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ウンバボ王国記①

愚者は賢いふりをして、「我こそが宇宙誕生以来歴史の途切れのない唯一の存在である」と言う。
愚者は分かったふりをして、「偉大な神、我を作りしもの、何人も侵されることなき空の覇者、受けた慈悲は海よりも深く、受けた恩は山より高い」と言う。
空に浮かぶ星たちを、さも理解したように、自分たちも星の上にいて、天と同一だと信じ、神の賽子のもとで悲しみも喜びも偉大な父と共有しているかのように語る。
大地に芽吹く草花は、季節の流れと共に消え失せ、鹿も蛇も虫たちも、永遠のなかでは生きられず、いつかは大地に還るのだと嘯く。

賢者は言う。「愚者は目で見たものしか信じず、耳で聞いた音しか感じず、手で触れられるものしか愛せない。」のだと。
故に、万物の流転の中にひたすら抗い続け、究極の永久に空に浮かんで世界を回転させ続ける王国を、誰も信じないのである。

天の祝福が大地に偽り続けた神の世界は、見上げてもただ青いばかりである。
しかし、空に立って地上を見下ろすと、永遠の中で変わることのない、全てが鮮やかな、この世で最も美しい町並み、神々の祝福を受けた永遠の街、力強い大地の守り手、黄金に輝く王国「ウンバボ」の真の姿が浮かび上がるのである。

その歴史から閉じられた街には、初めてこの大地に降り立った生まれたばかりの人たちが、初めて住んだとされる場所がある。
最初のホモ・サピエンスの一人である「たかし」は、空を突き刺せる槍をもって大地を征服し、そこに永遠の都を建てたのである。

ある日、たかしは天から星を1つ手にとって、この地に星を植え付け、万物の種とした。天の川から水を汲み出し、種の上にかけて、「とこしえに枯れることなかれ」と言った。
次の日に見てみると、蒔いた種は芽を出して、小さく葉をつけた。
毎日毎日、川から水を汲んでは、そこに撒いた。
小さな芽は段々大きくなり、終いには小さな実がついた。
たかしはその実に向かって言った。
「汝ら、星の子よ、我が子となるが良い」と。
すると小さな実はみるみる育ち、たかしと同じく人の形となって、大地を踏みしめた。
その子らが一斉に歩きだすと、大地の女神は感激して震え、天は喜んで星を何個も落とした。
そして星の子らは、産み育てたたかしに感謝し、永遠の従属を誓ったのである。

たかしは、星の子らが生まれた畑の土を手にとって、「この地を我のものに、この地をウンバボという」と言った。
そうして土を捏ねて冠を作り、自らの頭上に載せて、「今から我こそが万物の王、聖なる光の槍は暗闇を突き刺し、大地を踏みしめる音を世界の果てまで響かせよう」と言った。

かくして、永遠の王国は産声をあげたのである。
(つづく)

インターネットを渡り歩いてまだ6年、色々なカテゴリを楽しみ、「消費者」として生きています。 そんな文化の消費者の毎日思ったことアレコレを書いていきます。雑記。