A World Above(Status:Deadzone収録)

やぁ、こんにちわ。
ベランダの王の家令です。体調不良で死んでますが、本が読めないことは無い程度だったので、短編を一つ読みました。珍しくネクロムンダの作品です。

書名:A World Above
著者:Alex Hammond
長さ:短編/27ページ相当
分類:Warhammer40k/Necromunda
時代:不明
主要題材:報復譚 エッシャー/Escher ナイフエッジ・リズKnife-Edge Liz
副次題材:ラン・ロー家(House of Ran Lo)、オーロックス家、上層Uphive
関連書籍:おそらく無し


 こちらは、ネクロムンダの世界観がぐっと理解できる一作でした。
 作品の構造としては、ナイフエッジ・リズという名前のリーダーが率いるエッシャーギャングが、と、アルダス・ハーコンAldus Harkonという上層階のはみだし者Outcastから仕事を受けたが、やたら装備の良い正体不明の集団から奇襲を受け、その死にもの狂いの戦いの顛末を描いた作品です。
 アルダス・ハーコンははみだし者といってもオーロックス家の流通部門では最上位クラスの構成員で、ネクロムンダで遊ぶキャラから見ると雲の上とまではいかなくても雲の上下を行ったり来たりできるレベルの物凄い人です。
 作中でもネクロムンダ貴族であるラン・ロー家の当主テラクTerrakと会い、かれの連れてきた血族暗殺者4名(どうもラン・ロー家では、血筋の者を高戦闘力の暗殺者に育てる習慣がある。全員かは不明。家自体の情報は、ネクロムンダのサプリメントHouse of Ironのp80から章が用意されているので、興味がある方は参照してください)を借り受けて、ラン・ロー家のために結んできた70の長期契約に関する履行のための手駒として派遣する話から始まります。
 その一環に巻き込まれたらしいナイフエッジ・リズとそのギャングは、オートガンの弾を弾くメッシュプレートに、身体能力強化改造、プラズマやオーギュメントウェポンで武装した一団から、悪地形で奇襲を受け、大方を殺されてしまいます。混乱する様を描くように、少しずつ過去にさかのぼるような筆致で描かれる、混乱と地獄絵図。
 だが、リズ達もこれまで名うてのギャング達を排除してきて、ラスガンやヘビーボルタ―、チェーンソードを装備する凄腕ギャングです。ボスのリズは、傷だらけになりながらも糞度胸で襲撃者たちを一人ずつ片付けてゆきます。(手榴弾を相手のアーマーの内側に押し込んだり、足場を破壊して高所から落としたりと、まったくスマートではないですが)

 味方もすべて死に、相手も最後の一人となったところで、崖っぷちの格闘となり、そこから墜落してしまいます。
 死んだかと思えましたが、二人とも瀕死でかろうじて生き延びました。最後の襲撃者は女であり、しかも重傷から来る譫妄の故にリズを自分の姉妹?だと勘違いし、下層民への侮蔑と罵倒、ここで死ぬ自分の不幸、そしてハーコンへの不信を口にします。
 その情報から色々合点がいったリズ。
 そのタイミングで最後の生き残りも意識が鮮明になってきて、眼前のリズが仲間ではなく先ほどまで戦っていた相手と気づき、下衆めと罵倒する。リズからすると、同じ女とは言え同情する理由はない。だが、死の間際のなか最後の襲撃者は、騙されたのはお前達だけではない、と言い残します。

 場面が変わって、ハーコンのいる上層。ラン・ロー家の管理するシャトルベイ5bで報告を待つ彼は、いろいろ黙って考えこんでいた。
 この内面描写から、詳細は不明だが今回のラン・ローの手の者を派遣には何か別の複雑な思案があって、4人を使い捨てたことが伺い知れる。どうもラン・ロー家以外の引きで上層に返り咲く策があったっぽい。
 そこへシャトルが帰ってくるのが見た。「狩りはうまくいったかね?」そう問いながら、着陸したシャトルに乗り込む彼に答えたのは、ラン・ロー家の武装に身に扮したリズだった。姉妹を殺されたけじめをつけるために、この上層に来たのでした。
「『狩り』はね、アルダス・ハーコン、今始まったのよ」

 という、上から下まで騙し合って生きている、というどこぞの作品の名台詞を思い出すような話でした。
 ネクロムンダ・ギャングはどこある程度はそうなんですが、エッシャー家は身内のけじめづけが粛清でも敵討ちでもガチっと決めがちな傾向がありますねぇ。
 今作は、彼女たちギャングが見たこともない高級装備と高度な教育課程を受けた者と出会うと一方的に駆られる立場になるけれども、ギャング流儀で培われた戦法も相手の裏をかいて斬り返せるという感じで、泥まみれの格闘が好きな方には一読がおすすめできます。

 今作の情報
・ヘビィボルタ―は、梁や天井の崩落を受け止めても壊れないくらい頑丈。
・上層民はフロア移動に屋外を飛ぶシャトルが利用できる。
・ラン・ロー家に裏なる暗殺者は、長く結った髪という共通点を持つ。
・ラン・ロー家の暗殺者の武装には、滑空用の膜付き服、カマキリの腕上に分離展開する刃の腕、単分子の剣、狙撃銃、プラズマ小火器がある。

 さて、大分疲れて来たので、床に戻ろうと思います。ベランダの王がふんふん鳴いているので、その前に晩御飯をセットしてきますかねぇ。

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