拝啓チンパンジー様

 訳が分からないといえばチンパンジーですかね。脱走してくれたと頼まれたんですかね。もし頼まれたとすれば飼育員が頼んだということで間違いないです。飼育員にどんな事情があったのでしょうか。「毎日チンパンジーにめしをあげているオレがめしを食えないなんて…どうしてこんな目に…」と涙をこぼしていたのかもしれません。それは同情しますね。
 ところでチンパンジーは何を食べるんでしょうか。脱走するぐらいだからお惣菜とかかな、タイムセールの。

 話戻しますね。そうしないと飼育員さんがかわいそうだから。知ったこっちゃないけど。おっと、そういうところがよくないと思う。相手の目をちゃんとみてリスペクトの気持ちで接して初めて共感ができるんやから。

 この前本読んでたら書いてありましたよ。小学生の女の子が母親に「クラスの男子にブスっていわれた」と言ったら、母親は娘を抱きしめて「あんたは世界で一番かわいい」ていったんだって。女の子としては「誰やそんなんいったやつは、叩きまわしたるわ」って母親に怒ってほしかっただけなのに。

 わかる?母親は娘のことをかわいそうな子って決めつけちゃってるの。あと怒りって当事者の気持ちになってみないと出てこない感情だからね。そーゆー意識が欠けている人ははっきりいってぼくと一緒です。ほら、ぼく飼育員さんのことかわいそうって思っちゃってるからね。「飼育員さんにめし食わせてやれよコラ!」って怒ってない。これがぼくとチンパンジーの差です。見せつけられました。

 話戻しますよ、構ってもらえなくて飼育員さんもブチギレ寸前ですわ。飼育員さんの脱走だけは食い止めねば。
 チンパンジーは飼育員さんのために怒りの脱走を敢行したんでしょうね。ぼくのためではなく。
「オレを飼育している人の不幸はオレの不幸だ。脱走し動物園の管理の未熟さを世間に露呈することで経営陣に一発食らわせてやるで。めし食わせたるからな!待っとれ飼育員さん!ウホー!」という魂胆なのかもしれません。

 チンパンジーは賢いな。訳が分からないつってごめんね。よし、どうだろうここでひとつ、怒りに任せてオレを殴り飛ばしてみるってのは。ひと思いに。頼む!バチコイ!

 おはよう!