「畑亜貴の早稲田に“止マレ!"」レポート



 当日は、司会者の学生二人を相手にトーク。応募原稿を添削する作詞講座の企画もありましたが、とりあえず、前半の各楽曲に触れた部分を紹介。アブなそうな箇所、下ネタは自粛しております。

インディーズ時代

 自分の文化祭の記憶がなくって、どうして抜けてるのかなと思い出そうとしたんですが、バンドのコンテストに出てたんですよね。それが「あ~」ってなるくらい恥ずかしい記憶で……。インターネットが発達してなくって良かった(笑)
(ソロアルバムは)バンドのデモが、まとまってきたので先に出しちゃおうかという感じです。ディスクユニオンさんから出したんですが、インディーズの強いところは需要がある限りプレスしてくれるところですね。メジャーはすぐに絶版になりますから。

「空耳ケーキ」


(仕事のきっかけは)「なんか来たな?」という感じでした(笑) 曲は先にあったので、それにあった詞を、ということで、「あずまんが大王」を読んで。歌っている伊藤真澄さんと上野洋子さんの接点になるようなところに着地できればなあと作りました。(出だしの「Lu La Lu La」は)ここが良いということで通ったようなものですね。最初に持ってくる歌詞はいつも迷うんですけど、特に真澄さんは「自分の声が素直に出るような歌詞じゃないとやりにくい」って。
 タイトルはフライングクッキーなイメージがあったんです。「クッキー飛んでんじゃね?」みたいな(笑) まずテーマを決めて、歌い手さんや「あずまんが大王」のイメージから書いていきました。
(歌詞は)パーッと出てくると楽なんですけどね。出てこないときは、たいていクライアントがうるさいときです(会場笑) アニメだけじゃなくって「うちのアーティストの方向は」とか、いろんなダメ出しがあるんですよ。それがいちばん大変。「聴きたくない~」って(笑) 

「ハレ晴れユカイ」

(ヒットした要因?) それがわかってたら苦労はしないって(笑) 原作は、当時出ていたものを一日で全部読みました。タイトルは「蝶々夫人」の「ある晴れた日に」という曲があって、それは恋愛の歌なんですけど、何かを待っている。こっちはもっと別のものを待っているわけです。ダンスのことは全然知りませんでした。「なんか踊ってるよ!」って。アニメだと、あらかじめ映像がわかってることはないですね。ゲームではたまにありますが。

「運命的事件の幸福」「BE BE BEAT」


「ハルヒ」つらいんですよ。何曲も何曲も。やっぱりハズせないじゃないですか。原作から外れられないし。想像の余地があまりない。キョンの妹とか漠然と言われてもね。キョンと古泉は書きやすかったですけど、まさか二巡目がくるとは。しかも谷口って! 白石稔さんってムチャクチャやってるでしょ。「自分でやれよ」と(笑) いや、いい人ですよ。

「止マレ!」


 わたし「ハレハレ」より、こっちの方が好きなんです。(放送がまた)時系列で始まるって聴かされたときは、嫌な予感がしましたね。覚悟はしてました。(「エンドレス・エイト」については)知りませんでしたね。それ知ってたら止めたと思います(会場笑) マジで頼むよ~、こっちの売り上げにも関わるんだよ(笑)
 よく「止マレ」の意味を訊かれるんですけど、私が答えるとそれが正解になっちゃうんでね、あまり言いたくないんです。みんなの問題だから。

「Super Driver」


(第1期と)印象が違っているのは、歌っている平野綾ちゃんの変化ですね。自分の音楽性というのを打ち出して……AYA ROCK(笑) 何で笑っちゃったんだろ(笑) 今の彼女に歌いやすい風にしないと。(サビの英語詞)は、勝手に「Fu~」とか観客に入れられたら嫌だなって(会場笑) 「Fu~」禁止のための合いの手です。


