2021.5.5

カラーペンが欲しくなって新宿の世界堂に出かけた。コピックを買おうと思っていたけども、店頭の「FABER-CASTELL」というブランドになぜか惹かれ、値は張ったが良い色だと思ったものを全て買ってみた。

僕は、基本的にお金をあまり使わない。節約家ということではなくて、単にお金の使い方を知らないのだと思う。制作中は永遠に何かに追われていて家にいるし、制作が終わると虚無が訪れてずっと家にいる。

振り返れば、お酒とかタクシーとか身分不相応な使い方ばかりしていたが、コロナでその機会もほぼ無くなって若干お金が貯まった。今日は、それをちゃんと使った久々の買い物だと思う。だから、良い色だと思ったものを全て買うことができたし、それは気持ちが良かった。

しかし、お金の使い方を知らないというのは、悲しいことだ。物欲がないという言い方もできるが、シンプルに物を知らないから欲しくならないのではないかと思えてくる。

本はよく買うが、以前書いたように僕は積ん読と死ん読をしているから、これ以上買っても読まないのではないかと思い最近は買わなくなった。だから、誰かが勧めてくれたもののうち、印象に残ったものを半年遅れとかで買う。

そういえば仲良いバンドのHに、洗濯マグちゃんという洗剤代わりの商品が環境にいいらしいと言われ購入して1年以上使っていたが、最近になって「洗たくマグちゃん根拠なし 消費者庁が再発防止命令」というニュースが出た。すぐにHにリンクを送ったら「俺も見たわ!早く捨てろ!」と返信が来てウケた。

いまは洗剤と、洗濯マグちゃんを使っている。

世界堂を出た後は、音楽を作っている友人Sと散歩をしながら久々に話した。少し上の女性で、博識かつ強めの癖があって面白い。映画にも詳しく、友人Yがホドロフスキーの話で盛り上がっていた相手はこの人である。

僕は見ていたとしても映画をそれほど語れないので、彼女とは基本的に世間話と人間の細かい機微の話になる。たまに気にしすぎなところがあるなと思うが、基本的に言っていいこと悪いこと、流せること聞き捨てならぬことのボーダーラインが似ていて話しやすい。

僕は忘れやすいので何を話したのかほとんど覚えていないが、4時間ぶっ通しで話している途中、お金の使い方を知らないという話をしたとき、「素直にそう言えるだけいい」と言われた。

確かに、それはいいことかも知れない。そこまで問題はややこしくない。とりあえず今は謎に発生し続ける〆切に追われながら、次の虚無まで生き長らえればいいやと思えた。

そして、こういうどうでもいい自意識の話に、LINEスタンプではない優しさを寄せてくれる人は貴重である。それで結構、Sの勧めてくれたものは印象に残っていることも多い。

ちなみにYの勧めてくれたものも同じくである。帰宅後、ニマニマしながら「FABER-CASTELL」を机に広げたら、同じブランドの鉛筆がすでにペン立てに挿さっていた。それは、Yが誕生日にくれたもので、現在EYESCREAMに連載している読書感想文を書く際に使っているものだ。

久々に自分の意思で欲しいものを買ったと思っていたのに、普通に刷り込みだった。サブリミナルこえーって思った。

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