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令和4年度司法試験 行政法 参考答案

こんにちは,たまっち先生です。
今回はおそらく業界最速で,令和4年度司法試験の行政法の参考答案を作成しましたので,来年度以降に司法試験を受験される方向けに閲覧いただきたいと思います。出題趣旨や採点実感が出る前に演習をしたい方にお勧めです。
答案作成には,私たまっち先生および複数の司法試験合格者が携わっており,この時期としては,参考答案の完成度は高いと考えております。
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今年の行政法では,設問1⑴で原告適格,設問1⑵で訴えの利益,設問2で主に裁量論を中心とした本案が聞かれており,オーソドックスな問題といえます。
設問1⑴の原告適格に関しては,平成29年の司法試験や平成29年の予備試験を演習できていた受験生は十分に解答できたと思われます。
設問1⑵の訴えの利益については,2年連続の出題ということもあり,しっかり準備できている受験生が多いことが予想されますので,あまり差はつかないでしょう。
設問2の本案については昨年同様,誘導が分かりにくかったものの,問われている内容自体はそこまで難しいものではなく,過去問演習ができていた受験生は総苦労はしなかったはずです。
以上が,今年の行政法を解いてみての雑感ですが,詳細は以下の参考答案をご覧ください。


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【令和4年度司法試験 行政法 参考答案】
第1 設問1⑴

1 行訴法(以下,略)9条1項にいう「法律上の利益を有する者」とは当該処分により自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。そして,当該処分を定めた処分法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益も法律上保護された利益に当たると解する(小田急判決参照)。そして,処分の名宛人以外の第三者の原告適格の判断にあたっては,9条2項に従って判断する。

2 Eの原告適格

⑴ 本件許可の処分法規たる森林法(以下,法という)10条の2第2項は,許可をしない事由として同項第1号は「開発行為により当該森林の周辺の地域において土砂の流出又は崩壊その他の災害の発生をさせるおそれがあること」,同項1号の2は「開発行為をする森林の現に有する水害の防止の機能からみて,当該開発行為により当該機能に依存する地域における水害を発生させるおそれがあること」を掲げている。これらの規定から,法は開発行為に伴い生じる地盤の不安定化,及び水源かん養機能の低下によって開発区域付近では,土砂の流出又は崩壊,水害等の危険が生じることから,かかる被害の危険から開発区域付近に森林等の所有権を有する者の所有権が害されない利益を保護する趣旨であると考えることができる。そして,法1条は,「森林の保続培養と森林生産力の増進」を目的として掲げており,法10条の2第2項と同趣旨であることが窺われる。そして,本件許可基準はB県が独自に規定したものであり,関連法令には当たらないものの,本件許可を判断する際に用いられている基準であるから(規則4条2号参照),参考にすることはできると考える。本件許可基準第1の1の①は開発行為に関して権利を害されることになる者の同意を要求しており,かかる規定からすれば,法は,開発行為によって開発区域周辺で森林等を所有する者の所有権が害されることのない利益を保護する趣旨であることが窺える。もっとも,法の規定には開発区域付近に森林等の所有権を有する者の利益を特に保護する規定は存在しておらず,あくまで本件許可基準に規定があるに過ぎない。

 そして,処分において侵害されることになる利益は,Eのような開発区域付近で森林等を所有する者の所有権である。侵害の態様としては,開発区域付近の土砂が流出することでEのような者が所有する森林等の育成が害されるという危険がある。もっとも,所有権は生命・身体のような高次の利益とは異なり,財産的な権利であることから,これが侵害されたとしても金銭賠償により回復をすることが可能である。また,本件開発区域にはEの所有する森林はわずか2%しか存在せず,土砂の流出によりEの所有する森林の所有権が害される可能性は高いとはいえない。

以上からすれば,法は開発区域周辺で森林等を所有する者の所有権を害されない利益を個別的利益として保護していると解することはできない。

⑵ よって,Eに原告適格は認められない。

3 Fの原告適格

⑴ 法10条の2第2項1号、1号の2,および法1条は前記のように規定しており,土砂の流出,崩壊,水害等の危険が生じれば,開発区域付近の者の所有権のみならず,開発区域付近に居住する者の生命・生命身体にすら危険が及ぶといえる。したがって,法は,開発行為による土砂の流出又は崩壊,水害等の危険から開発区域付近に居住する住民の生命・身体の安全をも保護する趣旨であることが窺える。そして,同項2号は「森林の現に有する水源のかん養の機能からみて,当該開発行為により当該機能に依存する地域における水の確保に著しい支障を及ぼすおそれがあること」も許可をしない事由として規定している。かかる規定からすれば,開発行為に伴い生じることになる水害等の危険から開発区域付近に居住する者の生命・身体の利益を保護する趣旨であるといえる。