 主題歌を書く上でいちばん大切なのは「人間関係」(笑) クライアント側とのね。表面上は笑っててもハラワタ煮えくり返ってたり。詞はふっと浮かぶときもあれば、にゅっとひねり出すときもあります。(タイトルは)自分がこれって決めたのがボツになるとやる気をなくしますね。

(大文字と小文字の区別は)気分ですね。見た目の問題。書いてあるものを見るのが好きなんですよ。カタカナやひらがなにしても、配列が均等じゃないと嫌なんですね。

 気分転換にはパンツを換えます(会場笑) お風呂に入って、清潔なのに着替えて、さあやるぞ(笑)

「Princess Primp!」



 橋本みゆきちゃんのために、半分は作りました。彼女が活き活きと歌えるような歌詞でありたいな。「プリンセスラバー!」のイメージと自分のなかでダブったんですね。屈託がなくて明るい感じが。彼女の個性を出しつつ作品に近づけるという作業をしました。

「秘密ドールズ」


 これはいいですよね~。PVは見るべきです! またやってほしい、て言うかやりたい! 可愛いとしかいいようがない。カメラマンに頼んで写真を貰ってきて、しばらく壁紙にしてました(笑)

「Made in WONDER」


 美郷あきちゃんは、わりと大人っぽい歌詞が多かったんですね。で、今度はハジけるような歌を歌わせてみたいという設定があったんですよ。彼女が歌っても違和感がなくて、アニメの世界にも合うように、という依頼でした。

「Dangerous Girls」


 わたしの英語ってけっこう間違えてますから、信用しちゃダメですよ(笑) (作曲の)黒須克彦君は、わりと仮歌が英語なんですよ。英語っぽいノリをほしがってると予想されるんですが、譲れないところもあります。自分は日本語が好きなので、ギリギリまで粘りたい。(サビの部分は)応援歌というか無責任な慰めですね(笑) テストなんてどうだっていいじゃないか、追試がんばれ! 
 ゲームの方が関わってくる人間が少ないです。サウンドについてはおまかせ、みたいな。

 シリアスな曲の方が簡単なんですよ。映画でもなんでも、泣く方に持っていく方が盛り上げやすいし楽なんです。苦労するのは明るい曲の方ですね。

「Bravin’Bad Brew」 

 最初の「闇から助けて」というフレーズがこーんと降りてきたんですよ。(「ヴィーナス ヴァーサス ヴァイアラス」と「喰霊-霊-」)は、似ているようで違うんですね、世界観が。それは聴いている人が、どちらの曲なのか区別できるようでないといけないですよね。そのつもりで作ってます。

「Paradise Lost」


 曲を聴いてすぐに「楽園(ティル・ナ・ノーグ)」というフレーズが思いつきました。なんとなく、これがテーマだったんですね。安住できない楽園。「喰霊」って、楽しいシーンとやってられないシーンがあるじゃないですか。それをやりたかった。
(苦労したのは)キャラソンが多かったこと。ナブーとかどうすんの(笑) 

(複数で歌う曲を作るとき心がけるのは)音痴な人でも歌いやすいようにすること(会場笑) 歌いやすさって歌詞で決まるんですよ。個人の場合でも、心がけないといけない人もいますけど、名前は出せません(笑)

「Love Love Love のせいなのよ!」


 曲を作っている森藤晶司君のポップな感じが好きなんですよ。私はアイドルが好きなんで、思いっきりアイドルソングができて嬉しかったですね。森藤君としては、サビの「微熱気分」ってところに驚いたんですって。英語が来ると思ってたって。ありがちだよね(笑)

「もってけ!セーラーふく」


(畑さんが司会者いぢりに没頭して、たしか曲については触れてなかったような)

「WANTED! for the love」


 男の子を狩るような女の子の曲を作りたかったんです。「狩る」はダメか(笑) 元気づけるような曲というか。ラップは言葉が多いので、倍くらい時間がかかりますね。

「Aggressive zone」


 これ、笑っちゃったのが、ニコ動を見ていてですね(会場笑) サビのところを「ロリコンだ~安倍晋三~」になってるのが、もう笑いました。頭の中で書き換えられちゃって、そういう風にしか聴こえない(笑)

