アルセウスの力についての解釈

(3/5)加筆修正版を別サイトに作成しました。メインクエストラスボスの人物についての解釈を追加しています。

 図鑑完成しないとアルセウスに会えないけど、もし完成させられなかったらどうしていたんだろう……。
 トロス組がまだヒスイ地方に来てなかったら、来るまで待つのか? レジギガスの扉が開かないままだったら補填してくれるのか?? とか考えてふと浮かんだやつです。

※ここのアルセウスは、特に記載が無い限り、ゲーム開始時に呼びかけてくる存在(あなたたち ひとが アルセウスと よぶもの)を指しています。

 アルセウスは主人公をヒスイ地方に呼び、「全てのポケモンに出会う」という使命を与えたが、結局のところ目的は何だったのだろうか。
 振り返ってみれば、アルセウスは冒頭と図鑑完成イベントにしか現れない。アルセウスフォンを通じて指針を与えては来るが、これはシステム(メタ)的な部分を引き受けている面があり、アルセウスは実質何もしていないともとれる。
 何故すべてのポケモンに会わなければアルセウスと対面できないのか?(そもそも最初に会ってるやん) ヒスイ地方に呼び寄せた主人公と再会することだけが目的だったのだろうか?

 そもそも、最初に現れる「アルセウス」はどんな存在で、どんな力を持っているのだろう。
 と考えて、ゲーム中で語られている神話がヒントになるのではと思った。
 神話の中では、アルセウスは二匹の分身(ディアルガとパルキア)、三つの命(ユクシー、エムリット、アグノム)を生み出し、それぞれに「もの」と「こころ」を生ませたとされている。
 見方を変えてみれば、アルセウス自身は世界を創っていないとも言える。その力を持つ存在を生み出すのは確かに凄いことだが、アルセウスが本当に創造主であるなら、自らが直接世界を創造しなかったのは何故なのだろうか。

 世界創造のくだりに関しては、ダイヤモンド・パールの時点ではプレートに刻まれた文章と、ミオ図書館にある「はじまりのはなし」に見ることが出来る。

2ひきに もの 3びきに こころ いのり うませ せかい かたちづくる
(プレートの文章)
ふたつの ぶんしんが いのると もの というものが うまれた
みっつの いのちが いのると こころ というものが うまれた
(はじまりのはなし)

 ヒスイ地方を描いたLEGENDSアルセウスの中では、前者のプレートのみが存在している。
 「はじまりのはなし」の中ではディアルガ達が祈ることでそれぞれの司るものが生まれたと明確に書かれている。しかし、他の神話では彼らが祈ったというくだりは見られない。ディアルガとパルキアは生まれただけで時間と空間が生じているし、ユクシー達は飛び回ることで知識(感情、意志)を人々に芽生えさせている。ディアルガもパルキアも湖のポケモン達も、おそらくは自らの自由意志に従って振舞っているだけなのだ。
 プレートの文章は、読み方によっては祈ったのはアルセウスであるとも解釈できないだろうか。

2ひきに もの 3びきに こころ (そのもの)いのり (2ひき・3びきに)うませ せかい かたちづくる

 LEGENDSアルセウスのはじまりは、ヒスイ地方の世界に身一つ(とスマホ)で放り込まれた主人公と、ポケモンを研究しているラベン博士との出会いだった。
 ラベン博士が主人公を見つけたのは飛び出していったポケモンを追いかけていった結果であり、最初に主人公を見つけた彼らは博士が他の地方から連れて来たポケモンだ。アルセウスが遣わした、といった特殊なバックボーンも持たない、いたって普通のポケモンである。主人公がコトブキムラを追われた時も、手を差し伸べてくれたのはそれまでに関わって来た人々だった。
 ストーリー中に関わってくる人もポケモンも、自らの意志で行動していたことは明らかである。彼らの行動が絡み合った先は、ゲームをプレイした通りだ。その結果こそが、アルセウスの本当の力なのかもしれない。
 アルセウスには、物質を生み出したりする能力は備わっていない。しかし、アルセウスの「祈り」が世界に働きかけることによって、運命や因果といったものを動かすのではないか、と。

 アルセウスは自身の居場所を「じかんもくうかんもこえた わたしのうちゅう」と語っており、ヒスイ地方がある場所とは別の次元に存在しているとわかる。
 また、最後にゲットするアルセウスは「アルセウスの分身」であり、語りかけて来た存在そのものではない。アルセウス自身はヒスイ地方の次元には直接干渉できない、もしくはディアルガ達のような(あるいは、それ以上の)異変が起きてしまうことを知っているため、干渉しないようにしているのだろう。
 自らの宇宙の中でアルセウスが祈ることで、ヒスイ地方のある世界、そしてそこに生きるポケモンや人が誕生した。アルセウス自身は直接は何もしていないが、人々が「神の見えざる手」の存在を感じた時、そこに神=アルセウスを見てきたのではないだろうか。(それに最初に名前を付けたのが古代シンオウ人なのかもしれない、という余談)

 アルセウスは何を祈り、主人公を呼んだのだろうか。最後の勝負の後、アルセウスはこのように語る。

すべてのポケモンにであう
あなたはみごとなしとげました
あきらめなければ おもいは
いつかかなえることができる
あなたのかつやくは
それをあらわしています
コダイノエイユウ……
かれらとおなじように

 本編の中で何度か語られてきた「古代の英雄」は、10体のポケモン(=現キング達の先祖?)とともにシンオウさま(=アルセウス?)に戦いを挑んだと言われている。アルセウスの台詞からも、そのまま解釈して良さそうだ。古代の英雄も幾多の困難を乗り越えた先に、アルセウスとの対面を果たした。きっかけを生んだアルセウスの祈りが何だったのかは、「神のみぞ知る」なのだろう。

 それから長い時が過ぎた時代、ヒスイ地方に生きる人々は多くの苦難を抱えていた。古代シンオウ人はその地を去り、その後に現れたコンゴウ団とシンジュ団は各々の信仰をめぐって対立している。そして、他の土地から追いやられるようにしてやって来た銀河団。
 アルセウスは「ヒスイ地方の人々に希望をもたらしてほしい」と祈ったのではないだろうか。その祈りが世界に働きかけ、歯車を動かす最後のカケラとして主人公が呼ばれた。

このせかいに
あなたをよんでよかった
これからのあなた
そしてあなたがいきていくうちゅうを
わたしはしゅくふくしましょう

 主人公の活躍を経て、ヒスイ地方に生きる人とポケモンは共に歩み始めた。そこに明るい未来が待っているだろうということも含めての、アルセウスの言葉なのかもしれない。





 アルセウスは祈るのみで手を差し伸べることはない。
 使命を与えられた全ての人間が、困難を超えられる強さを持っていたのか? 英雄の前に立ちはだかった者にも、成し遂げたいことがあったはずではないか?
 祝福という光を与えられず零れ落ちた者達の存在がいたという事実も、ヒスイ地方の伝承に残されている。

「強き光は 深き影 生み出したり」

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