次に,本件条例は1条で「市の水道水源を保護し,もって市民の生命および健康を守ること」を目的として掲げており,法が開発行為付近の住民の生命・身体を保護していることと目的を同一にするから,関係法令に当たる。そして,本件開発区域を含むD山の林地が本件条例6条1項に基づく水源保護地域に指定されており,本件計画は規制対象事業場の設置にあたると考えられる。ここで,本件条例8条は水源保護地域内において,規制対象事業場を設置することを禁止し,それに違反した者に対しては罰則を科することとしている(本件条例20条1号)。本件条例のかかる規定からすれば,本件条例は水源保護地域内における開発行為のような水源の枯渇の恐れのある行為を禁止することで,開発区域付近に居住する住民の生命・身体の安全を保護する趣旨が窺える。さらに,本件基準は前記の通り,法の趣旨目的を判断する参考とすることができる。そして,本件基準第4の1によれば,「かんがい用水等の水源として依存している森林を開発行為の対象とする場合で,周辺における水利用の実態等からみて必要な水量を確保を確保するため必要があるときには,貯水池又は導水路の設置その他の措置が適切に講ぜられていることが明らかであること」と規定しており,開発行為によって水源が害される危険を防止し,これらの水源を飲用する開発区域付近の住民の生命・身体の安全という利益を保護する趣旨であると窺える。

そして,侵害されることとなる利益は開発区域付近の住民の生命・身体の利益であって,一旦害されれば金銭賠償によっては回復が困難な性質を有するものである。また,本件開発区域から近ければ近いほど周辺住民に対して土砂の流出や水害等の危険が及ぶ可能性は高くなるものということができる。

以上からすれば,法は開発区域付近に居住する者の生命・身体の利益を個別的利益として保護する趣旨であるといえ,かかる利益を有する者は法律上の利益を有する者に当たると解する。

⑵ Fは本件開発区域の外縁から200メートル下流部の本件沢沿いに居住し,本件沢の水を飲料水や生活用水として利用する者であるから,本件開発行為によって土砂の流出や水害等が生じれば,直接的に生命・身体に危険が及ぶ者ということができる。そして,Fの居住地が本件開発区域より下流部であること,200メートルという非常に近接していることから,上記の危険は極めて大きいということができる。したがって,Fは上記の利益を有するといえ,原告適格が認められる。

第2 設問1⑵

1 取消訴訟の目的は,行政庁の違法な処分により個人の権利利益が侵害されている場合に,取消判決によって当該処分の法的効果を遡及的に消滅させ,個人の権利利益を回復することにあるから,訴えの利益(9条1項ただし書)とは,処分が取り消されることによって回復される権利利益があることをいう。

この点,昭和59年判決は,建築確認はそれを受けなければ建築工事ができないという法的効果を付与したに過ぎず,当該工事が完了した場合に行われる建築主事の検査は当該建築物が建築関係法規に適合しているかを判断するものに過ぎず,建築確認に適合しているのかを判断するものではないこと理由として,当該工事が完了した場合にはもはや処分を取り消しても回復される権利利益がないため,建築確認の取消しの訴えにおける訴えの利益が失われるとした判例である。

昭和59年判決は工事が完了しEの同意が得られた場合であっても,訴えの利益が失われないのは,本件許可に工事の結果を適法なものとして通用させる法的効果が併せて付与されている場合に限られると解する。

2 法10条の3によれば,開発許可の根拠法規たる法10条の2第1項や4項に違反して開発行為をしたものに対して,その開発行為の中止を命じることができるのみならず,期間を定めて復旧に必要な行為をすべき旨を命じることができる。そうすると,たとえ,工事が終了した場合であっても,都道府県知事は開発許可に違反している場合には復旧に必要な行為を命じることができ,その際に基準とするのは開発許可を基準としているといえるから,昭和59年判決の射程は及ばない。

3 したがって,本件許可には工事の結果を適法なものとして通用させる法的効果が併せて付与されているといえるから,工事終了後であってもFの訴えの利益は否定されない。

第3 設問2

1 考えられるFの主張

Fの主張としては,本件許可が裁量処分に該当するとした上で,①B県知事が本件許可に際して本件許可基準に定めのない本件開発区域における所有林面積の割合を考慮したことが他事考慮に当たる,②本件認定がされた以上,本件許可をすることは本件許可基準第1の1の②に反し違法である,③本件許可は法10条の2第2項2号および本件許可基準第4の1に反する,として違法である旨主張することが考えられる。

