメンタルズやビジネストレンドを丹念に研究して中長期投資、もしくは完全に割り切ってテクニカル分析でチャートを追いかけるしかないという考えに至りました。

3. 信用取引や空売りができない
→国内における規制の関係なのか、SBIなどでも外国人向けのタイ株信用取引、空売りは対応しておりません。
私はそもそも信用取引はするつもりはないので、あまり関係ありません。
ただ、これは間違いなく下がる、と確信している銘柄があっても、そういった機会で儲けるようなことはできません。
逆に信用取引が可能で下手に手を出していたら、恐ろしい結果になっていた可能性もありますので、その点は安心しています。

4. カントリーリスク、分散リスク
→タイに限った話ではありませんが、タイにも政情不安、不況、COVIDによる観光業壊滅、中進国の罠といった、いわゆるカントリーリスクはいくらでもあります。特に最近は海外ニュースでも王室問題も絡んだ反政府デモが連日取り上げられたことは記憶に新しいです。

先ほどの世界各国の株式比較サイトによると、2021年1月時点で世界株価の時価総額は58.8兆ドルである一方、タイ株の占める割合はその内0.3%(1,669億ドル)でしかありません。

円グラフではほぼ無に近く、タイを探すのにかなり手間取りました。
タイ株に投資をするということは、この0.3%に自身の資産を預けるということになりますので、私のように貯蓄のほとんどをタイ株に突っ込んでしまうというのは、めちゃくちゃにリスキーであることが分かります。というか、米国株式だけで世界の56%以上を占めるというのは、圧倒的ですね。

その為、多くの投資アドバイザーが主張するように、インデックスなどで各国株に資産を分散させ、リスクも分散するのがやはり最適解なのかもしれません。ちなみにタイ株には東証一部のような大企業が集まったSETに加え、マザーズのようなmai(Market for Alternative Investment)市場がありますが、もはやmai株に投資するのはそのあたりの町の電気屋に投資するようなものです。

mai株はSETほど規約が厳しくないのか、英語でのIR情報が無い、情報不足な企業も多いので、変動の激しさ、ユニコーンが眠っている可能性に夢を見たとしても、基本的には手を出さない方が良いでしょう。

※株式時価総額の国別シェア引用

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④タイ株に向いている人は?

前編のまとめとして、素人の失敗談は分かった、じゃあどんな人ならタイ株に向いてるの、という点を記載します。基本的には、お金が有り余って仕方ない、与〇翼氏やマ〇ブ氏のようなバンコク在住の資産家、宗教上の理由か何かでタイ株以外に投資出来ないといった方以外には、正直タイ株はおすすめできませんし、いつ春が到来するのかも誰にも分かりません。

もしくは、タイではギャンブルの類は違法となっていますので、安く手軽に出来る合法ギャンブルとして楽しむのも良いかもしれませんね。
あえて言うならば、下記の条件に複数当てはまる方にはタイ株適正があるのではと思います。

・タイ株に向いている人
1. タイに住んで働いている
2. タイやタイ企業に何か特別な思い入れがある
3. タイの経済、企業について詳しい、勉強したい
4. タイ語でビジネスニュースが読める、情報入手できる
5. 少額で投資の実践、勉強をしたい
6. 多少の損にはマイペンライの気持ちで耐えられる

以上が前編となります。タイ株への愛憎こもった内容でしたので、タイ株を愛してやまない方には申し訳ありません。
後編では筆者が実際にタイ株を始めてからの遍歴と推移、現在のポートフォリオ紹介と今後の投資方針についてまとめたいと思います。

【2/27追記】後編を公開しました。

【免責事項】
株式にまつわる取引は完全に自己責任で、損失やトラブルに対して筆者は一切責任を負えません。筆者のように、全く利益を出せずに損失ばかりという可能性も大いにありますので、無理のない範囲でトレードを行いましょう。

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