「いままでのあらすじ」「あとがきのようなもの」


 合いの手は、基本はお任せしました。役を演ってる人の言葉の方がそれっぽいだろうって。そうしたら(歌詞に畑亜貴と出て)目が飛び出るかと思った(笑)
(後半の伏字は)思い切り業界批判しようと思ったんですけど(笑) 考え直しました。私以外にも迷惑かけちゃうから。神前暁君にも未来があるしね。

「残酷な願いの中で」


「愛」より「夢」が好きです。夢の方が全部含まれているような気がするんですね、愛とか運命とか。「現実かんべんしてよ」って気持ちもあるかな。あと「夢」を入れると、会議が通りやすいんですよ、クライアントの(会場笑)

「under"Mebius"」


 長門有希のキャラソンは、やたら文字数が多いんですよ。責任者出てこい!

「ググれ!に一致する日本語のページ」


 まさか作詞するなんて思いませんでした。しかも、3枚も。当初はそれ以上予定していると聞いて愕然としまして、それで3枚目に「卒業」と入れて、これ以上こっちに来るなと(笑)
(詞の「ようつべ」について)ニコニコ動画の方は、なんか触れちゃいけないような気がしますね。動画は古泉×キョンをよく見ています(笑) 最近は、キョン×古泉もアリかな(笑)

「The Secret Garden」


 初音ミクの仮歌を入れるという、わけのわからない事をしました(笑) 好きにすればいいじゃない? そういうやり取りをするのも面倒なので歌いましたが。だから、ミクが何となく畑亜貴っぽく歌ってます。

(声優に曲を提供するときは)歌い手が主役になるので、この先どうやって展開するのかをかなり考えてから製作に入ります。プロジェクトが常に動いているので責任を感じますね。ぶっちゃけ、その人の運命がかかっているわけですから。売れてほしいということと、その人が歌いたいということ、両立できているかどうか、いつも考えちゃいますね。なるべくなら本人の歌いたい方向をエッセンスに入れたい。用意されたものをただ歌うだけという風になってほしくない。その人が気に入ってくれないと、いくら出来が良くても作詞家としては失敗です。

 作曲家によって、詞はすごく左右されます。たまに「ちょっとなあ」という曲が来ると、結局作ってみたけどオクラ入りということが多いです。何となく違和感を感じるんですね。そういうのは、ほぼ消えます。一応、あらかじめ言うんですよ。たいてい黙殺されますが(苦笑)

「毒と魔女と君と嘘」


 清水愛ちゃんは映像から入る感じなんですよ。こういうのを作りたいというプロデューサーにあわせていく。愛ちゃんはダークな感じが似合うんですね。「毒殺」は女性が圧倒的に多いんですよ。無力な女の子の武器。言葉の毒とかも含めてのイメージです。


(今後、誰に詞を提供したいですか?) 難しい。むしろ教えてほしいですね。(客席に)誰に書いた方がいいですかね。能登麻美子? あ、可愛いですよね。そういうのも重要なんですよ。モチベーションとして(笑) 希望を出しておこう。

「純白サンクチュアリィ」


 茅原実里ちゃんは天然というか、考えてることと表現することにギャップがあるんですよ。強い部分とゆるい部分が極端で。よくわからないんですね。ファンの人も、そういうところを見守ってるんじゃないかなあ。歌が好きなのにずっとブランクがあったから、最初のシングルは、歌う喜びというのが出ている。今ではCDも売れてコンサートも成功して、そんな成長した部分をちゃんと見せてあげたいというのがポリシーですね。だから、歌詞も少しずつ難しくなってるんですよ。歌っているときの彼女は凛々しいでしょう。ブログについてはノーコメントですが(笑) 

(2009.11.8)