2 考えられるB県の反論および私見

⑴ア 裁量の有無広狭は,法令の文言,処分の性質および国民の権利義務の侵害の程度によって判断すべきである。

イ 法10条の2第2項2号は、開発許可をしない事由として「当該開発行為により当該機能に依存する地域における水の確保に著しい支障を及ぼすおそれがあること」と抽象的に規定しており,行政長に判断の余地を与えている。そして,開発許可にあたっては,水源の確保対策等の必要性や措置の妥当性の評価などに関する専門技術的判断や公益上の考慮も必要である。したがって,法は開発許可の判断にあたって要件裁量を認めたものと解される。他方で,開発許可が下りないとAのような株式会社は地域森林計画の対象となっている民有林において開発行為を実施することができないから営業の自由が重大に制約される。したがって,裁量の範囲は一定程度にとどまるといえる。

以上から,行政庁の判断が判断過程を考慮して社会通念上著しく妥当性を欠く場合には裁量権を逸脱濫用し,違法と解する(30条)。

⑵ ①について

ア B県は,法令および本件許可基準の趣旨目的に鑑みれば,本件許可基準に定めのない本件開発区域における所有林面積を考慮したとしても他事考慮に当たらないと反論することが考えられる。

イ この点,規則4条2号が開発行為の施行の妨げとなる権利を有する者の相当数の同意を求めており,本件許可基準第1の1の①が「相当の者」を3分の2以上の権利者が現に同意しており,その他の者についても同意を得ることができると認められる場合と定めたのは,申請時には開発行為が許可されるか不明であり,申請者に過度な負担を課さないことにある。そうだとすれば,単純な数によって3分の2以上の同意が必要だと解してしまうと,2人しか開発行為に関する利害関係者がいない場合に申請者が開発許可を受けることが著しく困難になり,過度な負担を課すことになるから,上記法令の趣旨目的からすれば権利者の数以外にも,開発区域における所有林面積の割合も考慮すべき事項であるといえる。

ウ 本件では,B県は本件許可の判断に際してEが本件開発区域のうち2%しか所有していないことを考慮しているところ,これは法令との関係で考慮すべき事項であるといえるから,B県知事は考慮すべきではない事項を考慮したとはいえず,他事考慮には当たらない。

エ したがって,Bの反論が認められ,①は違法事由とはならない。

⑶ ②について

ア B県は本件認定は違法であり取り消されるべきものであるから,本件許可は本件許可基準第1の1の②に適合し,B県知事が本件許可をしたことは適法であると反論する。

イ この点,本件条例7条3項によれば,規制対象事業場(本件条例2条5号)として認定するためには,水道水源保護審議会(本件条例5条1項)の意見を聴くことが必要としている。本件条例がこのように審議会の審査を必要とした趣旨は,規制対象事業場として認定されてしまうと,水源保護地域内に設置できなくなることに加え(本件条例8条),違反した場合には罰則が課されるなど(本件条例20条1号)の私権に対する強度な権利制限が課されることになるためである。したがって,審議会の審理は形式的な協議では足りず,水源の保護という観点から十分な調査等を踏まえた実質的な協議でなければならないと解する。

ウ 本件では,AとC市長が各々の主張を言い合っただけで審議会の協議があったとされており,水源の保護の観点から十分な調査を踏まえた実質的な協議が行われたとは到底評価することができない。よって,本件認定は本件条例7条3項の「審査会の意見を聴」いて行われたものとはいえず,違法である。

エ よって,Bの反論が認められ,②は違法事由とならない。

⑷ ③について

ア Bは,本件許可基準第4の1は行政規則に過ぎず,B県を拘束するものではないから,本件計画に従った本件貯水池で十分である旨反論する。

イ 本件許可基準第4の1は行政庁が独自に規定した行政規則であり,法10条の2第2項第2号の要件裁量部分について規定したものであるから裁量基準に該当する。そして,裁量基準は行政規則であるので,法的拘束力を有しない。もっとも,一旦裁量基準が定められれば,平等原則,行政に対する信頼保護の見地から法令の趣旨目的に鑑みて合理性を有する裁量基準は,それに従うべきではない特段の事情がない限り,行政庁を事実上拘束すると解する。

ウ 本件において,本件許可基準が適法であることは前提とされているから,本件許可基準は合理性を有する。では,本件許可基準に従うべきではない特段の事情は認められるか。

この点,B県の Fが主張するような容量の確保は技術的に困難であって,実現には費用がかかりすぎるという主張は,財政的制約に関する主張であって,内部的な理由に過ぎないから,本件許可基準第4の1に従うべきではない特段の事情があるとは言い難い。

したがって,本件許可は社会通念上著しく妥当性を欠いているといえ,裁量権を逸脱濫用し違法である。

エ よって,Bの反論は認められず,③は違法事由となる。

   以上(5744字)

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